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ドライバー平均飛距離355ヤード!!| “ゴルフの科学者”デシャンボーの大変身!

話題沸騰!! ザ・メモリアルでは423ヤードを記録

2020/09/04 ゴルフトゥデイ 編集部

米ツアー『ロケットモーゲージクラシック』で今季初勝利、同ツアー6勝目を飾ったブライソン・デシャンボーが話題沸騰中だ。
昨年よりひと回りもふた回りも巨大化した体躯を武器にダントツの飛ばし屋に変貌。同大会では350ヤード超えのドライブを16回も記録した。
肉体にも科学の鎧をまとった“ゴルフの科学者”に迫る。

GOLF TODAY本誌 No.579/73〜75ページより

ブライソン・デシャンボー
1993年9月16日、米カリフォルニア州出身テキサス州在住。2010年にカリフォルニア州ジュニア選手権で優勝。サザンメソジスト大に進み15年に『全米アマ』、『全米学生選手権』を制して翌年プロ転向。下部ツアーで1勝してPGAツアー参戦を果たす。以来、今日までに年間4勝(18年)を含む通算7勝(欧州ツアー1勝)を挙げている。

スピードトレーニングでボール初速が87・15‌m/sに

今やキャメロン・チャンプを抜き、PGAツアーの飛距離ランキングでダントツの1位を突っ走るデシャンボー。力強いスイングも周囲を驚かせている。

米ツアー中断前、2月の『W GCメキシコ選手権』で2位となったデシャンボーだが、注目を集めたのは成績よりも飛距離。ドライバー平均飛距離が実に355・6ヤードに達した。

驚きはさらに続く。新型コロナによる約3カ月の中断が明けて『チャールズ・シュワブチャレンジ』に姿を現したデシャンボーが巨大化していたのだ。体重は20ポンド(約9キロ)増で110キロに。もちろん長期の休業で太ったわけではない。上体ははるかに厚みを増し、その首はラグビーのフロントローも真っ青の太さになっていた。

本人曰く「中断期間中ボールスピードを上げるために、スピードトレーニングを積んだ」とのこと。

ボールスピードとは日本で言うボール初速のこと。同大会では実測値で195マイル(87・15‌m/s)を記録したという。飛ばし屋のB・ワトソンやD・ジョンソンでも81‌m/s台だからそのすごさがわかる。

「ドライバーで300ヤードのベストショットが打てたが、ブライソンに40ヤードも置いていかれたよ。明らかにスピードが上がっているね」と同組で回ったJ・ローズが舌を巻く飛ばしっぷりだった。

圧倒的な飛距離を武器にロケットモーゲージ・クラシックでツアー通算7勝目を飾ったブライソン・デシャンボー。

【関連】ドライバー飛距離アップの工夫を女子プロゴルファー5人が解説

「今のボクはかつてないほど健康でパワフル」

筋肉の量が増えても 捻転量は以前より大きい

急激に大きくなった印象があるが、肉体改造は昨年10月から始めたそうで、トレーナーのグレッグ・ロスコフさん指導のもとM A T(マッスル・アクティベーション・テクニック)なる手法を取り入れた。

これは本来あるべきパワーなり柔軟性なりを発揮できていない、いわば休火山状態の筋肉群を覚醒させることで運動バランスを取り戻し、全身の出力をアップ、なおかつ高いレベルでコンディションを維持できる効果があるという。

若いながらも背中の痛みに苦しめられていたデシャンボーだったが、このトレーニングをスタートして以降は徐々に痛みから解放され、今では「痛みはもちろん違和感さえなくなった。今のボクはかつてないほど健康でパワフルだ」とご機嫌だ。

実際、体つきが変わるほど筋肉量が増えたにもかかわらず、バックスイング時の捻転は以前よりも大きくなっている。これは筋肉を覚醒するとともに可動域も広がった証。そもそも高い技術をもっていた彼、そこにパワーが有機的に結びついたのだから飛んで当たり前。デシャンボーの活躍により、このトレーニング手法にも一層の注目が集まっている。

朝食に卵4個、ベーコン5枚、トーストにプロテインシェイク2本をぺろり、1日に3500キロカロリーを摂取して体を大きくし、筋肉量もつけて巨大化したデシャンボー。

スロープレーで毎試合 プレー時間の計測対象に

さて、“ゴルフの科学者”と称するデシャンボー。それゆえか、これまではその“奇行”ぶりが何度も話題になった。

科学が最も効率的だと示しているから、という理由でアイアンの長さを好きな7番の37・5インチに統一。さらに曲がらない男の異名をもつゴルフレジェンド、モー・ノーマンを彷彿させるワンプレーン感バリバリのスイングでツアーにデビューした。

また、愛用するブリヂストンスポーツのボールは、濃度の高い塩水に浮かべた実験結果をもとに、自ら使用契約話を持ち込んだ。「塩水にボールを浮かべて回転させると、芯が真ん中にあるボールは一定の回転を続ける。これが少しでもズレていると最後は沈んじゃうんだよ」。2016年に来日した際、楽しそうに語っていた。

そんな彼の科学者ぶりが周囲から反感を買う事態も招いた。最たるものがスロープレーだ。18〜19年にかけては毎試合のようにルール委員にベタ付きされプレー時間を計測された。他の出場選手たちから多数のクレームが出たせいである。

これに対してデシャンボーが言うには、「ボクがやっていることはボクの中で納得できることばかりなのに……」。そして「これでもボクはスピードアップに努めている」と続けた。

パッティングも独特で、中尺パターのグリップ部分を左腕に沿うようにしてストロークしている。

科学的な実験の成果が 周囲を黙らせた⁉︎

パー5が“ドラサン” (ドライバー&SW)ホールに

そもそも「ピン位置を正確に知るため」と試合でコンパス(方位磁石)を持ち込んだり(最終的にルール違反の裁定が下った)、キャディにグリーンの傾斜を細かく測らせるなどの実験的行動がスロープレーを招いたのは明らか。彼からすれば「みんなはボクをイカれた科学者と呼ぶが、徹底した実験主義者なだけだよ」となる。ルールに抵触する行為は論外だが、周囲から批判の目線を浴びせられながらも勝ってしまう鈍感力は、ある意味すごい。

もっとも、今は飛距離が伸びたことでパー5が“ドラサン”ホールになり、距離によってはパー4もワンオンホールになった。そうなれば自然にスロープレーはなくなる。ある意味、彼の科学的な実験の成果が周囲を黙らせているとも言えそうだ。

練習場のみならず練習ラウンドにも弾道測定器のGCクワッドを持ち込んで計測するかと思えば、旗竿の材質によってピンを差したまま打つか、抜いて打つかを決めるなど、相変わらず科学者の雰囲気を匂わし続けるデシャンボー。これからのプロゴルフ界に変革をもたらすのは、誰も手を染めたことのないこんな取り組み方をするプレーヤーなのかもしれない。

ほんの2年前は精悍な顔つきだったが、今や首も太くなりラグビー選手かプロレスラーを思わせるほどしっかりとした体つきになった。

〈2020年主なスタッツ〉
世界ランキング 7位
FedExランク 4位
賞金ランク 2位
優勝 1回
トップ10フィニッシュ 8回
平均ストローク 68.956(2位)
ドライビングディスタンス 1位(323.8ヤード)
FWキープ率 106位(61.20%)
パーオン率 8位(71.84%)
平均パット数 25位(1.724)
※2020年7月27日現在

時には左打ちを披露した時もあった。

上の写真はクラブ契約先のコブラ社が発売しているワンレングス・モデルのアイアンセット。影響力も抜群だ。

写真/Getty Images