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ゴルフクラブの選び方|超基本ギア用語講座Vol.3【バルジとロールとギア効果】

知らないと、クラブ選びで失敗しちゃうかも!

2019/12/27 ゴルフサプリ編集部

「慣性モーメント」、「重心アングル」などなど、いろんなギア用語を目にするけれど、そんなこと知らなくたってゴルフ場では困らない!どうせ新製品を売るためのセールストークでしょ、と思っていませんか?

そんなことはありません、ゴルフクラブの基礎知識を持っていれば、クラブ選びの失敗がなくなるだけじゃなく、飛びも方向性もスコアだってよくなっちゃうんです。そんな、クラブ選びにもスコアアップにも役に立つ、超基本ギア用語をお届けします。

ゴルフクラブ基礎知識講座【バルジとロールとギア効果】

Q.バルジとロールって何?

A.〇ッ〇型クラブのフェースの出っ張りのこと

アイアン型クラブのフェースは平面ですが、ウッド型クラブのフェースは平面ではなく、出っ張っているのが普通です。ゴルフルールで凹面は禁止されていますが、平面でも凸面でもルール違反ではありません。それではなぜ、アイアン型は平面で、ウッド型のフェースは凸面になっているのでしょう?

ウッド型クラブのフェースは凸面になっている。

水平方向は“バルジ”垂直方向は“ロール”

フェースの凸面のことは「フェースラウンド」と呼ばれることもありますが、ホリゾンタルフェースバルジとバーチカルフェースロールというのが正しい呼び方です。

フェースに凸面が付けられるようになった頃イギリスでこの呼び名が付けられた。

もともと、バルジとロールは摩滅対策

なぜ、ウッド型クラブにだけバルジとロールが付けられているかというとヘッド素材と形状が違っていたからです。現在は金属で作られているウッド型クラブも、その昔は“木”でできていました。“木”でできているからウッド、鉄でできているから“アイアン”というわけです。

1800年代前半まではウッドクラブのフェースも平面でした、ところが1848年にガッタパーチャボールが発明され、それまでのフェザリーボールに比べ、よく飛んで耐久性も高かったため一気に広がりました。しかし、フェザリーボールに比べて硬いので、ウッドクラブのフェースが凹んでしまうようになりました。

これに対抗するためにウッドクラブのフェース面を出っ張らせるようになりました。アイアンは鉄なのでガッタパーチャでも凹むことはなかった。だから、アイアンのフェースは今も昔も平面のままなのです。

今はウッド型クラブも金属だから凹み対策は不要だが……バルジとロールには他の効果があった!

今では、すべてのクラブが金属製だから凹み対策は不要なのではという疑問がわきます。確かに凹み対策だけならバルジとロールは不要です。ところが今でもウッド型クラブにバルジとロールが付けられているのはついていた方が“飛ぶ”からなのです。

最近は激飛びアイアンが人気ですが、バルジとロールをつけると“飛ぶ”のならアイアンにもバルジとロールがついていてしかるべき。なのに、ついているのはウッド型だけなのは、形状が大きく違うからです。

ウッド型とアイアン型ではヘッドの形状が大きく異なります。ウッド型はヘッドの幅(奥行き)が広く、アイアン型は狭くなっています。この違いでウッド型はヘッドの重心位置がフェースから遠くなり、アイアン型はフェースのすぐ近くなります。

フェースからどれくらい奥に重心があるかは“重心深度”という言葉であらわされますが、現状、平均的なドライバーの重心深度は39㎜弱、アイアンは7番で4.5mm程度、この差がバルジ・ロールの有無を生んでいます。

スイートスポットを外してヒットしたとき、バルジの効果でボール初速の低下が少なくなる。フェース上下方向のロールの効果も同様。

ウッド型クラブでバルジとロールが付いていると、飛距離も方向性もUPする!

