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ゴルフクラブの選び方|超基本ギア用語講座Vol.8【高反発と飛びの3要素編】

知らないと、クラブ選びで失敗しちゃうかも!

2020/04/29 ゴルフサプリ編集部

「慣性モーメント」、「重心アングル」などなど、いろんなギア用語を目にするけれど、そんなこと知らなくたってゴルフ場では困らない! どうせ新製品を売るためのセールストークでしょ、と思っていませんか? そんなことはありません、ゴルフクラブの基礎知識を持っていれば、クラブ選びの失敗がなくなるだけじゃなく、飛びも方向性もスコアだってよくなっちゃうんです。そんな、クラブ選びにもスコアアップにも役に立つ、超基本ギア用語をお届けします。

ゴルフクラブ基礎知識講座【高反発と飛びの3要素編】

Q.飛びの3要素を答えよ!
1.〇速
2.打ち出し〇
3.〇ピン

A.
1.初速
2.打ち出し角
3.スピン

でした。
いかがでしたでしょうか? すべて答えられましたか?

90年代はボール初速UPに腐心していた

今では当たり前のように「飛びの3要素」という言葉が使われていますが、この用語が広く使われるようになったのは意外と新しく2005年頃からです。

チタンヘッドの出現で、ヘッドは大型化しスイートエリアが拡大したことを背景に、軽量&長尺化でヘッドスピードを高めて飛ばそうとしていたのが1990年代のクラブ設計思想でした。しかし、長尺はヘッドスピードこそ上がるもののアマチュアゴルファーにとってはミートするのが難しくなり、結局は思うように飛ばせませんでした。

長尺のアンチテーゼとして、1990年代後半に出現したのが“高反発”です。長さは変えずにヘッドの反発係数を高めてボール初速を上げる設計です。

「ERC」は高反発で飛ぶと評判になった。ただし、ヘッドスピードが遅いゴルファーが使うと球がドロップしたために、すぐに「ERCⅡ」が発売された。

高反発規制を契機に“飛びの3要素”にスポットライトが当てられた

このように、2000年前半までは“ボール初速の向上”が飛ばす為のクラブ設計の王道でした。これに終止符を打ったのがゴルフルールです。

それ以前からゴルフルールには“スプリング効果をヘッドに持たせてはならない”とする規則がありましたが、1998年にUSGAが、高反発は“スプリング効果”にあたるとして反発係数0.83以上のヘッドはルール違反としました。

しかし、アメリカ大陸を除く、多くの国はR&Aのゴルフルールを基準としており、R&Aがこの規制を採用しなかったため2003年までは“高反発”を使える国と使えない国が混在していました。その後、R&Aも2004年からプロ及びアマチュア競技において“高反発”の使用を禁止。2008年からはすべての国のゴルフルールで“高反発”が禁止されました。

1998年には反発係数0.83を上限としていましたが、2004年からは計測方法が変更されCT(コンタクト・タイム)257μs以上がルール違反として統一されました。

初速計算式

ボールの重量はルールで決まっているし、ヘッド重量もあまり増やせない。反発係数の上限が決まれば自ずとヘッドスピード毎に得られるボールスピードの限界が決まる。

高反発の規制により、ヘッドスピードが決まれば、得られる最大のボール初速がほぼ決定するということになりました。そこでルール内の反発力で“飛ぶ”道具を作るために脚光を浴びたのが“飛びの3要素”です。ボール初速の限界ができたのなら、そのボール初速で一番飛ばせる“打ち出し角”と“スピン量”にすればいいというわけです。

高反発のボール初速に加え、高打ち出し角、低スピンで飛ばすという概念を世に広めたプロギア「TR-DUO」2004年発売

「TR-DUO」の発売当初には“高打ち出し、低スピン”という概念は一般化しませんでしたが、「ERC」はヘッドスピードが遅いとドロップするという口コミが広がったように、初速以外にも打ち出し角やスピン量が“飛び”に影響があるということは、経験的には分かっていました。

その後、実際に高打ち出し・低スピンが飛ぶということを多くのゴルファーに実感させたのは、「初代M1、M2(テーラーメイド)」と「GBBエピックシリーズ(キャロウェイ)」だったといえるでしょう。これらのモデルの以前にも“浅重心”による“低スピン”でハードヒッターなら飛ばせるモデルはありましたが、これらのモデル以降、高打ち出し・低スピンがアマチュアゴルファーにも広まりました。

高打ち出し・低スピンの飛距離を多くのゴルファーに体感させてくれたモデル

高打ち出し・低スピンだとなぜ飛ぶのか?

