スコア85以上の世界でやってきたことは85以下の世界では通用しない

こんな質問をいただきました。「ドライバーで飛ばしたいけど、頑張ったところで飛距離には限界があります。それならドライバーはコントロールに徹し、2打目のフェアウェイウッド(以下FW)やユーティリティ(以下UT)で距離を稼いだ方が楽なんじゃないかと思っています。吉本プロも今のUTはすごくいいと推奨していることですし……。プロはどう思いますか?」。ちなみに、この方は50代でドライバーのヘッドスピードは40~42m/s。スコアは80台も出れば95の時もあるという平均的なアマチュアの方です。

結論から言うと、この考え方は大いにアリです。80台も出るということは常時80台で回ることが当面の目標だと思いますが、そうなると、時には85を切るくらいのラウンドも必要になります。前に言ったかもしれませんが、ゴルフのスコアは85が境目で、それ以上と以下では世界が全く違います。85以上の世界でやってきたことは、必ずしも85以下の世界では通用しません。当然クラブ選びも考えていかなければならないポイントの一つになりますが、まずドライバーから言うと、飛ばすことを目標にしているうちは90は切れません。

ドライバーが進化して飛距離は出るようになりました。しかし、この影響にも良し悪しがあって、とりわけ「振れてしまう」ことはスイングに弊害を招く原因になっています。軽くて軟らかい今のドライバーは、重めで硬い時代に比べると圧倒的に“振れちゃう感”があります。重さを感じないので手で振れてしまう。体を使わなくても打てるので、ステディにスイングするという意味でいいとは言えないのです。

これは結構“あるある”なのですが、試打会やショップの試打ではアンダースペックのクラブを置いてあることが多くて、いきなりでも振れます。ウォームアップなしで「振りやすい」と感じるとアマチュアの方は「これは運命的な出会いかも!」と思ってしまう。これを僕は“アンダースペック症候群”と呼んでいますが、カン違いして使いはじめるとスイングが悪くなり、やがてどの番手も当たらなくなる怖~い症状に見舞われます。

最初はある程度当たりますが、手打ちになるため1ヵ月くらいすると飛距離が落ちはじめます。飛ばなくなると強振しはじめます。アマチュアゴルファーが強振すると、クラブが軽いのも手伝ってトップから腕を使って下ろすので体が全く使えません。すごく振れるドライバーをマン振りしていいショットが出たあとに、2打目でチョロすることがよくある人がいると思いますが、こんな人はクラブの個性がかけ離れすぎている可能性があります。手打ちがほかの番手にも伝染するのがアンダースペック症候群。ですから「振りやすい」には注意が必要。「振りやすい」と感じたら、ほぼ手打ちになっていると思って間違いありません。

話のついでにドライバー選びについて記すと、究極はゴルフ場に持ち込むか、普段練習しているところで試打すること。ショップならアイアンを打ってから打つなど、しっかりウォームアップしてから打ちましょう。今使っているスペックに近いものを打って比較することも大事です。あとは1、2発ではなく何球か打った平均値で評価を下すこと。アンダースペック対策としては、あえてオーバースペックを打って麻痺をなくす。でないと、甘やかされてアンダースペックに傾倒していきます。普段6Sの人が5Rを使ったら絶対打ちやすい。そうなったら麻痺しているということなので、あえて7Xを打って口直しをするわけです。もちろんうまく打てなくて構いません。対極の世界を感じてリセットするのが目的ですから。

フィッティングも、ショップの試打も、たまたま出くわした試打会でも、感覚的には「ちょっと重いかな」くらいのドライバーがいい。これは本当に感覚で構いません。“ちょっと”を含めて「硬い」と感じたらダメ!「ちょっと重くてしなりを感じる」くらいがベストです。少し前に流行った“軽硬”もよろしくありません。ゴルファーを廃人にします。

ということで、常時80台を目指すなら「これを持ったら振り過ぎちゃいそうだな」というドライバーからは卒業した方がいい。ドライバーの目的は2打目が打ちやすいところに打つこと。2打目のナイスショットを生み出すクラブくらいの感覚がほしいです。FWやUTに重きを置くクラブマネジメントを考えているなら、なおさら2打目のスイングを考えておかなければいけません。

イメージとしては、地面からFWを打つモードでティショットを打つ。こうすると2打目に繋がっていきます。クラブ選びにしろ、ショットマネジメントにしろ、次のショットのことを考えて打つのが上級者的な思考。ほかのクラブのスイングを無視して飛べばいいと考えるのは90オーバーの発想です。

5WかUTで2打目を打てればパー5で普通にパーオンできる

さて、この前提でFW選びを考えるときに一番大切なのは、飛ばすことはひとまず置いて、ちゃんとミートできる番手を選ぶことです。そうなると絶対に入れてはいけないのが3W。アマチュアゴルファーにとって3Wだけはいまだに難しい。シャフトが長くて当たりたりづらいし、当たっても球が上がってくれないので結局飛びません。また、球が浮いて、足場がフラットで安定していて、というように、うまく打てる条件が揃わないと打てないため、使えるケースがかなり限定されます。バッグに入ってはいるものの、ほぼ使わないことが多い人が大半のはず。これはもったいない話です。

基本的な考え方としては、例えばパー5の2打目で「ちょっとでもグリーンに近づけたい」という心理が働いたら、それも90オーバーの発想。だからマン振りしたりFWを使ったりすることになるわけです。2打目を打つにあたって、ティショットが10ヤード遠くに飛ばせたら有利になるのかといえば、決してそんなことはありません。特に3打目の残り距離が100ヤード前後のホールでは大して変わらないのです。

それなら2打目地点では確実に打てるクラブを使い、次打が打ちやすいポジションに運ぶ方がずっと重要。アマチュアゴルファーのみなさんが普段ラウンドするゴルフ場のパー5の2打目なら、距離的にはUTで大丈夫です。ティショットがそこそこ打てて、2打目でUTを普通に打てれば400ヤードくらいは稼げますから、長いパー5でない限り3打目の残りは130ヤード以内に収まるでしょう。そこから3打で上がればパー、4打でもボギーですから90切りには十分。バーディが取れる可能性もあるわけですからね。

何が90切りの足を引っ張るかといえば、大体が大叩きの“ビッグイニング”。「飛ばしてやろう」だの「グリーンに近づけてやろう」からのダフり、チョロ、ヒッカケ、スライスが引き金になって、とっ散らかってしまうことが多い。FWを入れるとしても、比較的やさしく打てる5W1本で十分だと僕は思います。

吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。


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