フェース上のコントロールポイントは10倍増の25000ポイント
ELYTEシリーズのドライバーはスタンダードのELYTE、ELYTE X、ELYTE MAX FAST、ELYTE ♦︎♦︎♦︎(トリプルダイヤモンド)の4モデルで構成されている。試打レポートの前に、シリーズの特徴と全モデルが共有する最新テクノロジーをざっと説明しておこう。
「スピードと寛容性を同時に追求するのは難しいという概念を大きく打ち破った」というのがメーカーの触れ込み。その要因の1つが新採用のフェース「Ai 10x FACE」(エーアイ テンエックス フェース)だ。前作PARADYM Ai SMOKEシリーズにはAiスマートフェースが搭載されていたが、当時のソフトウェアではAI設計のフェースデザインをスキャニングする能力に限界があり製品に反映しきれない領域があった。そこを改善すべくELYTEの開発には大幅にアップデートされたソフトウェアを使用、フェースデザインの細部まで具現できるようになったという。
その結果、フェース上にある最適な弾道に補正する場所(コントロールポイント)が10倍の25000ポイントに増加(PARADYM Ai SMOKE MAXドライバーと比較)。AIにインプットされたスイングデータが大幅に増えたことと相まって、各ポイントにおける補正精度が格段に高まった。「Ai 10x FACE」の命名の由来はコントロールポイントが10倍になったから、というわけだ。進化したフェースの効果で飛距離は最大8ヤード伸び(PARADYM Ai SMOKE MAXドライバーとの比較結果)、キャリーの着弾範囲は最大19%狭まった(PARADYM Ai SMOKE MAXドライバーの比較テスト結果)ということである(ともにキャロウェイ調べ)。
打球音の良さも演出するクラウン部のサーモフォージドカーボン
ELYTEシリーズの開発にあたっては、チタン素材を扱える3Dプリンターが導入された。従来の90分の1のリードタイムでプロトタイプが製作できる優れモノで、約75回ものヘッド形状の試作とテストを行うことができた。最終的に採用されたのは前作よりもシャローなヘッドシェイプ。空気抵抗が激減してヘッドスピードが上がるが、投影面積は大きめで安心感があるという一見、二律背反する要素を共存させている。
また、ヘッドのクラウン部のカーボン素材には、航空宇宙分野でも使用されるサーモフォージドカーボンを採用。軽量高強度の特性に加えて成型がしやすいため、より高い精度での製造が可能になった。もちろん軽量化により重量配分が最適化され、スピン量や打ち出し角といったボールデータが理想に近づいているのみならず、誰もが心地良いと感じる打球音も生み出している。
では、お待たせしました。ここからは石井の試打インプレッション。ELYTE(スタンダードモデル)、ELYTE X(エックス)、ELYTE MAX FAST(マックスファスト)、ELYTEトリプルダイヤモンドの順に紹介していこう。
ELYTE ドライバー/つかまり感と寛容性が共存。ボールの“飛びざま”がきれい!
『ELYTEシリーズをPARADYM、PARADYM Ai SMOKEと比べた時に、スタンダードモデルであるELYTEの完成度がすごく高いと感じました。僕はROGUE(ローグ)以降、ずっとトリプルダイヤモンドを購入していましたが、ELYTEシリーズではスタンダードを使いたいと思いました。ELYTEはつかまり感と寛容性が適度に共存して格段に良くなっています。特に印象的なのは打ったボールの“飛びざま”がきれいなこと。ボールが捻れないと言うのでしょうか、スーッときれいな弾道を描いてくれます。それでいて初速は安定して速く曲がりづらい。曲がらないから安心して振っていけるんですが、その点でもPARADYM Ai SMOKEより振りやすくなっているので、クラブスピード自体も速いです。曲げたくないからと慣性モーメントを大きくすると、どうしても振りづらくなってヘッドスピードが落ちやすい傾向がありますが、ELYTEにそれはありません。
PARADYM Ai SMOKEでも曲がらない感覚はあって、“つかまりすぎた?”と思った球でも耐えてくれていましたが、さらにそのレベルが高くなっています。前作を使っている人が、どこまでその違いを感じとれるかは定かではありませんが、それ以前のモデルのユーザーなら間違いなくブラッシュアップされたことを実感できるでしょう。キャロウェイっぽい丸型のヘッドで、僕的には4モデルの中で一番構えやすいモデル。極端に5ヤード飛ぶようになったということではなく確実に平均飛距離のアップが望めます。今作のELYTEでやりたいことが、このモデルにギュッと凝縮されている気がしました』(石井)
シリーズでスタンダードに位置づけされるELYTEは、ヘッドの後端3カ所にウェイトポートを設置。約13gのウェイトのポジションを変えることで、ドローからフェードまで左右約20ヤードの弾道調整が可能となっている。また、このウェイトポートは、前作のスタンダード、PARADYM Ai SMOKE MAXドライバーよりずっと軽いため、重量配分の最適化にも貢献、寛容性の向上にも一役買っている。ヘッドはサーモフォージドカーボン製のクラウンと低重心でボールが上がりやすくなるチタンソールの組み合わせ。
