カーボンウッドのテーラーメイド ステルス ドライバーは新しい時代の幕を開けるのか?
コリン・モリカワも実践投入したテーラーメイドの新ドライバー『ステルス』を深掘り
2022年、米ツアー初戦「セントリー トーナメント・オブ・チャンピオンズ」で、テーラーメイドの新しいブランド『ステルス(STEALTH)』が、正式にツアーデビューした。
これからのドライバーは、カーボンウッドになるという未来について掘り下げる。
ツアー初戦5位タイのコリン・モリカワはステルスを実戦投入!
米ツアー初戦「セントリー トーナメント・オブ・チャンピオンズ」は、2022年1月6日から1月9日までハワイで開催され、テーラーメイドの『ステルス』のドライバーを実戦投入したコリン・モリカワが5位タイだった。
4日間のトーナメントを録画して、何度も何度も繰り返して見た。モリカワのドライバーショットを確認するためだ。
テーラーメイドの新ブランド『ステルス』のドライバーは、カーボンウッドである。
過去にも、カーボンウッド、カーボンフェースのドライバーは出現しては消えてきたという歴史がある。
消えてしまった理由は、打音の悪さとフェースが傷に弱かったからだ。
モリカワのドライバーショットの映像を見て、正直に書くと、ホッとした。
表現が難しいのだが「キン」という感じの金属系を感じさせるドライバーの打音を響かせていた。
少し音量は控えめで、残響が少ないところは好みの範囲であるが、過去のカーボンヘッドや、カーボンフェースのような「ボコ」とか「ペシッ」というような打音ではなかった。
モリカワは、過去2年でメジャーを2勝しているが、そのときにバッグに入っていたドライバーは『SIM』だった。昨年、新しい『SIM』にチェンジせずに、初代の『SIM』を使い続けたのである。
こだわりや愛着があるドライバーを変更して、トーナメントに挑むというだけで『ステルス』に注目が集まるのは当然である。
モリカワのバッグに新たに入ったのは、3種類ある『ステルス』ドライバーの一つの『ステルス プラス ドライバー』だった。
ソールのフェース寄りに弾道調整を可能にする移動可能なウェイトが搭載されているやや前重心のドライバーが『ステルス プラス ドライバー』である。
トーナメント直前のコメントで、基本的には前のドライバーと同じなのに初速だけが増して、少しだけ飛ぶようになった、ということだったので、飛距離に注目が集まった。
モリカワの昨年の平均飛距離は「295.2ヤード」だったが、今回のトーナメント4日間の平均飛距離は「297.3ヤード」と少しではあるが伸びている。
トッププロにとっての数ヤードは、一般的なアマチュアでは例えようがないほど大きいと聞く。まずは成功とみて良いのだと思う。
それよりも、スペックで興味深いのは、フェアウェイキープ率が71.43%(出場選手の9位)とパーオン率79.17%(同2位)だ。
モリカワは、アイアンの精度でゴルフを作る傾向が強いが、その下支えはドライバーの精度だということも事実だ。
2022年の新ドライバーは『ステルス』だけではないが、テーラーメイドが新しい時代の幕を開けると宣言して投入するカーボンウッドをツアーでトッププロがどのように使い熟すのか? 注目するのが正解である。
カーボンウッドはドライバー素材の主役になる未来になるか?
個人的には『ステルス』で、最も注目したのは、いわゆるアドレスビューで見えるクラウンの白黒のデザインをやめたことだ。
テーラーメイドといえば、パンダ柄というイメージだったので、それに慣れているゴルファーは辛いのではないかと思ったからだ。
赤いフェースについては、カーボンを採用すると決定したときに、最も革新的なカラーは何だ? と検討した中で、赤でしょう! という感じで決まったらしい。
マットなブラックに、赤いフェースは、実際に構えてみると、違和感がなく集中しやすい、と、評判になっている。
カーボンのフェースは、重量を軽く出来ただけではなく、大きさも大きく出来るメリットがあったという。
60層のカーボンで、今までのカーボン素材の弱点をクリアしたということについて、テーラーメイドが今後はカーボンウッドが主流になると自信を持って宣言しているのだから、実際にそうなのだろうと思われる。
しかし、直近の数年間、各メーカーのドライバーのヘッドの多くの部分はカーボンになっていたので、実質的にはカーボンヘッドの時代にはなっていたのだ。
問題は、フェースをカーボンにするメリットで、それが、現場で機能するのか、ということだ。
カーボン繊維にかんしては、日本の技術が世界一であり、他国を大きく引き離している。
カーボンフェースについて、国産メーカーが本気を出せば、もっと優れたものがすぐにでも出来そうである。競い合ってこそ、新製品はより良くなるものだ。
カーボンウッドと、将来的に呼ぶ日が来るかどうかは別として、大いに期待は膨らむ。
『ステルス』のカーボンウッドのドライバーは、理論上は、チタンウッドを凌ぐ性能があるというテーラーメイドの発表を見ると、新しい素材の魔法にかかりそうだ。
上手く騙されて、魔力で、今より飛んで、正確になるのであれば、それはゴルファーにとって幸せなことだ。結果が出ることが、ゴルフにおいては全てに勝る。
かつて、チタンドライバーが市場に出てきたときも、これからはチタンが主流になるという声より、否定的な声のほうが大きかった記憶がある。
スチールでの限界というマイナスをチタンは大きく越えたことで、ゴルファーに受け入れられた。
トッププロの成績に注目すれば、トップレベルのハードヒッターの参考にはなると思うが、一般のアマチュアが使うメリットについては、色々なインプレッションが出るのを待つ必要がある。
発売されるまでの時間。色々と想像して、ワクワク、ドキドキできることは、無料でできるゴルファーの楽しみである。そういう意味で『ステルス』は最適なドライバーであることは間違いない。
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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