インパクトの衝撃は、ボールがフェースに当たった“点”からフェースに対して垂直な方向でヘッド内部に向かいます。フェースにバルジとロールが付いていると、ウッド型クラブの場合はスイートスポットを外した場合でも、その衝撃が向かう方向が重心に近づく向きに補正されます。

すると、フェースが平面だった場合と比較して、ミスヒットしたときのヘッドが回転する量が減り、エネルギーロスが軽減されるため、ミスヒットしたときのボール初速の低下と打ち出し方向のブレが小さくて済みます。

かたや、アイアンの場合は重心とフェースが近いのでバルジとロールの効果がほとんど得られません。だから、ウッド型にはバルジとロールが付けられ、アイアン型のフェースは平面になっているのです。

こうして見ると、ルールで禁止されている凹面は案外有利ではなく、ミスヒット時の球の打ち出し方向を補正してくれる効果は期待できるものの、ヘッドの回転が大きくなるためボール初速の低下が大きいことと、“ギア効果”によるサイドスピンも増えるので、ルールを違反してもデメリットの方が大きくなります。

テーラーメイドの「ツイストフェース」は、バルジとロールが付いたフェースに“ひねり”を加えてさらに飛距離と方向性UPを狙っている。

トゥに外せばドロー回転、ヒールに外すとスライス回転がかかるのがギア効果

ギア効果とは、インパクトでスイートスポットを外して打ったときにヘッドの回転によってボールにスピンが与えられる現象を指します。ギア(歯車)が噛み合って回転する動きに似ていることから、ギア効果と呼ばれています。

インパクトではボールがつぶれ、少しの間フェースに押し付けられた後に打ち出されます。スイートスポットを外してヒットすると、押し付けられている間にヘッドが回転するのでボールには、ヘッドの回転とは逆の回転がかかります。だからトゥに外せばフック回転、ヒールに外した時にはスライス回転がかかります。トゥにはずしてボールが右に打ち出されてもドローがかかって、ボール戻ってきてくれる。ギア効果とは有り難い現象です。

ただし、ウッド形状のクラブはギア効果が得られますが、アイアン形状のクラブだとギア効果はほとんど得られません。

Bによってスピンがかかるメカニズムは、本シリーズ【スピン編】で詳しく紹介しています。

ゴルフクラブの選び方|超基本ギア用語講座【スピン編】

ウッド型クラブはヘッドの重心がフェースから奥に離れていますが、アイアンの重心はフェースのすぐそばにあるのでこの違いが生まれます。また、ギア効果はフェースの上下方向にも働きますので、ロングアイアンでは“チョロ”になってしまうようなミスヒットでもショートウッドだと“チョロ”にならないのは、ギア効果も関係しています。

ゴルフクラブ基礎知識講座 Vol.3 まとめ

・フェース上下は、バーチカルフェースロール
 トゥ〜ヒール方向はホリゾンタルフェースバルジ
・バルジとロールはウッド型クラブだけ
・バルジとロールは飛距離と方向性を向上させる
・ギア効果が得られるのはウッド型クラブ


大塚賢二(ゴルフトゥデイ編集部)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。現在はギア担当としてゴルフトゥデイ編集部に籍を置く傍ら、有名シャフトメーカーのフィッターとして、シャフトフィッティングも行っている。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。

【関連】
ゴルフクラブの選び方|初心者向け基礎知識をクラブ種類別に解説



ゴルフクラブの選び方|超基本ギア用語講座

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【シリーズ一覧】
●Vol.1超基本ギア用語講座【ロフト】
●Vol.2超基本ギア用語講座【スピン】
●Vol.3超基本ギア用語講座【バルジとロールとギア効果】
●Vol.4超基本ギア用語講座【慣性モーメント】
●Vol.5超基本ギア用語講座【重心とスイートスポット】
●Vol.6超基本ギア用語講座【フレックス編】
●Vol.7超基本ギア用語講座【バランス(スイングウェイト)編】
●Vol.8超基本ギア用語講座【高反発と飛びの3要素編】
●Vol.9超基本ギア用語講座【ゴルフクラブに使われる素材】