2022年、ゴルフの打ち始めはもう済みましたか?
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第3回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
撮影/篠原嗣典
2022年。僕は10数年振りに正月三が日の1月3日に初打ちをしました。
初打ちではなく、打ち始め、とも言います。
今では、ごく一部のゴルフコースでしか残っていない慣習ですが、バブル期のコースのお正月は、ちょっとしたお祭り騒ぎでした。
まず、樽酒の鏡開きがあって、それを升酒で来場者に振る舞うのです。
もちろん、飲み放題です。日本酒が好きな人には大サービスなわけです。スタートするまでに、フラフラになるほど飲んで、ボールが二つに見えると、その年の第一打目は見事な空振り、というシーンは、あるある話だったのです。
コースの売店では、無料でお雑煮やお汁粉が振る舞われました。
レストランがおせち料理風のお弁当オンリーなんていうことも、よくある話でした。
超高級なコースだけではなく、安価で有名なパブリックコースまで、このような大騒ぎをするのが、あの頃の年始のゴルフコースだったのです。
お祭り好きなゴルファーは、仲間で正月三が日からコンペを企画したりして、競って年始からコースに出掛けました。人気のあるコースは、正月三が日は予約が取れないのは当たり前でしたから、逆に付加価値が高まって、参加できるだけで「これは正月から縁起が良いぜ!」なんてことにもなったのです。
この頃のことを知っているゴルフコース関係者と思い出話をすることがあります。
「あれ以来、樽酒を飲んでいないなぁ。樽酒って、ほのかに樽の香りがして美味いんだよね」
コース関係者も、仕事をしながら、お酒が飲める唯一の期間が年始だったそうです。色々な評価はありますが、良い時代だったのです。