最終日はルーキーV狙う寺岡沙弥香との激闘

昨年のプロテストに1位で合格。ルーキーでの初優勝を狙う寺岡沙弥香と10アンダーの首位タイでスタートした最終日は、柏原が1打リードでバックナインに入ります。

ところが柏原の10番パー4のティショットは左に打ち出してフェードせず、林に突っ込んでしまいました。

ドライバーが左に行ったのはこの日初めて。さらに先に2打目を打った寺岡が3メートルのバーディチャンスに付けてピンチに追い打ちをかけます。

ピンまでは残り120ヤードほど。グリーン方向には打てませんが、幸いライは良く、枝などもスイングの支障にはならないのでフックをかけてグリーン手前まで運ぶ策をとりました。

この時、アイアンを手にアドレスした柏原は、ん?という表情で番手を確認すると、「間違えた」と言って8番から7番に持ち替えます。

結果は完璧なフックがかかったショットで奥のラフまで行きましたが、なんとかパーセーブ。
キャディも「ダブルボギーにしなければいい」と考えた状況で、ここをパーで切り抜けたのは大きかったといえます。

大ピンチで1センチの違いに気づく

緊張した場面でこの差、違和感に気づいた(撮影/森伊知郎)

この場面、柏原はクラブをキャディから受け取ったのではなく、自分でバッグから抜きました。

そのため、7番のつもりでうっかり8番を手にしていました。

番手ひとつの長さの違いは半インチ(約1.3センチ)です。トラブルショットなのでクラブは短く持っています。

しかも優勝争いでティショットが意図せぬ結果になって招いたピンチで、寺岡がすでにバーディチャンスとかなり追い詰められていましたから、クラブの番手選択ミスに気づかなくてもおかしくありません。

それでもアドレスして瞬時に気づく感覚の鋭さでした。

怪我の功名?で使い始めた「ELYTE◆◆◆」ドライバー

このホールで唯一左に行った「ELYTE◆◆◆」ドライバーですが、使い始めて5試合で好結果を出しています。

柏原は7月の「資生堂・JAL」までは初代「PARADYM」ドライバーを3年ほど使い続けていました。

新しいモデルを試してデータが良くても、打った感触と結果が同じじゃないとダメなのだそうで「“スタメン”(=試合で使うクラブ)になるのに時間がかかるんです」と言います。

ところが初代「PARADYM」は「ミネベアミツミ」のプロアマ戦前にヘッドが割れてしまいます。

そのことが理由で「ELYTE◆◆◆」に替えたのですが、このクラブ(ヘッド)は約1か月の間、キャロウェイのツアーレップによって大切にキープされていました。

柏原は「ミネベアミツミ」から4試合前の「宮里藍サントリーレディス」で「ELYTE◆◆◆」をテストしており、データ、感触ともに良かったものの、「スタメン」にはなれませんでした。

ドライバーのヘッドを柏原のためにキープしていた

それでもキャロウェイのツアーレップは「いつか使うかもしれない」と、柏原が打ったヘッドの「個体」をキープしていました。

選手のためにバックアップを用意しておくのはメーカーとして普通のことですが、これ、という個体を特定の選手用にキープしておいたのです。

柏原としても単に新しいモデルを持って来られるよりも、「このヘッドでテストして結果が良かった」と言われれば、不安なくスムーズに使うことができます。

スタッツを見ても「資生堂・JAL」終了時では236.94ヤードで50位だったドライビングディスタンスが今大会終了時には240.66ヤードで40位にアップ。

今大会のスタッツだけ見ると、3日間の平均飛距離262.833ヤードは穴井詩、神谷そらの飛ばし屋二人に次ぐ3位の立派なものです。

柏原の性格からして、初代「PARADYM」のヘッドが割れなければ、このヘッドは使われることはなかったかもしれません。

それでも「これ」という個体をキープしていたのは、メーカーの献身的サポートのおかげでした。

みんなのために勝ちたい

上田桃子が昨シーズン限りで一線から退いたことで、ツアーに出ているキャロウェイの契約選手としては最年長になりました。

その自覚からか、最近は支えてくれるメーカーの関係者やスタッフ。家族など「みんなのために勝ちたい」と口にすることが増えたそうです。

そんな柏原の次なる目標は、所属契約先が主催者の「富士通レディース」で優勝することです。

その理由は「大東建託で(所属選手の渡邉)彩香さんが勝ったのを見て、すごくカッコよかったので」と言います。

柏原は6年前も「ミヤギテレビ杯」と「マスターズGCレディース」で立て続けに優勝しました。

周囲への感謝という強いモチベーションのある今回も、やってくれるかもしれませんね。

(取材・文/森伊知郎)