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ルールで付加するのは「打罰」か「罰打」か?

重箱の隅、つつかせていただきます|第1回

2020/07/31 ゴルフサプリ編集部

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

GOLF TODAY本誌 No.578/78ページより

戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

ルールで付加するのは「打罰」か「罰打」か?

仕事でゴルフを眺めていると、一般ゴルファーには取るに足らないようなことにもつい目が向いてしまう。
たとえばルール解説でよく見かける「1“打罰"」という表記。
罰打」や「ペナ」と書かれることもある。どれも日本のゴルファーの間では通用しているが、どうにも紛らわしい気がしてならない。一般ゴルファーはともかく、なぜメディアだけでも表記を統一しないのだろうか。

元を考えてみよう。2019年改訂以前のルールブックには「1打の罰」や「違反の罰は1打」などと書かれていた。「1打の罰→縮めて1打罰→英語っぽく言えば1ペナルティー→略して1ペナ」という流れは想像がつく。
では「1罰打」は? 「罰の1打」だから「1罰打」と略したい、ということか。たしかに、どの表記でも良さそうな気もする。

だが、2019年のJGAゴルフ規則は「罰打」表記に統一された。ルール違反に対して「処置に対して加えるべき打数」だから「~打」と表記したい、だから「罰打」を採用したのだと思う。

これで決着、だろうか。実は私の中では「罰」という言葉を使うこと自体にも、抵抗がある。楽しいゴルフ、ゲームに「罰」という語感はそぐわないと思う。
もちろん、違反行為には罰則、というのは分かる。だがゴルフ規則の根本は、プレーの〝公正な持続”にある。つまり、プレーが続けられなくなった状況の〝救済処置”がメインなのだ。

たとえば、OBした場合。プレー持続のために、1打加算することでインプレーに戻れる。池ポチャしても、1打加算したら、妥当な場所からプレーを続けられる。どうしても打てないようなライに止まったら、アンプレヤブルで1打加算すれば、打てる場所に移動できる。
この「1打加算」は「罰」だろうか。言葉を足せば、打てない場所に意図せず打ち込んでしまった、ミスショットは「罰を受ける罪」なのか、ということだ。

思うに、ゴルフの救済処置による加算打数は"代償"のほうが適切だろう。自然を生かしたコースの中で、プレー続行、ストロークが困難な場面で、助け舟を出してもらう〝代償"としての打数。
この考え方だと「罰なし」と「1罰打」の状況は納得できると思う。で、「2罰打」はどうか。"代償"に2打必要と考えられるのは「競技失格」からの救済だ。

インプレーの球を意図的に動かした、規則をうろ覚えで処置をミスした、不注意で誤球した。ゲームのプレーヤーとしては、失格でもおかしくないが、それでは厳しすぎるから2打加算で大目に見る、ということ。

だから「2打加算」だけは「2罰打」で妥当なのかもしれない……などと考えていたら、現在の新ルールでは「バンカー内からアンプレヤブルで2打加算なら外に出せる」というのができてしまった。これは純粋に、バンカーショットが苦手なプレーヤーの〝救済の代償"案件。やはり「罰打」は合わないと思う。

本来ならルールブックには「この救済処置は1打加算」「この救済処置は打数加算なし」「この規則違反には2打加算」などと表記されれば、救済処置と違反行為、代償と罰則が明確に分かれて、ルールの理解が捗るとも思う。
略称としては「1付加打」、いや「1加打」とかのほうが妥当な気がする。まあ、「罰打」表記を変えるにはJGAが動かないと無理なのだが。


Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ


重箱の隅、つつかせていただきます

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