選手会の中でも圧倒的な存在感を見せたタイガー・ウッズ

解決の糸口が見えぬまま、PGAツアーの2021-22年シーズンは8月28日に終了。

9月15日から新しいシーズンを迎えることになるのですが、LIVゴルフはその間隙を衝いて9月2日~4日にシリーズの第4戦をアメリカのボストンで開催。
そこには、PGAツアーから新たに複数の有力選手が加わると伝えられています。

その本命は今年の全英オープンを制したキャメロン・スミス。また、松山英樹の名前も強く噂されています。

こうしたLIVゴルフの攻勢にはPGAツアーのミッショナー=ジェイ・モナハン氏はもちろん、プレーヤーにも不快感を隠さないものが大勢います。

PGAツアーのプレーオフシリーズの第2戦「BMW選手権」の開幕直前(8月16日)、ロリー・マキロイらLIVゴルフに反発するトッププレーヤー(報道では22人)がミーティングを行いました。
そして、そこにタイガー・ウッズが遠路、フロリダからプライベートジェットに乗って、加わったのです。PGAツアー選手たちには心強い味方です。

そのミーティングで何が話されたのか。正式には発表されていませんが、複数メディアが伝えるところでは、PGAツアー内の新シリーズとして、トップ60人だけが出場できる、賞金総額2000万ドル、予選カットなしのトーナメントを年間18試合開催するという案。
さらには、ゴルフコースではなくスタジアムでのワンデートーナメントのシリーズという企画も提案され、それらは選手たちの承認を得て、既にコミッショナーに提出されたそうです。

これらのアイデアの立案は、タイガーが旗振り役になっているようです。マキロイは、ミーティングにおけるタイガーの存在は絶大で、
「彼は、私たち全員が尊敬して来たヒーロー。彼の声は、ゴルフの世界で誰よりも強く響く。彼の役割は、私たちが進むべき方向にナビゲートすることだ」と語っています。

1997年、アーノルド・パーマーにPGAツアーの将来を託されたタイガー・ウッズ

この話を聞いて思い出したのが、1997年シーズンのPGAツアーアワードのことです。

その年、タイガーは賞金王となり、「アーノルド・パーマー・アワード」を受賞しました。
アワードの式典で、タイガーはアーノルド・パーマーから直接、トロフィーを授与されたのですが、その際にパーマーから託されたことがありました。

そのときの様子をフロリダの地元紙「タンパベイ・タイムズ」は、「パーマーはタイガーに、ゴルフというゲームを守ることを頼んだ」という見出しで次のように伝えています。

アーノルド・パーマーはPGAツアーの表彰式で、「ちょっと待って」と壇上、タイガーの歩みを止めた。そして、少し驚いた様子のタイガーに、「君に言いたいことがあるんだ」と言った。

パーマーは、まずPGAツアーの今日の成功について話した。
1958年に100万ドルだった賞金は、今年は9500万ドルに達している。

「大金のためにプレーしている君たち」とパーマーは、他の30人の受賞プロに向かって言った。

「ゴルフというゲームの健全性と伝統を守る義務があることを忘れないでくれ」
 そして、タイガーの肩に手を置くと、こう言った。
「ここにすべてがある。責任は君の肩にある」

これにタイガーがうなずくと、
「ゴルフを守ってくれ。ゴルフは美しいものなんだ」
出席した30人のプロたちは、パーマーの言葉に長いスタンディングオベーションで応えた

タイガーはゴルフの健全性と伝統を守ろうと、敢えてPGAツアーに改革に自ら動き出したのだろうか。パーマーに託された思い、パーマーとの約束を守るために。

世界中で話題になったタイガーとパーマーが出演したゲームソフトのCM動画。この2人の絆は深い。




小関洋一
出版社、編集プロダクションを経て、フリーランスのライターに。テレビ誌・トレンド誌などで、主にスポーツに関する記事を執筆。テレビ、ラジオのスポーツ番組の構成も手掛ける。現在はゴルフ誌を中心に内外の最新トレンドを伝えたり、ゴルフ場のレポートを担当している。東京ゴルフ倶楽部の年史製作に携わっており、ゴルフ史に関する執筆機会も多い。