ELYTEドライバー
【ヘッド】
フェース素材:構造 鍛造 FS2S チタン / Ai 10x フェース
ボディ素材:8-1-1 チタンボディ+サーモフォージドカーボンクラウン+スクリューウェイト約2g+バックウェイト約13g
クラブ長さ(インチ):45.5
ヘッド体積(㎤):460
ロフト角(度):9、10.5、12
【シャフト】
VENTUS GREEN 5 for Callaway(S, SR, R) 10万7800(税抜価格9万8000)円
TENSEI GREEN 60 for Callaway(S) 10万7800(税抜価格9万8000)円
SPEEDER NX VIOLET 50(S) 13万3100(税抜価格12万1000)円
Diamana BB 53(S) 12万7600(税抜価格11万6000)円
ELYTE X ドライバー/使いやすくてつかまるマイルドなドローバイアスモデル
『ELYTE Xは4モデル中ではドローバイアスですが、そもそもキャロウェイのドローモデルはそこまでつかまりすぎることがありません。どちらかといえば、使いやすくてつかまるモデルという感じ。例えばウェイトポートをドローポジションにしたELYTEとELYTE Xを比べた場合、ELYTE Xの方がちょっとつかまる感じ。ドローバイアスでも球のつかまりはフェース面で対応し、ボールが違うところに行こうとしても戻してくれるようなタイプのモデルだと思います。ドロー一辺倒ではなく、マイルドなドローバイアス。その意味で言うと、スタンダードのELYTEを使っていて、ちょっとつかまらないかも、と感じている人はELYTE Xを選択するのもありだと思います。ただ、メインターゲットは球がつかまりきらず右に飛んだり、打球が上がりづらいゴルファー。前作よりボールがつかまりつつ、球が上がりやすくもなっています。ヘッドはスタンダードのELYTEより、やや前後に長い感じで球の上がりやすさを感じさせるシェイプです』(石井)
4モデルの中で最もやさしさを求めたのだELYTE X。ヒール側の内部をやや肉厚にしたことでドローバイアスとボールのつかまりの良さが向上した。ウェイトポートはヘッド後端のヒール側と中央に2カ所で、それぞれドロー、ニュートラルポジション。約13gのウェイトポジションでボールのつかまり具合を調整できる。カスタムウェイトを装着すると、ヘッドの左右と上下の慣性モーメントの合算が10K(10000g・㎠)になる。
ELYTE X ドライバー
【ヘッド】
フェース素材: 構造 鍛造 FS2S チタン / Ai 10x フェース
ボディ素材: 8-1-1 チタンボディ+サーモフォージドカーボンクラウン+バックウェイト約13g
クラブ長さ(インチ): 45.5
ヘッド体積(㎤): 460
ロフト角(度): 9、10.5、12
【シャフト】
VENTUS GREEN 5 for Callaway(S, SR, R) 10万7800(税抜価格9万8000)
SPEEDER NX VIOLET 50(S) 13万3100(税抜価格12万1000)
Diamana BB 53(S) 12万7600(税抜価格11万6000)
ELYTE ♦︎♦︎♦︎(トリプルダイヤモンド)/他メーカーからも移行もしやすい操作性の高いプロモデル
『ELYTE ♦︎♦︎♦︎(トリプルダイヤモンド)は、4モデルの中では唯一ヘッドがマット仕上げではなくツルツルして光沢があります。また、体積が450ccと小ぶりでディープフェース、プロや上級者が好みそうな洋ナシ型です。これはすべてのモデルに言えることですが、前作より打音が引き締まった感じで静かになりました。打感は吸い付いているようなピタッという感触があります。でも弾く感じもある。ちょっと形容しづらいですが、心地よくて高級感がありますね。
構えた時の顔はきれいで構えやすいです。初代のPARADYMは大きめで角張った印象で、カーボン同士を繋ぎ合わせる限界を感じましたが、それがPARADYM Ai SMOKEでちょっと丸っこくなり、今作ではより構えやすく進化してターゲットに合わせやすい見栄えになりました。どこを向いているかわからないから使わないという人が一定数いたと思うので、これなら他メーカーからの移行もしやすいと思います。
打った感じはやはりプロモデルで、機動力があって操作性が高いと思います。ただ、前述したように前作からガラッと変わったところはなく安定感をキープしています。セレクトショップ限定のラインナップなので、おそらく従来のトリプルダイヤモンドシリーズと一緒で、つかまる、さらにつかまる、さらに小ぶり、といったバージョンの展開があるのではないでしょうか。そもそもツアープロユースとはそういうものですからね。ただ、基本設計は優れていないことには後発は出せません。その意味では、他の3モデルと同様に、飛距離、コントロール性能、寛容性ともにブラッシュアップされています』
