7番アイアンで150ヤード打てなくなったら、ゴルフをやめると宣言?

いちばん最初に練習場で打ったクラブは、7番アイアンでした。1978(昭和53)年頃、この国のゴルフのトピックスは、ヤード法を廃してメートル法の採用が決まったことでした。

練習場の距離の目安の看板は、“137”とか“91”でした。どうして中途半端な数字なの?と疑問に思ったものです。単純に150ヤードの看板と100ヤードの看板をそのままメートルにして使っていた結果です。そこにグリーンを模した目標がある練習場の構造上、やむを得なかったのだと推測します。

中学1年生の僕はいきなり7番アイアンで137メートルを打てるようになりました。それから40数年、7番アイアンは得意クラブのひとつです。20代後半から30代前半まで、僕は7番アイアンで環境が整えば175ヤードを打っていました。

「7番アイアンで150ヤードを打てなくなったら、ゴルフをやめるときだよ」体力的なことだけではなく、コースマネージメント的な意味も含めて、こんなことを自信満々に言っていました。若気の至りです。思い返すと恥ずかしいですが、調子に乗っていたのです。

7番アイアンはもう基準のアイアンではないの?

昭和のアイアンセットは、基本的に9本組みで売られていました。3番~9番、PW、SWの9本です。ウェッジはもともと単品で打っているオプションだったのですが、セットに入るようになったのは1970年代の終わり頃で、1990年頃から再び現在のように単品のウェッジが売られるようになりました。アイアンセットの中にSWが入らなくなったのは、21世紀になってからです。

9本組みでアイアンセットが売っている時代、7番アイアンはそのアイアンを代表する1本でした。試打用に用意されているアイアンは7番が決まりでしたし、アイアンのフェースの形状も7番以上がフルスイング用にカチッとしていて、8番以下は丸みが加わって、いろいろとテクニカルに使用できるようになっているものでした。

令和になった現在も試打用のアイアンは7番が中心ですが、アイアンセットは5番~9番、PWの6本組みを基本として、7番~9番、PW、AWという5本組セットもありますし、ピンゴルフのように自由に1本から選べるケースもあります。7番がセットに入っていない組み合わせも出てきているのは、同じ7番アイアンでもロフトなどが全く違うものが市場に混在しているからです。

だからこそ、7番アイアンを基準にしている流れがあります。「このアイアンは7番でこんなに飛びます」というように、刺激的なアピールができるからです。ヘッドスピードが速いゴルファーなら、7番アイアンで200ヤード以上飛ばせるクラブは複数存在します。

良くも悪くも、7番アイアンは現在でも基準のアイアンだと言えるのです。

7番アイアンが消えてしまう未来があるかもしれない?

2023年秋、僕はもうすぐ還暦ゴルファーですが7番アイアンで150ヤードを打っています。これはクラブの力であり、数字のマジックみたいなものです。使用しているアイアンがぶっ飛び系アイアンだから可能なのです(クラシックなロフトのアイアンより、ロフトを立てるなどの工夫をして、2番手ほど飛ぶアイアンを「ぶっ飛び系アイアン」と分類しています)。

「7番アイアンで150ヤード以上打てるようにしないとゴルフは上手になれない、と言われたんですけど、本当にそうですか?」という質問を若い男性から受けました。
「そういう考え方もあるけれど、一概には言えないな。飛ばなくとも上手いゴルフをする人はたくさんいるし、飛ぶのにスコアが良くならない人もたくさんいるから」と答えました。

“○番アイアンは、×××ヤード”と決めつけて必死になって守ろうとすることを、“○番アイアンの呪縛”と呼びます。7番アイアンで150ヤードは、もっとも耳にすることが多い呪縛です。そんな決まりはくだらない、と一刀両断するのが正解です。

7番アイアンへの思入れ

アイアンはそれぞれの番手で安定して狙った距離を打つ道具であって、10発打って1発出るホームランで満足する道具ではないからです。飛距離よりも精度が優先されるべきなのです。

番手の呪縛から逃れる決定的な方法として、ウェッジのように番手を廃止して、ロフトをソールに刻印したアイアンもあります。面白い発想ですが、ゴルファーの心には刺さらなかったようです。しかし近い将来、番手を廃止して違う数字や記号がアイアンの番手の代わりになる、と予言している見識者もいます。

7番アイアンは得意なクラブですし、思い入れも強いクラブです。どんな形にしてもなくなってしまうのは寂しくて、受け入れがたい。あとどのくらいの年月ゴルフができるかは自分ではわかりませんが、最低でも2回はアイアンを新しくする機会があると予想しています。

どんなに時代が変わっても、僕のキャディバッグには大好きな7番アイアンは入っているのだと信じています。それも、7番アイアンの呪縛なのかもしれない、ニヤッとしてしまうのもゴルフの内なのです。

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。



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