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2022年、ゴルフの打ち始めはもう済みましたか?

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第3回

2022/01/28 ゴルフサプリ編集部

太陽が照らすゴルフ場

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

あの頃の打ち始めのアレコレ

2022年。僕は10数年振りに正月三が日の1月3日に初打ちをしました。
初打ちではなく、打ち始め、とも言います。

今では、ごく一部のゴルフコースでしか残っていない慣習ですが、バブル期のコースのお正月は、ちょっとしたお祭り騒ぎでした。

まず、樽酒の鏡開きがあって、それを升酒で来場者に振る舞うのです。
もちろん、飲み放題です。日本酒が好きな人には大サービスなわけです。スタートするまでに、フラフラになるほど飲んで、ボールが二つに見えると、その年の第一打目は見事な空振り、というシーンは、あるある話だったのです。

コースの売店では、無料でお雑煮やお汁粉が振る舞われました。
レストランがおせち料理風のお弁当オンリーなんていうことも、よくある話でした。

超高級なコースだけではなく、安価で有名なパブリックコースまで、このような大騒ぎをするのが、あの頃の年始のゴルフコースだったのです。

お祭り好きなゴルファーは、仲間で正月三が日からコンペを企画したりして、競って年始からコースに出掛けました。人気のあるコースは、正月三が日は予約が取れないのは当たり前でしたから、逆に付加価値が高まって、参加できるだけで「これは正月から縁起が良いぜ!」なんてことにもなったのです。

この頃のことを知っているゴルフコース関係者と思い出話をすることがあります。

「あれ以来、樽酒を飲んでいないなぁ。樽酒って、ほのかに樽の香りがして美味いんだよね」

コース関係者も、仕事をしながら、お酒が飲める唯一の期間が年始だったそうです。色々な評価はありますが、良い時代だったのです。

冬ゴルフは暖炉のようなもの

冬にはゴルフをしない人たちもいますが、初打ちを甘く見ると大変なことになることはあまり知られていません。

昔のように競って行くべきだという気はありませんが、意識して、初打ちを早めに済ませようとすることは大切なのです。

僕の知り合いで、新型コロナウイルスでゴルフを自粛して、もう2年以上もゴルフをしていない人たちがいます。
ゴルフをするしないは、自由です。
ただ、思いだして欲しいのです。日本での最初のコロナの流行は2020年の初頭だったということを。

冬だからいいや。
寒いから無理しなくともね。
暖かくなったら行くからさ。

そういう気持ちで、ゴルフを遠ざけることが危険なのです。
ゴルフをしなくとも、死ぬわけではありませんし、損もしません。ちょっとしたきっかけで、ゴルフに行かないことが当たり前になると、改めて、行くのが面倒になってしまうことがあるのです。
僕の知り合いをじっくりと観察して、それぞれと話をしてみましたが、彼らの7割ぐらいは、このままゴルフをやめてしまうと思います。

冬ゴルフを避けることは、ゴルフを遠ざけるきっかけとして、危険が一杯です。

冬ゴルフというのは、突き詰めると暖炉のようなものなのです。
薪という燃料を足さなければ、暖かくならないし、消えてしまうのです。火種がなくなった暖炉に再び火を入れるのは、けっこう大変です。

ゴルフは、常に燃料を必要としています。新しいギアを試すことや、新理論を実践してみることや、その他の初めてのこと……ゴルファーは無意識に、次々に薪を放り込んで、炎を絶やさないようにしているのです。

ラッキーなことに、その気さえあれば、現代のゴルファーは薪に困ることはありません。手を伸ばせば、前後左右に薪になるものがゴロゴロしているからです。

油断して、暖炉の火を絶やしてはダメです。意識して、くべる薪の一つが、初打ちなのです。

年内ベストスコアを狙え!

「初打ちの醍醐味って、何ですか?」
昨年末に、若いゴルファーに聞かれました。

若いゴルファーは、ゴルフに行く数日前に、仲間とのノリと天気予報を確認して、ゴルフコースの予約を取る傾向があるそうです。365日、24時間、ネットなら予約が取れる時代です。月単位で、先の約束する今までの常識は変わりつつあるようです。

年末の段階で、初打ちの予定なんて全く決まっていない、という若いゴルファーに、僕は3日に行くよ、という話をしていて、先程の質問をされました。

「全てが、おニュー、なのだよ」

と答えました。

おニューは、おじさん用語で、新品という意味だとか、説明をする羽目になりました。

でも、彼も少しだけ言っている意味はわかってくれたようでした。

初ドライバーショット。初セカンドショット。初寄せ。初パット。初パー。初バーディー。初OBに、初池ポチャ。何でもかんでも初を付けられます。初づくしです。

ラウンドのスコアは、その年のベストであり、ワーストでもあります。どんなスコアでもベストになるなんていうのは、初打ちのときだけです。

「それは、少し面白いかもしれませんね」
と、彼は目を輝かせていました。

参考にならないから冬ゴルフのスコアは年の平均に加えない、という人もいます。年間のベストは、過去の1年のことで、1月を起点にしていない、という考え方もあるでしょう。それらを否定はしません。

だからこそなのです。
初打ちぐらいは、粋で可笑しいゴルフを楽しんでもバチは当たりません。

初打ちを使って、きっかけにするのです。
こういうことが上手いゴルファーが、本当の意味で、上級なゴルファーなのだと思います。

ちなみに、僕の2022年初打ちは、初バーディも出て、充実していましたが、初打ちから試打をするという無粋なものでした。今年も、こんな感じになるのだなぁ、と諦める意味では、最高の初打ちだったと自負しているのです。

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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