“いいスイングはクラブが作る”。ゴルファーはクラブに育てられる

今回はストロングロフトのアイアン(いわゆる飛び系のデカヘッドアイアン)について苦言を呈します。以前は7番で30度台だったアイアンのロフトが、最近は20度台が普通。よく言うとクラブが進化したのかもしれませんが、僕から見たら進化というよりドーピング。もはやクラブがチート化しているので、ここで一旦立ち止まってほしいと声を大にして言います。

もちろん、高齢の方や体力に自信がない、身体的にハンデがある方、あるいは娯楽だから目先のスコアがよければいいのに難しくてシラケ気味、という方々はその限りではありませんが、スイングをよくしたい、長くゴルフをしたいなど、向上心をもってゴルフに取り組んでいる方はチートクラブに手を出してほしくありません。

理由は、芯が広いのでちゃんと当たらなかった時にミスかどうか判断しづらいから。当たらなくても打感がよく、手が痺れたりしないですからミスヒットもナイスショットに感じてしまいます。また、構造が低重心になりすぎているため、トップがトップになりません。気づけないとそのままトップし続けます。飛距離も飛び方も安定しませんからコースで使えるショットにはなりません。

それでもチートクラブが蔓延する一番の原因は、ゴルファーが洗脳されているから。例えばパー3のティショットでは「お前8番、俺9番」と、みんな見栄を張りたがる。そこにマーケティングがうまいこと入り込んで、それでは、とばかりに甘い蜜を出してくれている。そこに思わず飛びついてしまうわけです。すぐに結果が出るのも甘い罠。大袈裟でなく、使ったその日に成果が出る人もいます。ところがある程度まで行くと急に伸びなくなって低迷し、復活することなく下降がはじまります。使いはじめて5年後には元に戻っているか退化します。本当にいいショットを学習したり体感できないことが、長い目で見ると大きな差を生むのです。

90切りが目標なら“生涯ポケットキャビティ”でもOK

スイングは、ちょっとチャレンジングなクラブを選んだ方がよくなります。“いいスイングはクラブが作る”という面がゴルフには多分にある。スイングはクラブによって鍛えられ育つんです。仮にマッスルバックを使った場合、すぐには結果が出ず低迷期がありますが、ある時にグーンと上手くなります。人によっては低迷期が年単位になることもありますが、長い目で見ると確実に上手くなれるし、そこで培ったスイングは一生ものです。まあ、これはマッスルバックでスイングを作る場合の話で、心が折れそうな人は、例えばハーフキャビティにしてもいい。要は自分が甘やかされないクラブで取り組んだ方がスキルが上がり、最終的に上手くなれるということです。

現行のアイアンを大きく分けると、マッスルバック、小ぶりのキャビティ、大きめのキャビティ、ポケットキャビティ、デカヘッドの5つ。何が違うかといえば、ヘッドの大きさ、芯の広さ、芯の高さ、芯の深さ、ロフト角で、これらの要素で難易度が変わります。ロフト角について言えば寝ているほど打ちやすい。
ストロングロフトは立っているので難しいはずですが、いろいろな付加価値をつけています。ドーピングとはそのこと。極端な話、当てれば勝手に飛んでいくのでスイングする必要がない。体力が落ちたり、歳をとったら飛ばなくなるのは自明の理。芯に当たる精度やスイングの再現性は、上手くなるほど許容範囲が狭まります。つまり、どこを目指すかで適したアイアンは違いますから、ビギナーを脱したら、自分のゴールに見合ったクラブでスイングを構築していくべきなのです。

具体的に言うと、マッスルバックや小ぶりのキャビティは、ヘッドが小さく、芯が狭く、重心が高く・浅く、ロフトが寝ています。このようなクラブを打てないとプロレベルにはなれません。一般アマチュアの方で70台をゴールにするなら、小ぶりのキャビティかちょっと大きめのキャビティ。ゴールが90切りなら大きめのキャビティかポケキャビ。生涯で100切りを目指すならポケットキャビティといった具合。100切り目標でもデカヘッドには頼ってほしくありません。

目標に見合ったクラブでナイスショットを目指すと、クラブがいろいろ教えてくれます。前述したように、スイングはクラブで決まる部分が多い。それを踏まえればプロを目指す人がデカヘッドを使えないことがわかると思います。ですから、自分のゴールよりちょっとだけ上のクラブを使った方がいいのです。番手によってフローさせるのはありですが、それも程度の問題。少なくとも、スイングがある程度固まり、目標に見合ったクラブで打てるようになってから考えましょう。時期尚早だと将来的に元に戻るか下降します。

吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。


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