パターは「重い」と「軽い」どっちがいいの? シャフトのしなりを考えると答えが出る!
【ダグ三瓶】
グリーンの芝がベントが主流になってから、ヘッドが重めのマレットがパターの定番となり、いまではヘッドが大きく、慣性モーメントも高い、「重い、大きなヘッドのパター」が人気。みなさんはパターの重さについてちゃんと考えていますか?
パターに必要な重さとは?
よく、パターは重い方が良い、重い方が安定すると言われています。
この考え方自体に全く問題がないと考えていますが、では、どこまで重くしたら良いのか?を考えてみたいと思っています。
ここ1年ほど、フィッティング中にShaftWaveを活用して皆さんのパッティング時のシャフトの挙動を見ていくと、いろいろなことがわかってきました。
その前に、パターってシャフトがしなっているの? と思われる方もいると思いますが、パターもシャフト(棒)を振っているわけですし、短いとはいえその棒の先端に、350gくらいの重量物が付いているわけですから、シャフトはストローク中にしなっています。
もちろん、ドライバーやアイアンに比べたらヘッドスピードは遅いですし、比較すれば、かなり微小なしなりとなりますが、それなりにしなりはありますし、皆さんもしなりを感じて打っていらっしゃいます。
また、そのシャフトのしなる方向がわかりやすいのがパッティングストロークです。
パターは、基本的には振り子のように振る方が多いですから、その振り子のようにシャフトも動いていて、その方向に良くしなるということになります。
当方の「ShaftWave」の表現を使うと、シャフトが横にしなっている、と言えます。
いろんな方の、シャフトのしなりの波形を見ていくと、シャフトのしなる方向は、ほぼヘッドの動く方向と連動していることがよくわかります。
上述しましたように、パターのストロークというのは振り子のように動くわけで、ヘッドはそこであまり回転させたり、極端にアウトサイドやインサイドに動かしたりすることも少ないでしょう。
もちろん、大きいストロークになれば、他のクラブのショットの時の様にアークを描くように、ヘッドがインto インに動くようになりますが、小さいストローク、特に2m以内のパッティングでは、ヘッドはほぼ飛球線に平行、いわゆるスクエア方向に動かそうとする人がほとんどだと思います。
それに伴い、シャフトも同様の方向にしなろうとします。
パターの形状にもよりますが、多少のトゥダウンもあります。
そのため、パターのヘッドの動きがシンプルに振り子のようになればなるほど、シャフトのしなりも一直線になることがわかります。
このように、一直線にシャフトがしなるというのは、ヘッドの動きもシンプルに振り子のように動いているということになります。
一方で、迷いのある方、ストロークが不安定な方は、下のような波形になります。
波を打つような波形になっていることがわかると思います。
では、なぜ、このようなことが起ってしまうか? と考えて行くと、冒頭で申し上げた、今回のテーマである「パターの重さ」が関係してくるのです。
パターは重い方が良い、は間違ってはいないのですが、重すぎることによって、ストロークが乱れることがあるということをご説明させてください。
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なぜ、重すぎるとストロークが乱れるのか?
まずはストロークの始動にどのくらいの力が必要か?ということをご理解いただけなければなりません。パターヘッドというのは、クラブの中で最も重い重量です。
短いとはいえ、その重たいものを、スーッとでもなく、強くでもなくゆっくり動かさなければなりません。
例えば、静止している重量のある物体を動かしだすには、重さ以上の力が必要になることをご理解いただけますでしょうか?
10㎏のものを動かしはじめるためには、10㎏の力を加えただけでは動き出しません。
それを慣性の法則といって、静止している物体は重力の影響もあり、静止した状態を保とうとするので、動かしだしは、何パーセントか強い力が必要ということがあります。
そして、今度は動かしだしたものは、動いていようとする力が働きますから、勢いよく動かせば、そのスピードを抑えることにまた力が必要です。
これをパターに置き換えてみると、重たいパターを始動させるためには、かなり力が要るということになり、その力を入れた状態で、パターは飛ばすクラブではないので、出来るだけゆっくりとバックスイング上げたいとなると、その制御にも力が必要となります。
例えば、パターをいつもより力を入れて握ってみて、なるべくゆっくりとストロークしてみてください。
すごく、ごつごつとした、ストロークが波を打つような動きをすることがわかると思います。
つまりは、パッティング中にかなり力が入っているから、ストロークが乱れやすくなる、ということなんです。
しかも、その力の入った状態で、ダウンスイングに入ったらどうなるか?
いわゆる、パンチの入ったパッティングになりやすいですし、それを嫌がるとゆるんでしまうということになります。
これは危ないですよね。イップスを呼び込んでいるような動きになります。
では、そうならないように、そーっとグリップを握って、そーっと動かしだせばいいんでしょ? となるのですが、重すぎるものを使っていると、それだと本当にパターが動きません。
どのくらいの重さが正解なのか?
繰り返しになりますが「パターは重たい方が良い」のは間違いないのですが、ストロークの始動で余計な力が入るほど重くしてはいけない、ということになります。
重い方が良い、という言葉につられてしまい、パターに鉛などを貼って重くしている人をよく見かけますが、それは逆に始動に力が必要な状態にわざわざしているとことになり、ストロークを乱れさせる要因になっている可能性があります。
「重い」「軽い」は、人によるところが大きく、何gだから良いとか悪いとかは言い切れないのですが、どこまで重くした方が良いのか? を考える際に、キーワードとして、お使いのセット内で一番重いクラブにしましょう、という感じでご一考いただければ嬉しいです。
つまりは、例えば、パターの次に重いクラブは、たいていの方はサンドウェッジでしょうから、そのサンドウェッジより重ければ「必要十分に重い」、と考えていただければ嬉しいです。
軽くすることによる違和感がないとは申し上げませんが、慣れていくとその軽い方が、シッカリと打てるようになりますし、また、始動に力が要らないことから繊細なタッチも可能になることが多いです。
試すなら、これ以上軽くできない!というくらい軽くしてから、重くしていって、ご自身の適正重量を知るのが良いでしょう。
ご参考になりますと嬉しいです。
ダグ・三瓶(だぐ・みかめ) ブリヂストンスポーツ、アクシネット ジャパン インクと日米2つの大手メーカーに所属。その中でクラブ開発、ツアー担当、マーケティング、フィッティングなどを担当。ツアーレップ時代にはあのボブ・ボーケイ氏に日本で唯一の弟子と認められていた。現在、フリーとなり迷い多きアマチュアゴルファーにアドバイスを送ってくれることとなった。
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