ゴルフギアの革命を起こすのか!? 3Dプリンタが生んだクラブの実力と将来性やいかに
鹿又芳典の“推しクラブ” こぼれ話 第68回

いくつかのメーカーから「3Dプリンタ」で作成したクラブが発売されている。コンピュータに入力したデータをもとに、紙をプリントするように立体物を作り出す3Dプリンタ。この最先端テクノロジーがゴルフ界に旋風を巻き起こすのか? カリスマフィッターの鹿又さんに聞かずにはいられない!
3Dプリンタで“設計通り”のヘッドができる

3Dプリンタを使ったゴルフクラブの量産型として最初に注目を集めたのは、限定で発売されたコブラのパターだと思います。その次に、ドライバーとして世の中で初めて量産品として発売されたクラブが、ロマロの「バリスタ」シリーズです(「The FIRST」「BR08」)。
3Dプリンタでできるヘッドの圧倒的な長所は、設計通りに製作できること。もう一つは、ロット数が少なくてすむこと。型もいらないし、プログラミングをすれば作れるのですから。それから「世界初」とか、目新しい設計のテクノロジーとして訴求できることもあるでしょう。
一方で、あえて短所を挙げると、設計に対するノウハウがまだ少ないこと。3Dプリンタを使って設計をしたときに、どういうことが起こるのか? という知見が少ないです。
高価格帯に見合うメリットを感じられるかどうか
実際に、ボクのお店(ゴルフショップ マジック)でも、ロマロのクラブを取り扱いました。その結果を踏まえて言うと、前述したように設計通りにフェースの肉厚も重心も作れるので、すべての数値が数%良くなりました。「球が曲がりにくくて、ちょっと飛んで」というイメージです。それが今、分かっていることですね。

DOCUS RELOADED INFINITY∞ 3D Driver/29万7000円
そうなったときに、とても言いにくいことですが、3Dプリンタで作ったドライバーって20万円を超えるんです。製品として見たときに、それだけの費用対効果が望めるかどうかっていうのは、判断が難しいところでしょう。30年くらい前にチタンヘッドのドライバーが量産品として出たときに、最初は20万円以上しました。ボクの中ではそのときと同じ感覚です。
3Dプリンタでできたドライバーが出て約1年強がたちますが、これからそのヘッドが設計上の強度を保てるのか、経年劣化を起こさずに使えるのか。当然ですが機械でテストはしていますが、実使用でどういうことが起こるのか? というのはこれから分かってくるところですから。
3Dプリンタで作ったパーツで構成されるヘッドが出るかも!?
3Dプリンタというギミック的な要素に対して魅力を感じる人、設計自由度が高いことでデザイン性が良くなったりするので、そういうところに魅力を感じる人以外の“結果”に対して「3Dプリンタで作ったから何かが良くなるだろう」ということを求める人には推奨しません。これはボク自身が取り扱ってみて初めて分かったことです。
ただし、メーカーがクラブを開発する段階で、実物(ヘッド)を作ってテストをするときにはスゴく魅力的なやり方だと思います。3Dプリンタに任せればカンタンに作れちゃうのですから。

今後、3Dプリンタがゴルフクラブだけではなく他の分野でもどんどん使われて、コストが下がり、いろいろなモノを作って実験・研究を重ねていった中で、今の一般的なヘッドと同じコストになっていったときには魅力があると思います。視点を変えてみれば、3Dプリンタでできたパーツでヘッドを構成するとか、多様な使われ方をしていくのではないでしょうか。
現時点では、今の一般的な製造技術でできたヘッドと同程度の実力なので、今後に期待できる作り方の一つと言えますね。

鹿又芳典
かのまた・よしのり 1968年生まれ。年間試打数2000本超え。全てのクラブに精通するクラフトマン。豊かな知識と評価の的確さで引っ張りだこ。ゴルフショップマジック代表。

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