純正シャフトはカスタムしなくてもいい熱量の人たち向け

今、ドライバーのシャフトは戦国時代。飛ぶか飛ばないかは8割シャフトで決まると言ってもいいほど飛距離性能を左右しますから、みんなが熱を傾けるのも頷けます。侍の刀じゃないけれど1本に魂を注ぎ込むみたいな感じも心をくすぐりますよね。

さて、ドライバーのシャフトには純正シャフトとカスタムシャフトがあります。純正シャフトは最初からヘッドに装着されているもので、シャフトメーカーに作ってもらっています。正直なところクォリティはそれほど高くありません。

というのも、カスタムシャフトの場合、1本5~6万円から、いいものになると7~8万円もします。はじめからそんな高価なシャフトを着けたドライバーが今の値段で収まるはずがありません。そうでなくてもドライバーが1本10万円前後もする時代。これ以上高価になったら誰も手を出せなくなりますから、純正シャフトはカスタムしなくてもいい熱量の人たち向けに作ってあると考えられるのです。万人向けの中調子が多く、軟らかめで重量も軽めになっているのもそのあかし。実際、中・上級者が使うとちょっと頼りなさを感じがします。

純正シャフトは中・上級者が満足せず使いきれないので、それに対応するべくカスタムシャフトが出てきました。現在主流になっているのは中元調子。真ん中より手元側にキックポイントがあるタイプのシャフトです。シャフトをカスタマイズするゴルファーは、80台中盤くらいからシングルの人が多い。このレベルのゴルファーはスイングが安定してヘッドスピードも出てきますが、そうなるとキックポイントが手元側にある方が安心できます。先端側の動きが多い先~中調子だとヘッドが動きすぎるのです。かといって元調子だとシャフトのしなりを使いきれなかったりする。ということで、やや手元側がしっかりした中元調子が人気なのです。

ツアープロは元調子ユーザーが多かったですが、今は中元調子に傾いています。いまだに元調子派もいますが、元すぎるとしなりを感じづらい。逆に中調子は楽ですが、先側が暴れる感じのものもある。楽だけ取れば中調子ですが安定感も欲しいので、元調子の要素が入った中元調子を使い始めているわけです。プロにとってはちょっとやさしく、アマチュアは中・上級者層と折り合いがつきやすいので、今のカスタムシャフトは中元ブームと言ってもいいかもしれません。

そんな状況なので、どのメーカーも中元調子を用意しています。シャフト選びのポイントは「重量」、「硬さ」、「キックポイント」の3つ。どれも等しく重要ですが、シャフトの性格が出るのはキックポイントですから、選ぶ際にはここから決めて、重さ、硬さを合わせるのがいいと思います。ちなみに私の場合、キックポイントが元側すぎるとシャフトのしなりを感じないので、中調子か中元調子。その中でも先側が比較的しっかりしているものが好みです。中元調子のキックポイントは基本的に中と手元の間くらいですが、その中でも先が硬めだったり、軟らかめのものがあるということです。

日本のシャフトメーカーは世界でもシェアが高いことで有名ですが、メーカーによる違いはあります。ツアーADで知られるグラファイトデザインは王道派。信頼度が高く男子プロの使用率が高いです。「迷ったらツアーAD」でもいいかもしれません。ただ、メーカーの表記ではほとんどが中調子ですが、私の感覚だと必ずしもそうではありません。元なのに中、先なのに中もある。「ひとまず打ってほしい」というメーカーの想いの裏返しかもしれませんが、これは予備知識としてもっていただいた方がいいと思います。

USTマミヤのLINQ(6S)を使用する小林夢果(ダイキンオーキッドレディース2024にて)

マミヤは遊び心のあるメーカーです。毎回違ったものを出してきて、ネーミングにちょっとジョークを交えたりもしています。製品はしっかりしていますが、個人的な感想として、硬さが同じSでもブランドによって振動数が違う傾向が見られます。しなり方も振動数も違うとブランドごとに全くの別物になるので、選び方に気をつけないと沼にハマる可能性があります。もちろんいい方にハマればホームランになるので魅力もあります。

これはフジクラコンポジットにもあって、ベンタスなどは振動数が硬めに出たりします。ベンタスの場合、逆輸入的なシャフトなので基準がないといえばないし、海外と日本で違うという噂もあったりする。プロも多く使っていてクォリティは高いですが、見えない部分も多いという印象です。ディアマナで知られる三菱ケミカルのシャフトも安定していると思います。ディアマナだと色別に法則があるそうなので、それを勉強するのも楽しいかもしれません。近年人気のテンセイも熟成が進んでいると思います。

同じメーカーでヘッドとシャフトが揃えばそれがベスト

自社でシャフトを巻き自社製ヘッドに装着しているメーカーもあります。ダンロップ、グローブライド、本間ゴルフなどですね。これらのメーカーのシャフトは、ヘッドとのバランスを考えて作られていますから完成度は高いです。本間の契約プロで他社のシャフトを入れている人は私の知る限りいません。選手のリクエストに合わせてシャフトを巻いてくれるので、使いやすい製品が手に入るのだと思います。

スリクソン(ダンロップ)の契約プロは純正シャフトでない人が多い。一人一人に対応しきれないためかもしれませんが、基本的に純正シャフトはアマチュアを対象にした市販ベースの印象があります。ですからアマチュアゴルファーは信頼していい。ゼクシオは軽くて軟らかくて打ちやすい、純正シャフトで大成功したブランドと言えます。オノフもいいですね。もっと普及してもいいような気もしますが、オノフや本間は別メーカーのヘッドには別メーカーのヘッドには着けられないので仕方がないですね。

純正であれ、カスタムであれ、ヘッドとの相性抜きでシャフトは語れません。同じメーカーでヘッドとシャフトが揃えばそれがベストでしょう。昔はカチャカチャがなかったので、シャフトを抜いて他のヘッドに刺したら全然合わないことがよくありましたが、毎年違ったヘッドが出てくる昨今の状況も似ていて、シャフトは対応しきれないかもしれません。ただ一方で、慣性モーメントが10000超えのヘッドだと、トルクを抑えてフェース面を安定させてきたシャフトの仕事をヘッドが賄うとも考えられるわけで、そうなるとトルクはあまり考えなくていいので、純正シャフトで十分イケるようになるかもしれません。

ある程度出つくしたドライバーシャフトの現状を考えると、あらためてクラシックなモデルを打ってみるのも手。意外な出会いがあって面白いかもしれません。2~3年前のモデルなんて何の問題もない。もっと古くても傷んでさえいなければ大丈夫ですから、合ったものが安く手に入る可能性があります。趣向を凝らしたラーメンもいいけど、やっぱり正統派の醤油ラーメンがいい、みたいな感じですね。私の予想では、この先はメガヒット商品が出ない気がするので、なおさらそう思う今日この頃です。




吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。





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