櫻井心那優勝「史上最○」の可能性が続出した「CAT Ladies」最終日

日本女子ツアー「CAT Ladies」最終日（24日、神奈川・大箱根CC）は最終組が18番に来た時点で８アンダーに6人が並ぶ大混戦だった。そのままプレーオフとなれば史上最多人数となるところだったが、櫻井心那がバーディを奪って優勝を決めた。他にも「史上最○」の可能性が続出した大会を制したのは櫻井の“ポジティブ勘違い”と、大先輩の“圧”のおかげだった。

5連続バーディーの入谷響が「大会史上最多アンダー」ペースで独走態勢かと思いきや

最終日は櫻井心那が単独首位。1打差に鈴木愛が続き、2打差に3人が並んでスタートしました。

その中ですごいプレーをしたのが最終組のひとつ前で回る、2打差の3位からスタートした入谷響でした。4番でボギーが先行したものの5番ですぐに取り返すと、8番からは圧巻の5ホール連続バーディーを奪います。

この時点で通算12アンダー。今大会パー72として開催されたケースでの最多アンダー記録は、昨年の川﨑春花など4人の13アンダー。
まだ15、18番とパー5が2ホール残っており、飛ばし屋の入谷ならイーグルも狙えることから、パー73の設定だった2013年大会でアン・ソンジュが記録した15アンダーを更新する可能性も出てきました。

入谷のスコアを見た櫻井の、ポジティブな勘違い

12番パー3のティーイングエリア横にはスコア表示があり櫻井も「－12　入谷響」となっているのを確認します。

ところが櫻井の反応は「何それ？　どゆこと？？　でも数字も曲がっていたし、多分ボランティアさんが間違えたんだろう」というものでした。

このスコア表示は電光掲示板ではなく、ボランティアの方が数字と選手名のマグネットをひとつひとつホワイトボードに貼る形のもの。

さらに5連続バーディの8～12番にかけて、櫻井の最終組と入谷の組は1ホールほど空いてプレーしていたため、ひとつ前の組でもバーディシーンを目撃することがなく、「12アンダー」を信じることができなかったようです。

さらに入谷は13番から4ホールで5つスコアを落として急降下。
「次にスコアをみたら10アンダーだったので、やっぱり（12番では）“幻”を見ていたんだな」と思ったのだとか。

12アンダーが間違いではなく、3打のビハインドだと把握したらその後のプレーに影響があったかもしれません。
この勘違いのおかげで「焦りとかはなかったです」（櫻井）。

一転して「史上最多人数プレーオフ」の可能性が

入谷が崩れて、一転大混戦の展開に。
9アンダーだった櫻井と木戸愛が16番をともにボギーとすると、８アンダーに6人が並びました。
そのままプレーオフとなれば、1988年のツアー制施行後では1990年「徳島月の宮レディス」と2000年「日本女子プロ選手権」の5人を抜く史上最多人数となっていたところでした（ツアー制施行前は1984年「美津濃トーナメント」の6人が最多）。

それを回避して優勝する原動力となったのが、今大会で櫻井のキャディーバッグを務めたツアー通算7勝のベテラン吉田弓美子の言葉でした。
ボギーを叩いた後に「17番あたりで、『早く帰りたいからわかってるよね。かっこ圧』みたいな感じで言われまして」（櫻井）との表現で、バーディーを取ることで自分の力で勝利をつかみ取るようにはっぱをかけます。

自力で勝利をつかみ取らせた大先輩の「圧」

吉田は大会を通じて「心那ならできると、と言って背中を押してくれました」と、櫻井も感謝の言葉を述べます。わかってるよね、の「圧」をかけたのも笑いながら。

一方で18番パー5の2打目はグリーン左のショートサイドのバンカーに入れてしまい、ピンチと思われた時も「（バンカーショットを打つ時は）イメージができてたみたいなので、何も言わなかった」結果はもう少しでイーグルの50センチにつけるスーパーショット。
言葉をかける時とかけない時を使い分ける絶妙な手綱さばきで、勝利をつかみ取らせます。

日本女子ツアーで最長（最多ホール数）のプレーオフは2002年「ヴァーナルレディース」と2006年「スタンレーレディス」の7ホールでした。6人プレーオフなら、「史上最長」になっていたかもしれません。
6人でのプレーオフとなれば、これに並んだり更新していたかもしれなかったですが、櫻井は最後のバーディで回避しました。

2023年に初勝利から一気に4勝したのから一転して、昨年は34試合に出て12試合で予選落ち。球筋をフェードからドローに変え、ギア選びも混乱していた時期を乗り越えての優勝は、今後のさらなる成長へ向けて価値あるものになるはずです。

（取材・文/森伊知郎）

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