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西郷真央の胆力が示す大物感

あのジャンボ尾崎に”逆らった“という逸話もあり!

2021/10/25 ゴルフサプリ編集部

西郷真央

西郷真央が初優勝まであともうひと踏ん張りと迫っている。
NOBUTA GROUPマスターズGCレディースでは、優勝した古江彩佳に1打及ばず、今季6度目の2位。それでも「自分を信じて。またチャンスが来たら頑張ります」と初優勝に向けて前を向いた。

ジャンボ尾崎が「俺にはむかったやつは初めてだ」と発言

「常に上位にいられるのもすごいこと」という、大会前に師匠である尾崎将司に言われたのも大きかっただろう。西郷には腹の座りが感じられる。プロになって間もないころに聞いた2つのエピソードは、それを裏付けて余りあるものだった。

1つ目は、なんとジャンボに”逆らった“逸話だ。ジャンボファンでもあった父、雄史さんに連れられて、ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー一期生となって間もないころのこと。中学3年生だった。テークバックについての指導をされたのだがこれを鵜吞みにするのではなく「私はこれで行きます」と、自分流を貫いたのだ。ジャンボの全盛期を知らない世代ではある。怖いもの知らずの若さもあったに違いない。試合前で、スイングをいじりたくないという事情もあったろう。それでも、なかなかこう言い切るのは難しい。

さすがにジャンボには「俺にはむかったやつは初めてだ」と言われた。ジャンボのことは尊敬しているし、褒められれば自信が深まる。そんな中でも、ブレずに自分の考えを主張し、行動することができるのは強い。中学3年生にして西郷はそれを身に着けていた。

西郷真央のショットにギャラリーから拍手が起こる(写真は日本女子オープン)

日本女子アマでは前代未聞のアクシデントにも同様せずに勝ち切る!

もう一つの話は、高校3年で出場した日本女子アマでの話。最終日、最終組で一緒にプレーしていた相手のクラブが、局外者に折られるという前代未聞のアクシデントにも動じず、優勝を手にしたというものだ。

大会主催のJGA専務理事が運転し、会長も乗るカートが、最終組で優勝争いをする3人のカートを無理に追い越した際のとんでもない出来事。“被害者”は今回、優勝した古江だった。あまりにも理不尽な出来事に、折れたクラブを手に泣きながら怒る姿その見た西郷は、古江の心配までしたほどだ。

日本タイトルを争っているとは言っても、まだティーンエイジャーのアマチュアだ。折れたのが自分のクラブでなくとも、同伴競技者が動揺する姿に精神的な影響を受けたとしても無理のない状況だった。だが、西郷はすぐに自分のプレーに戻ってバーディーを奪っている。その後も集中を続け、並みいる実力者相手に優勝を手にしている。

プロ転向後は前述のとおり未勝利だが、100人以上が出場する試合でも、優勝者はたった一人というゴルフでは、負けることの方が圧倒的に多い。それなのに「また負けた」「まだ勝てない」と言われるのは、常に優勝争いに顔を出しているからに他ならない。それ以外の“その他大勢”の敗者なら、勝てないことが話題にも上らないからだ。

もちろん、周囲の期待もある。本人もそれに応えようとして焦る。同世代のライバルたちの結果に、気持ちが揺れることもあるだろう。そんな心に、絶妙なタイミングで声をかけてくれた師匠。西郷の心は、さらにどっしりと落ち着き、優勝すべき時を待っているに違いない。

文/小川淳子
写真/相田克己