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スーパールーキー 金谷拓実の強さは静と動にあり

2021/02/26 ゴルフサプリ編集部

11月の『ダンロップフェニックス』でプロ初優勝を飾っただけでなく、プロ入り後の4試合はすべてトップ10に入り、期待以上の活躍を続けるスーパールーキー金谷拓実。その強さの秘密はどこにあるのか?今回はアマチュア時代から世界の舞台で金谷を取材してきた吉田洋一郎に分析してもらった。

GOLF TODAY本誌 No.584 142〜147ページより

プロ転向後はすべてトップ10入り!先輩・松山英樹も認める才能

元々はショットメーカーで、ここ1年で、飛距離アップ

19年にアマチュアとして『マスターズ』に出場したときに初めてトーナメント現場で金谷拓実選手のスイングを見ましたが、そのときはショットの精度が高くて曲がらない、ショットメーカーという印象でした。ドライバーでは確実にフェアウェイキープしてくるし、アイアンでは様々な球筋で狙える選手。そこから進化して、20年シーズンの試合を見ていると、飛距離が伸びていて、パワーアップしているなと感じました。

スイングの特徴はバックスイングとダウンスイングにあると思います。バックスイングはとても静かな動きでヘッドを上げていくのですが、ダウンスイングでは力強さがある。「静と動」のスイングによって、曲がらない精度をキープしながら、飛距離を伸ばしていると思います。決して外国人選手のような体格や圧倒的なパワーで飛ばしているわけではないので、アマチュアの皆さんにとっても、飛んで曲がらないスイングの参考になると思います。

腕の形を変えず静かに、シャフトを立てて大きな軌道に!

アマチュアにはコッキングで手首を横方向に曲げる人が多いが、金谷のように手首を柔らかく使いタテ方向に手首を折るコッキングができればシャフトが寝る動きにならない。

オーバースイングでもシャフトを立てるから腕と体が一体化している

静かに見えるバックスイングは、腕の動きに秘密があります。アドレスから動き出した瞬間はほとんど手元が動いていないのに、ヘッドが大きく動いている。ヘッド先行で動かす感じで、ハーフウェイバックでは腕とシャフトがほぼ90度になる角度でシャフトが立っています。

金谷選手はウッドだけでなくアイアン、ウェッジでもバックスイングでシャフトを立てるのが大きな特徴。シャフトが立つ理由はハーフウェイバックまで両腕ともほとんど曲げないからです。アドレスから腕の形を変えないから腕と体が一体化したスイングになります。逆にアマチュアはハーフウェイバックでシャフトが寝て、クラブがインサイドに入ってしまうので、腕と体がバラバラのスイングになりやすいです。

シャフトを立てることでバックスイングは、タテ軌道でシャット系のスイング軌道になっています。金谷選手は少しオーバースイングタイプですが、タテ軌道で腕と体が一体化しているのでスイング軌道が安定。それが曲がらない要因です。

アイアンやウエッジでもシャフトを立てている

ドライバーやフェアウェイウッドのような長いクラブだけでなく、アイアンやウェッジでフルショットするときも金谷はシャフトを立てている。

両腕を伸ばしたまま手首を柔らかく使えばシャフトが立つ!

始動直後の写真(左から2枚目)を見ると、手首が右足の前におさまっているタイミングで、すでにヘッドはスタンスの外まで大きく動いている。手首を急に折らないのでヘッドが低い軌道になっている。

LESSON 始動直後はヘッドを先に大きく動かす

始動直後は、手首だけを急に動かすのではなく、ヘッドを先行させる感覚で両腕と手首の三角形をキープしたまま動かすと、腕と体が一体化しながらシャフトを立てる軌道を作れる。

グリップエンドを支点にするように動かすと、手首の動きが小さくても、ヘッドが大きく動く。
ヘッドがスタンスの外に出ても、ヘッドの高さはボールと変わらないくらい低い位置をキープすると、スイングアーク全体が大きくなる。

左足を縮めて、伸ばす動きでスピードアップ!

バックスイングもダウンスイングも左ヒザでタイミングを取るイメージが理想。トップで左ヒザを曲げて、ダウンスイングで踏み込むと下半身リードの感覚で打てる。

①アドレスで軽く曲げていた左ヒザが、トップでは深く曲げて踏み込むための準備をしている。
②左ヒザは真上に伸ばしているのではなく、少し後ろ側に斜めに伸ばすことで、お尻が後ろに下がり、体が突っ込まないスイングになる。

お尻を後ろに動かせば左足を踏み込んでも、体が突っ込まない!

静かなバックスイングに対してダウンスイングは力強い動きが特徴です。トップではかなり左ヒザを曲げた準備体勢を作り、ダウンスイングで強く踏み込んで、フォローでは左足が少し浮くくらい地面反力を使っています。左ヒザを大きく曲げて伸ばす踏み込みは、他のツアープロと比べても大きいですし、踏み込みの強さによってヘッドスピードがアップしていると思います。

ここで気をつけてほしいのが、お尻の動きです。アマチュアの皆さんは左足を踏み込むときに体が前に突っ込んだり、左サイドに流れてしまう人が多いです。体の構造的に左足を踏み込むとそういう動きになりやすいのですが、金谷選手はお尻を後ろに動かすことで体が突っ込まないようにしています。感覚的には左足のカカトを踏み込みながら、体を回転させる感じです。

お尻を後ろに動かすと、ヘッド軌道はインサイドから入ってくるので、つかまったボールが打てます。アウトサイドからヘッドが入る軌道でスライスに悩んでいる人は特に、金谷選手のお尻を引きながら、左足を踏む動きが参考になると思います。

LESSON 胸を地面に近づけると、お尻が後ろに動く

どうしても伸び上がる癖がある人はダウンスイングで、胸を地面に近づける感覚でスイングすると伸び上がりを防止できる。胸を近づけることで、お尻も後ろに下がるので体が突っ込まない。
股関節が折り込まれていると前傾角度も崩れにくいので、あおり打ちにならない。

金谷拓実
かなや・たくみ/1988年5月23日生まれ。172cm、75kg。19年はアマチュアとして『マスターズ』に出場し、『三井住友VISA太平洋マスターズ』で史上4人目となるアマチュア優勝を達成。20年10月にプロ転向すると、11月にプロ初優勝を達成し、賞金ランキングでも3位につけている。

解説
吉田洋一郎
よしだ・ひろいちろう/1978年生まれ。デビッド・レッドベターのメソッドを学んだ後、PGAツアーや欧州ツアーで指導するプロコーチ約100名から直接指導を受ける。米国や欧州でのティーチング資格を多数取得している。


取材協力/リンクパフォーマンススタジオ