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いつものHONMAじゃない! デザインも性能も劇的に変えた『TW777』の開発秘話

新社長の変革を酒田工場で現地取材

2025/11/28 ゴルフトゥデイ 編集部

11月28日に発売された本間ゴルフ『TW777』が予約段階から好スタートをきった。本間ゴルフは2023年12月に小川典利大(おがわ・のりお)が新社長に就任。今年の『TW777』は新社長がはじめて企画から携わった。デザインも性能もコンセプトも今までとは全く違う。そこにはどんな変革があったのか? 今回は酒田工場(山形県)を訪れて『TW777』誕生の舞台裏に迫った。

取材・構成・文/野中真一 撮影/相田克己 PMT

酒田工場では今でも「手」でモックアップを削っていた

パーシモンの時代はどのゴルフメーカーも職人が手でヘッドを削っていた。しかし、機械の進化や素材の変化とともにゴルフメーカーではデジタル設計がスタンダードになり、最近ではAIを駆使するメーカーも増えつつある。

本間ゴルフの開発拠点である酒田工場では今でも匠(たくみ)が手でモックアップ(木型)を削っている。匠とは酒田工場でも熟練の技を持つ職人の称号であり、さらにその中でも選ばれた職人が名匠(めいしょう)に認定される。ドライバーのモックアップを削っているのは、その道40年以上のベテランであり、酒田工場を代表する名匠の1人。製品開発本部長の佐藤巧に今でもモックアップを削る理由を聞くと、

「CADで設計したヘッドがどれだけ精密であっても、匠が削ったヘッドを超えることはありません。その理由はCAD設計は数字で『面』を作っているからです。数字を入れながら『四角形の面』を組み合わせる作業は、匠の手作業と比べるとかなり不器用です。それとCADは数字の世界なので、完成のイメージもなければ、修正能力もありません。匠たちは最初からこういうヘッドを作りたいという完成図が頭の中にあり、熟練の目と技で削っていきます。完成したと思っても、翌日になって気になるところがあったら修正する。それを繰り返しながら10日、1ヵ月かけて作っていきます」

もちろん、酒田工場でもCADの技術は使っている。

「他のメーカーはCAD設計からはじめていますが、本間ゴルフは匠が作ったモックアップを3DでスキャンしてCAD設計に落とし込んでいます」

酒田工場では匠が削ったモックアップを3Dスキャンしてデータ化している。
酒田工場では匠が削ったモックアップを3Dスキャンしてデータ化している。

チタンとカーボンの融合

モックアップを削る伝統は変わっていない。しかし、長年にわたり『TWシリーズ』の開発を指揮してきた佐藤は、それだけでは世界のトップメーカーに勝てないこともわかっていた。だからこそ、新しい構造を模索した。

「前作の『TW767シリーズ』も性能としてもやさしく、慣性モーメントが大きいのに構えやすいという評価はありました。でも、ボール初速や飛距離で負けていた。『TW777シリーズ』は飛距離性能を世界トップレベルにしないといけなかった。今、世界で主流になっている飛距離アップのテクノロジーはインパクトの瞬間にヘッド後方のウェイトがボディを押してボールに効率良くエネルギーを伝えることです。そのためにはカーボンの比率を上げないといけない。チタンより軽くてたわみが大きいカーボンを使うことで、後方から押す力が効率良くボールに伝わります。しかし、カーボンにも弱点があります。たわみが大きいので伝達効率は良くなりますが、インパクトした瞬間にフェース側がたわみすぎてエネルギーをロスする影響もあります」

カーボンソールの表面にメッシュ状に広がっているのがチタン繊維。
カーボンソールの表面にメッシュ状に広がっているのがチタン繊維。

それを解決したのが新素材のチタンカーボンだった。

「カギを握るのはソールの剛性です。後方から押す力はソールを通ってフェースに伝わっていきます。カーボンソールは剛性が弱いので、インパクトした瞬間のたわみが大きすぎて、後方から押すたわみが相殺されてしまう。それを解消するために『TW777』ではカーボンソールにチタンをメッシュ状に入れて剛性を高めました。さらにヘッド内部にはカーボンリング構造を作って、上下方向のたわみを抑えました」

