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横峯さくらは歴代優勝者よりも印象に残っている「グレート・ルーザー」

横峯さくらは歴代優勝者よりも印象に残っている「グレート・ルーザー」

サロンパスカップの思い出【2010年大会】　

2024/05/03　ゴルフサプリ編集部

10年前、この大会での横峯さくらの活躍に注目！（写真は2010年ニチレイワールドレディス　写真／中野義昌）

今週開催の女子ツアー「ワールドレディスチャンピオンシップ　サロンパスカップ」。かつてのこの大会での思い出を振り返ってみた

今週は国内女子メジャー「ワールドレディスチャンピオンシップ　サロンパスカップ」が開催されています。この大会はメジャー昇格前に「ニチレイカップ　ワールドレディス」の名称だった2004年から取材していますが、過去に最も印象に残っている選手として、歴代優勝者ではなく2010年大会で2位になった横峯さくらを挙げます。

初日は２オーバーの74で26位とやや出遅れたものの、3日目は全体のベストスコアとなる67をマークして3打差の3位に浮上します。首位は、当時の女子メジャー最年少優勝（2007年クラフトナビスコ選手権）記録を持っていたモーガン・プレッセルでした。

「明日、優勝する」の言葉に込められた意味は

横峯も前年の国内女子ツアー賞金女王。注目の最終日最終組対決を翌日に控えた夜に父の良郎さんに電話すると「明日は、必ず優勝する」と宣言。さらに「そして賞金を全額寄付する」と言い切りました。

V宣言はともかく寄付、とは何でしょう？　これは当時拠点にしていた宮崎県など九州で猛威をふるっていた「口蹄（こうてい）疫」に苦しんでいる畜産業の方たちを勝利で勇気づけるとともに、少しでも経済的に支援したい、との思いでした。
宮崎県によると殺処分で尊い命を奪われた家畜は30万頭近く。横峯も畜産業の知り合いがいただけに他人事ではありませんでした。

横峯さくらと宮里藍の活躍で女子ツアーは「藍とさくらブーム」だった（写真／中野義昌）

口蹄疫被害の人たちのために

この決意を持って臨んだ最終日は上がり3連続バーディーの意地を見せたものの、70と伸ばし切れず。結果はプレッセルと3打差の2位でした。

試合後の横峯は、会見では淡々とこの日のプレーを振り返っていました。寄付については事前に公表していなかったこともあり、メディアからの質問もありません。

名前を売るためにやるわけじゃない、とのポリシーからか、会見でも本人はこのことに触れませんでした。私がこの情報を知ったのは最終日の会見等がすべて終わった後でしたが、振り返ればいつもならもっとサバサバ、あるいはあっけらかんと試合を振り返る横峯が、この日は何か思うところがあるような神妙な表情でした。勝てなかったことがよほど悔しかったのだと思います。

大会から8日後。自ら足を運んで寄付

「サロンパスカップ」を5月９日に終えると、翌週は福岡でのトーナメントに出場。その翌日の17日は宮崎の自宅にいました。ちょうどこの日、川南町（宮崎県）の町役場に良郎さんが寄付に行くと聞くと、当初は同行予定のなかった横峯は「私も行く」と足を運びます。

2位ということで金額は優勝の半分になってしまいましたが、試合の8日後に特に被害が大きかった町を直接訪れて寄付をする迅速な行動は多くの畜産業の人を感動させました。

この時から14年経ち、女子ツアーの中心は横峯や同い年の宮里藍に憧れてゴルフを始めた世代になりましたが、今年の「サロンパスカップ」にも横峯は選手として出場しています。優しい心の持ち主だからこそ「ゴルフの神様」は長くプレーさせてあげているのかもしれません。

（取材・文／森伊知郎）