渋野日向子のプレーと笑顔は、米ツアーでも観客を増やせるか?
樋口久子 三菱電機レディスで国内ツアー6勝目!
ギャラリーを魅了する渋野日向子(写真は日本女子オープン)
樋口久子 三菱電機レディスで国内ツアー6勝目を飾った渋野日向子。これ以上ないほどにドラマチックな優勝劇で、渋野の将来に期待が膨らむ。これから挑戦しようとしている米ツアーをどれだけ盛り上げられるか、に関してだ。
シーズン終了後に米ツアーに挑戦する渋野
樋口久子・三菱電機レディスは、ペソンウに2打のビハインドだった最終ホールでバーディーを奪ってぺのボギーを誘う。プレーオフに持ち込むと、パー5の18番セカンドショットをピン左3メートルにつけてイーグル奪取。勝利をもぎ取った。
コロナ禍で、無観客の試合も多く、復活優勝となったスタンレーレディスも観客はいなかった。だが、今回は3000人の上限はあるが観客を入れての開催。天気が今一つだった最終日も2892人の観客の喝采を受けた。
これぞ渋野。試合に出始めた頃から観客を「ギャラリーさん」と呼び、笑顔で巻き込んでいく。初出場でいきなりメジャータイトルを取った2019年全英女子オープンの様子が思い起こされる。日本からやってきた無名の新人。最初はほとんどの人が渋野を知らなかったが、心からゴルフを楽しむ小気味よいプレーぶりと笑顔で多くの人を引き付けた。ホールを重ねるごとに増えていく観客。それを味方に、渋野は優勝に突き進んだ。
全英の後、日本でも多くのギャラリーとともに戦った。だが、コロナ禍でまずしあいがなくなった。再開された後も、2020年は観客を入れた試合は1つもなかった。スイング改造に苦労していたこともあるが、多くの人に見られてプレーすることでパワーを増大させるタイプの渋野には苦しい日々だったに違いない。
それを乗り越えて、無観客のスタンレーで優勝。今回ついに、人数制限付きとはいえ、観客の前で勝利の美酒を味わうことができた。
次に巻き込んでいくのは米国のギャラリーだ。渋野は、シーズン終了後12月に行われる米ツアーのQシリーズ出場を決めている。144ホールプレーして、20位までに入れば、来季の米ツアー出場権を得ることができる。シビアな戦いだが、これをクリアして、2年越しの米アーでプレーするために、日本の最終戦リコーカップを欠場することも口にしている。
世界中から実力者が集まるレベルの高い米ツアーだが、実はメジャーなど一部の試合を除けば、観客は決して多くない。男子より試合数が多く賞金が高く、たくさんのファンがいる日本の女子ツアーとは大きく状況が異なっている。
ここで“外国人”でもある渋野が、どれだけ観客を引き付けることができるのか。もっと言えば、どれだけ観客を増やすことができるのか。“笑顔”という言語を超えた武器で、多くの観客を引き付けた全英の再現が、少しずつでもできれば、さらなる飛躍も期待できるはずだ。
男子とは試合数も賞金も人気も雲泥の差の米女子ツアー。全英でスマイリングシンデレラと呼ばれた渋野日向子が、ここに新たな風を吹き込むことができるかどうか。今回のイーグル決着は、そんなことまで思わせるものだった。
文/小川淳子
写真/相田克己