フェース側にはチタンフレーム(写真中央)をつけることで、上下方向の余計なたわみを抑制。
フェース側にはチタンフレーム(写真中央)をつけることで、上下方向の余計なたわみを抑制。

開発の順番を逆にした

チタンカーボンも新しい挑戦だったが、『TW777』の開発ではさらに大きな変革があった。はじまりは2023年12月に就任した小川典利大社長のアイデアだった。

「小川社長は新しい素材の開発にも積極的ですし、今回は外部から新しいデザイナーがきて、デザインありきのところからスタートしました。それがソール中央に強調された“モグラ”のデザインです。長年、酒田工場では設計、開発を進めた後にデザインを決めていたのですが、『TW777』はその順番が逆になった。最初のデザイナー案はチタンボディを前提にしたものでしたが、どうしてもカーボン比率を上げたかったので、そこはゆずれなかった。何度も会議をして、ときには衝突することもありました。最終的にはチタンカーボンを採用した上で、ソールの中央にモグラを大きく配置して、性能を落とすことなくデザイナーのアイデンティティも生かしたヘッドにしました」

パーシモン時代の名器『BIG-LB』に採用されていたGETソール。
パーシモン時代の名器『BIG-LB』に採用されていたGETソール。

往年のGETソールが復活!

新しいデザイナーが提案したのはドライバーだけではなかった。フェアウェイウッド、ユーティリティでは往年のGETソールの復活を提案。 GETソールを提案された佐藤は、すぐに賛成することはできなかった。

「パーシモン時代は良かったのですが、チタンヘッドで同じ形状にするとドラム缶を叩いたような音になってしまう。実は過去にも試したことがあって、酒田工場の製品開発チームはそれがわかっていました。ソールの中央部を凹ませるのは禁じ手なんです」

しかし、デザイナーは往年のHONMAの魅力にこだわったこともあり、佐藤を中心とした酒田工場の匠たちもGETソールの復活に取り組んでいった。

「最初の試作品はやっぱり音が全然ダメでした。でも、凹ませる部分をなるべく薄くして、ヘッド内部にリブをつけることで音を改善できた。すると結果的には抜けの良いフェアウェイウッドやユーティリティになりました。今から考えるとパーシモンの時代に2本のレール設計をよく思いついたなと感心します」

チタンカーボンもかつての「ブラックシャフト」がヒント

『TW777』ドライバーで採用したチタンカーボンも、往年のカーボンシャフトがヒントになっていた。本間ゴルフは1973年に国内メーカーで最初にカーボンシャフトを発売。さらに、1988年にはチタン合金繊維とボロン繊維とカーボン繊維を複合させた『チタンボロン』を発売し、1991年には米国でも特許を取得している。

「その当時はカーボンシャフトがまだブラックシャフトと言われていた時代。まだまだカーボンシャフトには課題があって、プレーヤーからは『弱すぎる』『たよりない』という声がありました。だからカーボン繊維にチタン合金繊維を組み合わせた。『TW777シリーズ』のチタンカーボンも同じ発想です。過去の経験があるからこそ、開発会議でも『カーボンの剛性が足りないなら、チタン合金繊維を入れたらどうかな』というアイデアが出てきます。それも本間ゴルフ、酒田工場の大きな財産だと思います」

酒田工場で取材すると、新素材の採用から、開発工程、そして外部デザイナーの存在まで小川社長の就任以来、大きく変わっていたことがわかった。小川社長は就任翌日に酒田工場を訪れていて、こんなことを言っていた。

「正直に言うと本間ゴルフの社長になったとき不安もありました。アイアンは良いけど、ドライバーはちょっと物足りないと思っていました。でも、酒田工場で匠の技術を見たり、話を聞くと『こんなに本間ゴルフの技術はすごいんだ』と感心した。だから次(TW777)は絶対にイケると思いました」

