あと何年できるか意識しつつも、上田桃子が教科書をめくり続ける理由
『自分自身に勝てた』という年はほぼない。『もっとこうできた』と考えてしまう。
写真は2021年日本女子オープン時のもの(写真/相田克己)
「まだ教科書をめくり続けているのだな」。Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント最終日、優勝がほぼ絶望的な場面になっても、あきらめずに攻め続ける上田桃子の姿に、1年近く前に取材した時のことを思い出した。
優勝争いで上田桃子が見せたゴルフの魅力を伝えるもの
2007年に21歳で日本ツアー賞金女王となり、2008年から6年間、米ツアーを主戦場に戦った。2014年に主戦場として日本に戻ってから7勝を挙げ、通算14勝。35歳になった上田は、次々に若い選手が入ってくるツアーではベテランになった。
同世代どころか、年下の選手でも、ツアーから離脱する者が増える中、淡々と心身を整え、モチベーションを高いところで保ってプレーを続け、昨年もパナソニックオープンレディスで優勝している。
ベテランとして、常に現役生活を離れる時を考えていることを口にしたのは、その少し前のことだ。「あと何年できるか。どこが終わりだろうか、は常に考えています。でも『自分自身に勝てた』という年はほぼない。『もっとこうできた』と考えて、常に教科書の次ページをめくっている感じ」。そう笑う姿は、ゴルフが楽しくて仕方ない人のものでしかなかった。
ゴルフをすればするほど、その奥深さに取りつかれ、ツアーという最高の舞台で戦うことにどんどんのめりこんでいく。年齢とともに体力が衰えても、飛距離が若手にかなわなくなっても、自分の武器を探しながら戦い続ける。「年齢も含めてリミッターをなるべく外したい」と限界突破を常に目論んでいる。そんな上田の姿は、ツアーでの戦いに厚みを持たせていると言っていいだろう。
2022年の初戦は、米ツアーのアジアシリーズ、HSBC女子世界選手権。最終日に64を叩き出して11位タイに入り、健在ぶりをアピールした。その次のTポイント×ENEOSでは優勝争いを演じたことで、今季も元気いっぱいに戦えるところを見せた。
「絶好調というわけではないですけど、その中で自分の今、できることを一生懸命やれた」と胸を張り「同じことをやる感じかなと思います。今週ダメだったので、また来週チャレンジした時にどうなるかという感じかと思います」と、力強く次への抱負を口にしている。
「自分自身が一番に感じているゴルフの魅力を、一人でも多くの人に伝えたい」という言葉通り、上田のプレーは人をひきつけてやまない。
ゴルフに夢中になり「教科書のページをめくり続ける」上田の姿そのものが、ゴルフの魅力を多くの人に伝えている。そのことに、本人は気づいているのだろうか。ただただ夢中で次から次へとページを繰る姿こそが…。