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低重心がやさしいとは限らない。プロが「やさしい」と選んだモデルは?

2025/08/17 ゴルフサプリ編集部

8月5日、ブリヂストンのNEWドライバー4タイプのお披露目とメディア試打ラウンドが行われた。お披露目にあたり、ブリヂストン契約の清水大成プロも出席。4タイプの中から清水プロが選んだモデルは、スピンがかかりやすいモデルだった。

ブリヂストンスポーツが発表したNEWドライバーは「BXシリーズ」。「B-limited B1★ TOUR」「BX1 LS」「BX1 ST」「BX2 HT」の4つのモデルで構成されている。

「B-limited B1★ TOUR」はプロの要望を取り入れて開発した操作性を持たせたモデル。「BX1 LS」はハードヒッター向けのロースピンモデル。「BX1 ST」はアスリート向けの直進性の高いモデル。「BX2 HT」は球のつかまりと上がりやすさを持たせたモデル。4モデルすべて、前作より初速性能が向上されている。

NEWドライバーのデモンストレーションを行った清水大成プロは、2024年度JGTO平均パット数1位として知られるが、ドライビングディスタンスも7位と、飛ばし屋のひとりでもある。

そんな飛距離自慢のプロだけに、当然「BX1 LS」を次のエースドライバーに選ぶのだろうと思っていたが、「B-limited B1★ TOUR」が最有力候補だという。「BX2 HT」はアマチュア向けの性格なので、もともと候補には入らないけれけど、残りの3モデルの中から「B Limited B1★」をチョイスした理由は、スピンがかかりやすいからだという。

「2025日本プロ」でツアー初優勝を果たした、清水大成プロが「BXシリーズ」で豪快なショットを披露。

デモンストレーションで「BX1 LS」と「B-limited B1★ TOUR」のボール初速は変わらず、TOTAL飛距離が飛んでいたのは「BX1 LS」で最長が310ヤード。これに対して「B-limited B1★ TOUR」は303ヤードだった。両モデルの違いはスピン量。「BX1 LS」は2000~2200回転、「B-limited B1★ TOUR」は2500~2600回転で、TOTAL飛距離は「BX1 LS」に譲るもののキャリーは「B-limited B1★ TOUR」の方が飛んでいた。

清水プロいわく「ドライバーショットでスピン量は2000回転前半の方が飛ぶことは分かっているけれど、2500回転くらいかかっていないと、弾道のコントロールが難しくなる」ボール初速が変わらないのならスピンがかかる『B-limited B1★ TOUR』の方がやさしいし安心して使える」のだそうだ。

「BX1 LS」は455㎤、なのに対して、ヘッドの操作性を高めるために「B-limited B1★ TOUR」は445㎤とサイズの違いもあるが、スピン量の違いは重心の高さに起因する。一般的に「重心高さ」と言われているが、正確に言うと「スイートスポット高さ」が違う。


ヘッド内部の重心からフェースに引いた垂線とフェースとの交点がスイートスポット。本来はヘッド内部の重心高さを「重心高さ」とすべきところ、「スイートスポット高さ」と混用されている。バックスピンに影響するのは「スイートスポット高さ」

「LS」と呼ばれるモデルはスイートスポットを低くすることでバックスピンの増加を防ぐと同時に、打点とスイートスポットが近くなるのでボール初速が上がりやすいというメリットがある。一方でスイートスポットが高いとバックスピンがかかりやすくなり、スイートスポットと打点がズレるため、ボール初速が低くなりやすい。というのが一般論だ。

ヘッド内の重心の高さは同じでも、重心の位置が深いとスイートスポットは高くなり、重心の位置が浅いとスイートスポットの位置は低くなる。一方でヘッド重量と基本的な構造が同じなら重心は深いほどヘッドの慣性モーメントは大きくなる。

ところが、最新のクラブは、ヘッドの慣性モーメントの向上とフェースの偏肉構造と言ったテクノロジーで、打点とスイートスポットが多少ズレでも高いボール初速が得られるようになっている。元々「浅重心」が流行ったのは、高反発規制以降に打点とスイートスポットを近づけることで、ボール初速のアップを狙ったことがスタートラインだったのだろうと思っている。同時に低スピン化も達成できたので流行した。


ところがカーボンコンポジット技術の進化で、さらに低重心化した結果。低スピンになり過ぎる傾向が出て来たということだと思う。ヘッドスピードが速ければ低スピンヘッド、遅い人はスピンがかかりやすいヘッドが合うという基本はあるものの、ヘッドスピードと関係なく、スイングタイプの違いでスピンが多い人と少ない人に分かれる。人それぞれに適正スピンを得るためには、最適な重心位置が変わるので、同じシリーズでもドライバーヘッドのモデル数が年々増えているというわけだ。(少し前までは2~3モデルだったが、今では4モデルと言うシリーズも少なくない)

打点よりスイートスポットが高ければ、ギア効果でスピンは増える。打点とスイートスポットが一致するとギア効果によるスピンの増加は起きないが、ロフトが不足すると適正な打ち出し角とスピン量を得にくくなる。

清水大成プロのヘッドスピードは51~52m/s、ボール初速は72~73m/s。このボール初速で飛距離だけを追求するならば、打ち出し角12度~13度で、バックスピンは1800~2000回転なのだが、少しミスヒットしたり、フェースが濡れていたりして、バックスピンが1600回転を下回ると、打球がドロップして飛ばなくなるだけではなく、サイドスピンも同時に減るので、球筋もコントロールできなくなってしまう。


清水プロは、これを防ぐための安全マージンとして500~600回転をプラスして、2500~2600回転が得られるドライバーをチョイスしているということだ。この考え方をヘッドスピード40m/s前後のゴルファーが取り入れるならば、ボール初速は56m/s前後、打ち出し角16度前後、バックスピンは2600~2700回転前後になるはずだ。

ドライバーはバックスピンへの影響から、低重心(スイートスポットが低い)が、やさしさにつながらないことがあるということを解説しましたが、アイアンは別の要因で低重心(スイートスポットが低い)が、やさしさにつながらないことがあります。アイアンの話は続編にて!

文/大塚賢二(ゴルフギアライター)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。有名シャフトメーカーのシャフトフィッターとしての経験も持つ。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。

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