高打ち出し・低スピンと言っても、打ち出し角が高いほど、スピンが少ないほど“飛ぶ”ということではありません。飛びの3要素には効率よく飛ばせる組み合わせがあり、多くのアマチュアゴルファーの弾道は、効率よく飛ばせる組み合わせよりも打ち出し角が低くスピン量が多くなっているので、今までよりも「高打ち出し、低スピンにすると自然と飛距離が伸びますよ」ということを伝えるための標語のようなものです。

図の上部で説明しているとおり、パックスピンによる揚力は、ボールが重力によって下に引っ張られるのを軽減する効果があるものの、弾道の頂点に達するまでは、ボールを後ろに引っ張る力も併せ持っているので、バックスピンが多過ぎると飛距離が伸びなくなります。

反対に、バックスピンが少ないと重力に対抗する力が不足するので、ボールの落下が早く始まってしまって“ドロップボール”となってしまうのです。だから、効率よく飛ばせる打ち出し角とスピン量の組み合わせがあるのです。

16度前後2300回転前後がおいしいところ

スピン量は同じでもボールスピードが速くなるほど、バックスピンによる揚力は大きくなります。飛ぶ弾道を得るためには、ドロップすることなく、上がり過ぎることもない丁度いい揚力がいいわけですから、ヘッドスピード=ボールスピードが遅い場合と速い場合を比較すると、適正なスピン量はヘッドスピードが速いほど相対的に少なくなります。

また、打ち出し角度は同じでも、ボールスビードが速いほど球の最高到達点は高くなります。これに対してボールを下に落とす重力は一定ですから、ヘッドスピードが速い人と遅い人を比較すると、ヘッドスピードが速い人ほど適正な打ち出し角は低くてOKということになります。

ドライバーショットでどれくらいの打ち出し角とスピン量が“オイシイところ”かというと、私の経験ではヘッドスピードが40m/s前後の人ならば、打ち出し角は16度前後、バックスピンは2300回転前後だと判断しています。ヘッドスピードが遅ければこれより少し高い打ち出し角でスピンは多め、速ければ打ち出し角は少し低めでスピンも少し、と言っても100〜200回転ですが少なめでOKです。

ヘッドスピードを問わず「打ち出し角18度・バックスピン1800回転が一番飛ぶ!」 と言っているメーカーもありますが、確かに一番飛ぶのはこれくらいだと思います。しかし、ナイスショットしたときにこの組み合わせが得られるクラブセッティングだと、少し打点がずれてバックスピンが減って1500回転とか1400回転以下になってしまうと、打ち出し角は18度でも、球がドロップして途端に飛ばなくなってしまいます。これを避けるために400〜500回転の余裕を見て、スピン量は2300回転前後、打ち出し角は16度前後になるようなドライバーを選ぶと、コンスタントに飛距離を伸ばせるというわけです。

ゴルフクラブ基礎知識Vol.8まとめ

・ボール初速、打ち出し角、スピンが飛びの3要素
・打ち出しは高く、スピンは少ないほどいいわけではなく
 効率よく飛ばせる組み合わせがある
・打ち出し角は16度前後、バックスピンは2300回転前後が
 オススメの組み合わせ


大塚賢二(ゴルフトゥデイ編集部)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。現在はギア担当としてゴルフトゥデイ編集部に籍を置く傍ら、有名シャフトメーカーのフィッターとして、シャフトフィッティングも行っている。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。

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●Vol.1超基本ギア用語講座【ロフト】
●Vol.2超基本ギア用語講座【スピン】
●Vol.3超基本ギア用語講座【バルジとロールとギア効果】
●Vol.4超基本ギア用語講座【慣性モーメント】
●Vol.5超基本ギア用語講座【重心とスイートスポット】
●Vol.6超基本ギア用語講座【フレックス編】
●Vol.7超基本ギア用語講座【バランス(スイングウェイト)編】
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