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ゴルファーの「どのくらいで回るの?」という質問。どう答えるのが正解? ヒントは“タイパ”

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第105回

2024/05/07 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフ場

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

ジョークでは乗り切れない「どのくらいで回るの?」という質問

相手がゴルフをすると知ると、急に親近感が増して、もっと相手を知りたくなるのもゴルファーあるあるです。

「いくつぐらいで回っていますか?」
「ベストスコアは?」
「ハンディはいくつですか?」

というような腕前を問う質問をする、もしくは、されることはよくあります。

見栄を張って嘘をついても、バレて損をするのは自分ですので、正直に答えるのが正解で、そういう正直さも、同時に評価されていることを意識すべきです。

「どのくらいでプレーしていますか?」
「調子が良ければ、ハーフ2時間以内で回れます!」

という笑い話があります。スコアを聞かれているのに、プレーの速度で答えてしまう勘違いが面白さのポイントです。

しかし、この話は奥が深いのです。
一緒にプレーする際に、スコアの良し悪しよりも、プレー速度のほうが重要だったりするからです。

自分と相手のペースが合わないことは、ゴルフだけではなく、どんなケースでも苦痛です。マイペースを張り合っても、お互いにマイナスが増えるだけで誰も得をしません。上手に妥協するのが、大人の対応であり、一般社会的常識だと教えられてきました。

ゴルフの場合は、スロープレーは自分たちの組の中だけではなく、後ろから回ってくる全てのゴルファーに影響を及ぼします。それを前提として、マイペースの質が問われますし、気配りが出来ることが求められるのです。

遅いペースの人を待つ時間は、本当にイライラしますし、無駄な時間を過ごしていると絶望します。社会生活の中でも、列を作って待っているときに、先頭がノロノロしているのは、許されない迷惑行為です。ゴルファーでも同様ですが、遅いペースの人ほど、自分が遅いこと、迷惑をかけていること、渋滞の先頭になっていることの自覚がないのです。

冗談ではなく、ゴルフを楽しみたい人は、常に自分のプレーのペースが遅くなっていないか? チェックして、ブラッシュアップし続けるのが正解なのです。

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「どうして、ゴルフのプレーを『回る』って表現するのですか?」
という質問を受けました。

これは簡単な話で『ラウンドする』という動詞を『回る』和訳したのが、一般化したからです。近代ゴルフになった19世紀には、ゴルフのプレーをラウンドと表現していたようです。近代ゴルフが育ったセントアンドリュースを始めとした黎明期のゴルフコースが、前半で用地の端まで行き、後半は元に戻ってくるという一周するワンループだったからラウンドという表現が生まれたのです。

前半のハーフを『アウト』、後半のハーフを『イン』と呼ぶのは、前半で遠くの端まで『go out』していき、後半で『come in』するのが省略された用語です。
米国では、ゴルフが輸入されたときから、アウトの9ホール、インの9ホールがそれぞれ一周するツーループが導入されていた関係で、同じ用語を『フロント9』、『バック9』というのが普通になっています。

日本でも、ハーフごとに一周するタイプのゴルフコースが一般的で、ワンループのゴルフコースは数えられるほどしか存在しませんが、英国流のゴルフが最初に紹介された影響で、前半のハーフはアウトで、後半のハーフはインと呼んでいます。

いずれにしても、スムーズに軽やかにグルグルと回るのがラウンドです。
回し回されることから連想して、大人のメリーゴーランドがゴルフコースだと考えると、何とも微笑ましいですし、ペースを乱さないようにしないと故障してしまうイメージもわかりやすいのです。

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「急がされるとスコアが悪くなる。ゴルフは、1打でも少ない打数を競うものだし、せっかくのゴルフだから、大目に見てもらって、スコアのためにマイペースでプレーします」
スロープレーで嫌われるあるオールドゴルファーの主張です。

スコアで勝敗が決まることは、ゴルフとゲームの根幹で、紛れもない事実です。
しかし、同時に、スコアカードに記載していない腕前が合格基準に達しているという前提だということを忘れてはいけません。誰にも迷惑をかけないプレーのペースでラウンドできるのは、当たり前の参加資格なのです。ひと昔前は、エチケットとしてルールブックの冒頭に明記されていました。

つまり、スロープレーで、どんなに良いスコアでプレーしても、意味がないのです。
そんなスコアは、ゴルフに似た別の遊びのもので、ゴルフではありません。

スコアカードに記載されないプレー速度をクリアしているゴルフが出来るように頑張ろう、と初心者を励まします。
意識して、ほんの少しの努力をすれば、誰でも適度なプレー速度でゴルフが出来るようになります。それは特別ではなく、当たり前なのです。これをクリアすれば、初心者が初級者にレベルアップするのだと僕は考えています。

前の組に離されずについていくペースは最低限のゴルファーの義務です。ハーフ2時間以内でも、前の組についていけないのでは胸を張れません。
スコア自慢は、多くのアンケートで立証されている嫌われるゴルファーの代表ですが、速くプレーできる自慢は堂々とするべきで、リスペクトもされるゴルフの神様の贈り物なのです。

「あなたは、どのくらいでプレーしていますか?」

篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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