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ルールで規制されるとゴルフクラブは飛ぶようになる!? メーカー開発陣の知恵と努力はスゴイんです。

2025/11/02 ゴルフサプリ編集部

2028年にボールの飛距離規制に関するルールが改正されるということで、飛ばなくなるの? と思っているゴルファーも少なくないはず。でも、大丈夫、メーカーの開発陣の人たちがきっと解決してくれます。

2028年のルール改正で、ボールの最大飛距離規制が改訂されて、ボールが飛ばなくなると言われていますが、アマチュアゴルファーにはあまり影響はないだろうと思っています。なぜ、あまり変わらないと思うのかの説明の前に、ルール改訂の内容を確認しましょう。

今のルールのテスト条件はヘッドスピード53.64m/sで打った時の飛距離の上限が317ヤード(許容誤差3ヤード)と定められているのに対して、2028年の改定では、ヘッドスピード55.88m/sで打った時の上限を317ヤードにするというもの。だから、従来の基準値53.64m/sで打ったら飛ばなくなる?

新しいルールで317ヤード飛ばすためには、今までよりも速いヘッドスピードが必要となるので、図の2つの直線の差の分だけ飛ばなくなりそうに思えます。両者のヘッドスピードの差は2.24m/sなので、ミート率が1.48だったとすればボール初速の差は3.315なので、この差が単純に飛距離の差になった場合は、16ヤードくらい飛ばなくなるだろうと考えられます。

ところが、ボールはゴム系の素材で作られているので「弾性変形」ではなく「粘弾性変形」をします。「弾性変形」は加重量と変形量が比例します。加重が1なら変形も1、加重が倍になれば変形量も倍になります。

一方で「粘弾性変形」の場合は加重量によって変形量が変化します。ゴム紐を引っ張った時に、最初は大きく伸びますが、ある程度伸びるとその後の伸びる量は少なくなります。ボールを打った時のヘッドスピードと距離の関係も同様です。これを図にすると直線ではなく、曲線になります。ヘッドスピードが速くなると、ヘッドスピードの増加に対して、飛距離の伸びは鈍くなるというわけです。

ヘッドスピードと飛距離の関係は直線ではなく曲線を描く。ヘッドスピードが53.64m/sを超えた時に飛距離の増加を抑えるようにボールの特性を変化させれば、ルールが変わっても飛距離の低下は少なく出来る。

ゴルフボールの開発者はこれを利用して、ルール変更後の飛距離の低下を抑えようと知恵を絞っているはずです。ルール改正と同時に達成できるかどうかは、分かりませんが、いずれ「ルールが変わったけれど、あまり影響はなかったよね」ということになると見ています。

ボールではありませんが、2010年にツアー競技からで導入された「角溝規制」で示されています。ルール改正直後は、ウェッジでスピンがかかりにくくなったようですが、今では溝の形状や本数、ヘッドの重心設計、フェース面のミーリングなどの工夫で、角溝と遜色ないスピン性能が得られるようになっています。

ルールで規制されると、規制による性能低下回避しようとする開発陣の知恵と努力で、クラブが進化するということです。似たような事例がドライバーの反発規制にも見られます。

高反発ドライバーはフェースを薄くしてたわませることで、反発係数を上げてボール初速を高める設計でした。反発係数が0.83までに規制されると、たわみが大きいフェース中央部の板厚を厚くした「偏肉構造」で反発係数をルール内に抑える設計が生み出されました。イメージ的にはリミッターを設けた感じです。

高反発クラブのフェース中央部の板厚を厚くすることで反発係数を抑えたのが「偏肉フェース」。

元々は反発係数(COR)での規制が予定されていましたが、ヘッドに40m/sでボールをぶつけ、跳ね返ったボールのスピードを計測するという実験方法は大変な手間や設備がかかるため、実際には小さな錘をフェースにぶつけ、衝突した時の接触時間(CT)を計測するテスト方法が導入されました。

ヘッドの反発性能は反発係数(COR)ではなくCT値で規制されている。写真がCT値計測器。

CORではなく、CTで反発規制が行われていることで、CT値はルール内なのに、反発係数が0.83超えのクラブもありそうだという状況になっています。

CTとCORは本来比例関係にあり、グラフ化すると直線になるはずなのに、市販のヘッドを計測すると直線上から離れたものもあると言われている。

これは、CT値を計測する際の衝撃はごく小さく、CORは40m/sでボールをフェースにぶつけるので、衝撃が大きいことによるものだと考えています。現在はCT値がルール内にあればルール適合なので、CT値はルール内、CORは0.83以上を目指す開発が行われていると思われます。

思われますというのは、確認できないからです。大っぴらにCT値はルール内、CORは0.83以上になるように開発していますと言ってしまうと、これを規制するルール改正が行われてしまう恐れがあるために、メーカーは公表出来ないからです。

フェースの変形量を衝撃の大小でコントロールすれば、小さな力ではルールに適合させ、大きな力が加わったときには高い反発力を発揮させることが出来る。

CT値はルール内、CORは0.83以上とは公表していないものの、各社ともこの設計を目指しているようです。既に発売されているドライバーのフェースの特徴や構造を見ると「やっていそうだな」と思えるものがあります。

写真上:つるや「ゴールデンプリックス TR-02」のカーボンフェースは、積層したカーボンの間に柔軟性の高い素材を挟み込んだ設計。 写真下:キャロウェイ「エリート」に搭載のAIフェースは複雑な凹凸が特徴的。

小さな衝撃と大きな衝撃でフェースの変形量を変えるためには、カーボンフェースや異素材複合のフェースが有効だと考えられます。おそらく2026年モデルのドライバーはこの設計が盛り込まれたものが出て来ると思いますし、業界内での噂も耳に届いていますので、今から楽しみにしています。

クラブに関するルール規制はあまりして欲しくないと思う反面、クラブを進化させる効果もありますから、ルール規制も捨てたものではない気がします。ただし、進化と同時に、開発費と材料費、加工費がかかるので、価格が上がる影響はあまり歓迎できないところです。

文/大塚賢二(ゴルフギアライター)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。有名シャフトメーカーのシャフトフィッターとしての経験も持つ。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。




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