デザインを大幅刷新した『TW777』。内に秘めた性能はさらに大きな変革をとげていた。

株式会社 本間ゴルフ
酒田工場
製品開発責任者(名匠)
佐藤巧
Takumi Sato
入社37年目。1998年から開発に携わり、アイアンのマスターヘッド、プロモデルなどを担当して、アイアンの名匠に認定。現在は製品開発本部長として酒田工場で製品開発の指揮をとる。

アベレージゴルファーからアスリートまで使える新生『TW777』

『TW777』ではHONMAのロゴも一新して、クラブのデザインを大胆に変更。
『TW777』ではHONMAのロゴも一新して、クラブのデザインを大胆に変更。

TW777 MAX

MAXなのに構えやすくて飛ぶ!

高慣性モーメント系でありながら構えやすく、前作から初速、飛距離性能を高めた。

高慣性モーメント系でありながら構えやすく、前作から初速、飛距離性能を高めた。

●SPEC
ヘッド体積/460㎤
ロフト角/9、10.5、12度
長さ/45.5インチ
シャフト/VIZARD for TW777など
価格/10万7800円

TW777

強弾道のストレートボール!LSにも変身

高初速の強いストレートボールが打てて、ウェイト調整でロースピンヘッドにもなる。

高初速の強いストレートボールが打てて、ウェイト調整でロースピンヘッドにもなる。

●SPEC
ヘッド体積/460㎤
ロフト角/9、10.5度
長さ/45.5インチ
シャフト/VIZARD BLUEなど
価格/10万7800円

TW777 360Ti

やさしいミニドラ!

ミニドラとしては大きめのヘッド体積360㎤。フルチタンヘッドによりクリアな打感を実現。

ミニドラとしては大きめのヘッド体積360㎤。フルチタンヘッドによりクリアな打感を実現。

●SPEC
ヘッド体積/360㎤
ロフト角/11.5度
長さ/43.5インチ
シャフト/VIZARD BLUEなど
価格/8万5800円

TW777 MAX FW

やさしさ満点のハイドロー弾道

GETソールによる抜けの良さはもちろん、簡単にハイドローが打てるつかまりと上がりやすさが魅力。

GETソールによる抜けの良さはもちろん、簡単にハイドローが打てるつかまりと上がりやすさが魅力。

●SPEC
ロフト角/15度(3W)、18度(5W)、21度(7W)
長さ/43インチ(3W)
シャフト/VIZARD for TW777など
価格/6万3800円

TW777 FW

飛距離とコントロール性を両立

HONMAらしいオーソドックスな形状で構えやすく、飛距離とコントロール性を両立。

HONMAらしいオーソドックスな形状で構えやすく、飛距離とコントロール性を両立。

●SPEC
ロフト角/15度(3W)、16.5度(4W)、18度(5W)、21度(7W)
長さ/43インチ(3W)
シャフト/VIZARD BLUEなど
価格/6万3800円
※4W、7Wは2月発売予定

TW777 UT

王道の顔にGETソール

ユーティリティにもGETソールを採用。飛距離、打感、コントロール性を融合した万能タイプ。

ユーティリティにもGETソールを採用。飛距離、打感、コントロール性を融合した万能タイプ。

●SPEC
ロフト角/19度(3U)、22度(4U)、25度(5U)、28度(6U)
長さ/40.5インチ(3U)
シャフト/VIZARD for TW777など
価格/5万2800円

TW777 PCB MAX

打感の良い飛び系アイアンに

大きめで安心感のある形状でありながら、軟鉄ボディによる打感の良さを実現。

大きめで安心感のある形状でありながら、軟鉄ボディによる打感の良さを実現。

●SPEC
ロフト角/28度(7I)
長さ/37インチ(7I)
シャフト/N.S. PRO 950GH neoなど
価格/13万7500円(5本セット・#6~10)
2万7500円(単品1本・#5、#11、AW、SW)

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