控えめの打音と当たった瞬間の軟らかさが好印象。操作性もある
「構えた時の顔がきれいですね。フォーティーンのラインナップからするとちょっと大きめのヘッドですが、決してやさしい見た目ではなく、全体の造形やシルエットは正統派。普段我々が“この顔いいな”と思うものをそのまま大きくした感じなので、何の違和感もなくいきなり打てました。前作の打感を知っているので、“パチン!”という打感を想像しましたが全然違いました。もちろん軟鉄鍛造やTB-5の打感とは違いますが、音が控えめで、当たった瞬間の軟らかさがあって、一瞬ボールがフェースに乗るような感じがあるくらいのフィーリングでした」
試打の日は、初夏ながらどんより曇り、小雨もパラついて気圧が低いコンディション。相模湾を望む葉山国際カンツリー倶楽部ということで潮風も感じる中、朝早くから行われた。石井の言うとおり、ウォームアップもほぼなくいきなり打ったが、小気味よい軽やかな打音が響く。これはポケットキャビティにありがちな大きな打音と硬めの打感を克服すべく、フェース下部に振動吸収エラストマーを注入した効果か。やさしいモデルにありがちなトップラインの厚さなどはいっさい気にならずに打てるという。
「薄めに当たっても球がすごく上がりやすい。高い球で上からピンをデッドに狙っていけるアイアンですね。“やさしいアイアン=ロフトが立って飛ぶ”という傾向の昨今ですが、そこはさすがにフォーティーン。“7番アイアンで30度以下にはしない”みたいなルールがあるんだと思いますが、それがうまくハマっていて、ゴルファーがゴルフ場でやさしくて使いやすく、武器になることを考えて作られている印象。実験室で作るんじゃなく、芝生の上で打ちながらトライ&エラーを繰り返して作られたことが想像できます。というのも、よくある飛び系アイアンと違って打球をコントロールできる器用さがあるんです。フック、スライス、高低も打ち分けやすい。マッスルバックほどは曲がらないので球を出し入れする感じですが、例えばワンピンフェードみたいに打ち分けできる操作性があります。軟鉄ほど強くはないけれどライン出しもできますよ」
普段使っているアイアンよりもプラス15ヤードは飛ぶ
「距離は間違いなく飛んでいました。ロフトは違いますが僕の7番と比べたら1番手以上、10~15ヤードは飛びました。また、フェースの下側に当たった時の球の上がりやすさは特筆モノで、ラウンドでは、ちょっと悪いライで薄めに当たったボールが浮いてくれて助かった、みたいなことが起こるんじゃないかと思います。ソールは台形構造で刺さる感じがなく抜けがいい。実際、ダフり気味に入った時もスッと抜けてくれました。打球の最高点が安定していて球筋が揃いやすいのもいい。ウォーミングアップなしに打っても球の高さが揃いました。競技志向で常時70、80台を目指していく人にとって、やさしいとはどういうことかを考えた作り方がされていると思います。カッコいいアイアンを使いたいけれど、それだと飛ばなかったり、止まらなかったり、という問題が出てきやすいものですが、そういった見栄の部分とのバランス感覚も悪くない。あらゆる意味でコースでの使い勝手がいいと思いますね」
「NEW PC-3」は実打点とスイートスポットを一致させたセンター重心設計。鍛造ボディに余剰重量を生み出すとともに、フェース面上の重心位置をセンターに近づけるために高比重タングステンをトゥ側に配置している。また、今回試打した7番のフェースは新素材の超高強度「エリート・D・スチール」。肉厚はフォーティーン史上最薄の1.75ミリ(※#5〜7まで)となり、高初速、高弾道を実現して、グリーンをとらえるのに必要なボールの落下角度をキープしているという。“抜け感”のよさはTB-5やDJシリーズから受け継ぐリッジソールの効果か。リーディングエッジ側を厚みのある“バンパー”形状にして打ち込んでも刺さらない工夫が施されている。
背伸びをしないクラブ選びを考えた時にPC-3は最適なセレクト
「今回試打したのはカーボンシャフトで僕にはちょっと軽かったですが、しなやかで挙動が素直。打った時の圧力を感じる強さも持ち合わせています。強いけれど硬くない。ヘッドスピードが遅い人が打っても支えになってくれる強さがあります。トルクが多いかと思いましたが、全然そんなこともなくソリッドに反応してくれました。ヘッドスピードが30m/s台の人はウェルカムです。このクラブを使う人を想定してシャフトの重量バリエーションが用意されているようですが、90~100グラム台のシャフトで使いたいと思う人も多いはず。シャフト次第でヘッドスピード44~45m/sでも全然イケます。僕も重いシャフトで打ちたい欲求に駆られました」
シャフトは45、55、60グラムのカーボン(いずれもワンフレックス)とスチールシャフト(S/93グラム、R/89グラム)をラインナップ。カーボンは振りやすさを追求した軽量オリジナルで順に30~34 m/s 、33~37 m/s 、36~40 m/s が推奨ヘッドスピード。スチールは日本シャフトとの共同開発の一品で、手元から中間部までしなやかにしなり戻る剛性バランスでタイミングがとりやすいという。
「適性は広くて、上級者からクラブに助けてほしい人まで十分に使えます。今はやさしいブランドのクラブを選べる一方で、“まだ、そこまで行きたくない”と思っている人も多い。とはいえ、高機能クラブにはそれなりのメリットがあります。ミスがミスにならない安心感や楽さもあって、その相乗効果で他のショットが良化する一面もあります。僕もそうですが、ゴルファーはとかく背伸びをしたクラブ選びをしがち。アンダースペックはよくないと言われ、ついハードスペックを選ぶ傾向があります。背伸びしないクラブ選びを考えた時にはPC-3のようなモデルを選べばいい。そんな指標になるアイアンです。別のモデルと組み合わせるセッティングもありだと思います」
ちなみにフェース素材の「エリート・D・スチール」は5~7番、8~PWには高強度ニッケルクロムモリブデン鋼を採用している。後者は反発性能にマイルドな打感を加えたもの。さらに、前者は反発性能と高弾道に特化させてスコアラインを浅く、後者はスピン性能も加味して深めのスコアラインにするなど、細部までしっかり作り込まれている。
石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。