プロや上級者向けのELYTE ♦︎♦︎♦︎は、他のモデルとは異なりクラウンにサーモフォージドカーボン、ソールにフォージド・カーボンを使用した360°カーボンシャーシ。ターゲット層のスキルやヘッドスピードに合わせて理想的な弾道と飛距離性能を追求した結果、重量配分の自由度が高いこの設計に落ち着いたということ。従来製品と同様、ソールの前後に2カ所搭載されたスクリューウェイトの初期設定はフロントが4グラム、バックが9グラム。入れ替えにより弾道の高さやスピン量の調整が可能だ。
ELYTE ♦︎♦︎♦︎ ドライバー
【ヘッド】
フェース素材:構造 鍛造 FS2S チタン / Ai 10x フェース / フェースカップ
ボディ素材:8-1-1 チタンボディ+サーモフォージドカーボンクラウン & フォージド・カーボンコンポジットソール+
スクリューウェイト約4g+バック約9g
クラブ長さ(インチ):45.5
ヘッド体積(㎤):450
ロフト角(度):8、9、10.5
TENSEI GREEN 60 for Callaway(S, SR) 10万7800(税抜価格9万8000)円
SPEEDER NX VIOLET 60(S) 13万3100(税抜価格12万1000)円
Diamana BB 63(S) 12万7600(税抜価格11万6000)円
ELYTE MAX FAST ドライバー/クラブスピードが速くパワーがある人でも使える軽量ヘッド
『ELYTE MAX FASTについては“カチャカチャ(ロフト・ライ調整機構)”になったのが大きな変化ですね。もちろん軽量でシニア層や女性ゴルファーも使用できますが、ELYTE MAX FASTのヘッドはクラブスピードが速くてパワーがある男性で、軽いヘッドが欲しい人でも使えそうです。シニア向けのヘッドを使う男子プロがいましたが、少しつかまりも入り、シャフトも替えられるこのヘッドなら、それと同じような使い方ができるかもしれません。
聞いたところによれば、新しいAi 10x FACEの設計段階で、日本人を中心としたアジア人のスイングデータをAIにインプットしているということ。日本人のスイングや打点に合わせた弾道補正をしてくれるフェースなのでそう感じたのかもしれません。前作のPARADYM Ai SMOKE MAX FASTは、キャロウェイの中では1モデルだけ別路線といった雰囲気を醸していましたが、今作はその延長線上にはありません。自分はELYTE やELYTE Xだと思っている方でも、ELYTE MAX FASTの方が結果がいい、みたいなことも十分にありそうです。元来、軽くするためにカチャカチャをなくしたはずなのに、今作はそれがあっても軽量にできた。これはやろうとしていることがワンランクアップしたということ。間違いなく進化しています』
ELYTE Xと同様ヘッドはやや前後長をもたせた、ボールの上がりやすさを感じさせる形状。ソールの大部分がチタンで構成されているが、トウ側の一部にカーボンを使って軽量化している。石井が言うようにMAX FASTモデルのドライバーとしては初めてアジャスタブルホーゼルを搭載。前作以上の飛距離と方向性に、さらなる寛容性も加わってターゲット層が一気に広がった期待のモデルだ。
ELYTE MAX FASTドライバー
【ヘッド】
フェース素材 / 構造 鍛造 FS2S チタン / Ai 10x フェース
ボディ素材 8-1-1 チタンボディ+サーモフォージドカーボンクラウン & フォージド・カーボンコンポジットソール+バックウェイト約13g
クラブ長さ(インチ) [A] 45.75
ヘッド体積(㎤) 460
ロフト角(°) 9.5 10.5 12.0
ライ角(°) 59.5
【シャフト】
LIN-Q GREEN 40 for Callaway(S, SR, R) 10万7800(税抜価格9万8000)円
ELYTEシリーズドライバー試打後記
『慣性モーメントを上げずにフェース面で打球が散るのを防ぐのがキャロウェイの手法で、他メーカーと一線を画しているところです。実際に打つと、前作よりも明らかに曲がり幅は小さくなっています。AIにどんどんデータが蓄積され日々確度が上がっているのに加え、AIが出した答えを形にする技術も上がっていることを如実に感じます。キープコンセプトで年々熟成されている印象ですね。ELYTEシリーズ4モデルがあれば全てのゴルファーに収まるというのが現時点での答え。その各々に対して打点のブレやゴルファーの打点データを集めて適正を変えているということなので悪くなるはずがありません。初速はルールで決まっていますから、それをどうやって各ゴルファーにフィードバックするかがメーカーの2025年の至上命題。そのため各メーカーともフィッティングを奨励しています。キャロウェイの例で言えば、この先個々のゴルファーに特化したフェースが出てくるかもしれなないと思いました』(石井良介)
試打解説:石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。




