モーダスとNSプロとDGの違い説明できる？ スチールシャフトについて知っておきたいこと【吉本巧のゴルフギア教室】
吉本巧のゴルフギア教室 第2回
毎年たくさんの新しいギアがデビューするゴルフマーケットで自分に合った一品を選ぶのは至難の業。噂に流され手を出したら大失敗！ という話もよく耳にする。安い買い物ではないだけに、セレクトミスは絶対避けたいところだ。こんな状況で役に立つのは正しい知識。道具はもちろんゴルフのテクニックについて正しく理解していれば惑わされない。ということで生まれた、ゴルフのメカニズムに精通したコーチ・吉本巧がギア目線から森羅万象を解説するこの企画。第２回のテーマはアイアンとのコンビには欠かせないスチールシャフトだ。
写真／ゴルフサプリ編集部
スチールシャフト選びは110グラム台からスタート
ゴルフクラブのシャフトはスチールとカーボンがベース。今回はスチールシャフトについてお話したいと思います。
スチールとカーボンを比べた場合に、特性がわかりやすいのは圧倒的にスチールです。それこそ無限大に作れるカーボンは汎用性がとても広いですが、そうなると特性も細分化されるため、ある意味、その性格がわかりにくくなります。コントロール性が求められるアイアンにスチールシャフトが使われてきたことが多いのはそのためです。
例えばアイアンを選ぶ場合、使うヘッドが決まっていたら、次にクラブの全体重量を決めますが、これはイコール、シャフト選びと考えていいでしょう。軽量化が進んでいるスチールシャフトですが、平均的には110グラム台くらい。そこからスタートして、ちょっと重めの120グラム台、ちょっと軽い100グラム台と試して選んでいくのが一番いいと思います。
ちなみに、私がアマチュアの方にクラブを選んでもらう場合には、ミドルアイアンからのフィッティングをおすすめしています。ドライバーからフィッティングする人もいるようですが、末端のクラブからやっちゃダメ。ウェッジからやるのもNGというのが私の考え。クラブセットの真ん中あたりになるミドルアイアンの重量が決まれば、その流れでドライバーからウェッジまで決まっていきます。アイアンの次にドライバーを決めれば、その間を埋めるユーティリティやフェアウェイウッドの重量も自然と決まっていく。最後はウェッジを決めればいいのでシンプルなんです。
モーダス120はアマチュアの気分を良くしてくれる“人たらし”シャフト
アイアンに何を求めるかもシャフトを決める重要な要素です。飛距離が欲しければカーボンシャフトや先調子という選択肢がありますが、今回はスチールシャフトの話なので、カーボンについてはまたの機会にお話しします。
アイアンのスチールシャフトには、モーダス、NSプロ、ダイナミックゴールドというトップ3があって、選ぶ際にはこれらがひとつの目安になると思います。3つが3つとも違った性格ですが、大体どれかが、どのメーカーのアイアンにも装着されています。
モーダスの場合105、115、120、125などがありますが、万人向けは120。私はこのモデルを“ニクいシャフト”と呼んでいます。アマチュアゴルファーを甘やかし、気分良くしてくれる“人たらし”のシャフトだからです。
なぜ、“人たらし”かと言うとフレックスによって幅がめっちゃ広く全て性格が違うから。RからTXまで4種類、最大15グラムの重量差がありますが、剛性分布を見ると他のモデルがある程度決まった範囲に収まっているのに120だけはすごく広い。本来はフレックスが違うだけなのですが、別のシャフトと言ってもいいくらい。それだけ、いろいろな人に合うということです。
ちょっと重めで軟らかいのも“人たらし”たる所以です。数字だけ見ると重そうですが、スイングするとそれほど感じず、むしろ振っている感があってスイング満足度が高い。軟らかい分しなりますから、クラブを操っている感じも得られて上手くなった気にさせてくれます。ボールを包み込むような感じもあってミスヒットした時も打感が軟らかい、球がつかまってハイドローが出やすいなど、アマチュアゴルファーの心をくすぐる要素が満載なんです。
スチールの三巨頭、モーダス、NSプロ、ダイナミックゴールド
ご多分に漏れず、モーダスもプロが使い始めて広がったシャフトです。プロが使ったのは125ですが、これがダイナミックゴールドのS200とほぼ一緒だった。一緒なら使い慣れたものの方がいいように思いますが、S200には個体差があったようで（昔の話）、プロが国産のモーダスにシフトし始めました。そもそもS200に対抗するために作られたのが125だったと言われているのでプロにフィットしたのでしょう。それが世に知られることとなり、アマチュアも使いはじめましたが、大多数の人にとってはいかんせん重い。そこで受け皿として登場したのが120で、大ヒットしたという経緯があります。
ダイナミックゴールドについては、アメリカのプロがS300を使っていて、それが日本に来て、アメリカ仕様よりちょっと短いS200となりプロが使い始めて定着。スチールシャフトの王様になりました。
基本的には元調子で重量も重めですが、昔はこれしかなかったのでみんなが使っていて、使いこなせるのがステータスのような時代が続きました。でも、さすがにアマチュアゴルファーには使いこなせないので、日本シャフトがNSプロ950を作ったのです。
NSプロ950はダイナミックゴールとは対極にある、軽量で先調子のシャフトです。それまでダイナミックゴールドが使えなかった人がどんどん950に流れていって、いまやアイアンの純正スチールシャフトの王様になっています。
ビッグ3について言えば、ダイナミックゴールドという王様がいて、その後アマチュア向けにNSプロ950という軽量スチールが出ましたが、その間を埋めるモデルがなかった。そこにスポッとハマったのがモーダス120という構図ですね。ちなみにNSプロ950には重いモデルもありますが、それをモーダスという新しいブランドにしたのもあっぱれな販売戦略。いまや３大スチールシャフトのうち、2つが日本シャフトの製品になったわけですから、すごいことです。
吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。
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