どこへ行っても変わらない勝みなみ

自分をコントロールする力と、周囲を味方につける力。勝みなみの強さを探ってみると、この2つが浮き彫りになる。

勝にとって、今年の日本女子オープンは水曜日のチャンピオンズディナーで始まったと言っていいだろう。歴代優勝者が集い、歓談し、ディナーを共にする恒例行事。レジェンド、樋口久子を始め、現JLPGA会長の小林浩美、日蔭温子、谷福美、塩谷育代、服部道子、不動裕理…。
今年は14人が居並び、これに大会主催のJGA会長、名誉会長らが加わる。最年少は勝と、2020年大会優勝の原英莉花だ。

乾杯の音頭は、ディフェンディング・チャンピオンが取ることになっていたが

「メチャメチャ緊張して頭の中が真っ白になって何を言ったか覚えてません」

と言う勝は、コロナ禍で中止となった昨年大会で乾杯をしていない原を巻き込み、一緒に挨拶したという。

緊張しながらも、とっさの機転を利かせたイベント後は、試合に集中。
大会前の言葉で印象的だったのは「女子オープンは自分にとって特別な大会。去年のような優勝の景色を見てみたい」と言う連覇への意欲と「挑戦者として、また今週勝ちたい」という謙虚な言葉だった。

4日間、72ホールを見据えて、初日の9位から、1打1打コースに、そして自分に向き合い続け、首位の申ジエに3打差で最終日を迎える。

前半、しっかりと攻めて申を捕まえながらも

「ボギーは来るものだと思ってやっていました」

と、タフなコースである覚悟をしながらプレー。13,14番の連続ボギーで申、吉田優利と3人が首位を並走した時も落ち着いていた。大詰めの17番でバーディが、結果的に勝利への決め手となった。

プレー中はずっと、“アンパンマンのマーチ“と、1日に亡くなったアントニオ猪木さんが愛した”道“という詩について考えていたという。どちらも自分の目的を信じ、歩き続ける者の背中を押してくれるものだ。こんな風に勝は、自分を鼓舞し続けた。

幼いころから、コーチにつくのが当たり前の風潮の中で、すべてが自己流で、スイングもプレースタイルも、自ら考え、修正していく姿勢も変えないことも、自分をしっかりコントロールすることにつながっているのだろう。

1万人弱のギャラリーが集まったこの日も

「(応援が)すごく力になりました」

と口にしたが、勝の魅力に取りつかれるファンは多い。近年、人気の女子ツアーには“推し”のプロを応援する固定ファンが多くいる。
シャツやキャップを揃えたり、声出しがはばかられるコロナ以降は、さらに凝った応援バナー(横断幕)が増えた。

ファンの間の通路を通ってティーイングエリアにやってくる選手たちを待つ時間は、ファンにとっては大切な一瞬だ。
スタート順に次々に入れ替わるファンの声援に応える選手の様子は、実に様々だ。少し照れながら会釈をする者もいれば、にっこりとほほ笑み返す者もいる。クールな対応も珍しくはない。その中にあって、勝の対応は実に温かい。

「おはようございます!」「みなみちゃん、頑張って!」と、声をかけられると「おはようございます!」「ありがとうございます!」「は~い!」などと言いながら両手を振ることも珍しくない。
もちろん熱心な応援をする相手とは顔見知りになっているに違いないが、スタート前の緊張感などみじんも感じさせない。「これはずっと応援したくなるだろうな」と感じるものだ。

まだ24歳の若さの勝には“おばちゃん力”と言ったら怒られるだろうか。それなら“親戚のカワイイ姪っ子力”と言い換えてもいい。
まぁ、本人も自分を称して「おじさんみたいなところが…」と言ったことがあるから、勘弁してもらおう。
おじさんでもおばさんでも姪っ子でもいい。飾らないコミュニケーション能力が極めて高いのだ。

高校1年生になったばかりでプロの試合に勝ち、1998年度生まれの黄金世代をけん引してきたトッププロにもかかわらず、高校生のようなあどけない面も、トッププロの強さ、したたかさも持ち合わせているのが、勝みなみなのではないだろうか。

ただ「かわいい」でも、ただ「強い」でもない親しみで多くの人を味方につけ、自分をしっかりと持つ力。それが勝の強さにつながっている。

優勝直後には、懸案だった米ツアーQT受験を高らかにファンの前で宣言した勝。世界中、どこに行ってもこの2つを持ち合わせていれば、じっくりと戦うことができるに違いない。