アイアンのネックはストレート、グースどっちがいい? そもそも何が違うの?
吉本巧のゴルフギア教室 第94回
アイアンのネック形状を“見た目の好み”だけで選んでる? もしそうなら、ちょっともったいないことをしているかもしれない。なぜなら、ストレートネックとグースネックには特性に違いがあり、球のつかまり、ヘッドの返り方、入射角、弾道の高さまで広く影響を与えるからだ。吉本巧プロコーチが、それぞれの特徴と向いているゴルファーをわかりやすく解説する。
ストレートネックは芯の位置が浅く、グースネックは深くなる
アイアンのネックにはストレートネックとグースネックがあります。前者はオンセット、後者はオフセットとも呼ばれます。ストレートネックは、構えた時にシャフトの真っすぐ延長線上にヘッドがあるイメージ。グースネックはシャフトの延長線上より右にヘッドがあるイメージです。グースの度合いが少ないものをセミグースと呼んで差別化しているモデルもあります。
グースのあるなしで何が変わるかといえばフェースの芯の位置。グースネックはヘッドが右寄りにあるので、ボールから見て芯が深い位置にきます。これに対してストレートネックは芯が浅い位置になります。では、これによって生じる両者の違いを見ていきましょう。
まずはショット時のヘッドの返りやすさ=フェースローテーションのしやすさですが、ストレートネックは返りにくく、グースネックは返りやすいと言えます。ネックが曲がってシャフトの右側にヘッドがあるグースネックでスイングすると、シャフトの付け根とトゥが一直線になろうとする力が働きます。トゥ側が前に行きやすいということですね。そのためフェースが閉じやすい。これはストレートネックでは見られない動きです。
この動きは球のつかまりやすさに影響します。フェースが閉じやすいグースネックは球がつかまりやすいので左に飛びやすく、フェースが閉じづらいストレートネックは球がつかまりにくいので左に飛びづらい。打球が右に飛びやすい人はグースネック、左にヒッカケやすい人はストレートネックを使うことで、これらの傾向が緩和される可能性があります。
上記の特性をクラブの操作性という観点から見るとグースネックよりもストレートネックの方が操作性が高くなります。グースネックはヘッドがオートマチックに返る傾向がありますが、言い換えると勝手に返ってしまうとも言えます。そのため自分でフェースをローテーションさせたい人には向きません。グースネックだと左にしか飛ばない、あるいはストレートネックだと右にしか飛ばない人は間違ったネックタイプを選択しているかもしれません。
ネックが違うとヘッドの入射角も違ってきます。グースネックは緩やか、ストレートネックは鋭角的になります。ただ、ネックの違いによって生じる違いはわずかなので、どちらかと言えば適した入射角と言った方がいい。すなわち芯の位置が深いグースネックは緩やか、芯の位置が浅いストレートネックは鋭角的な入射角がマッチするということです。芯の位置がアイアンより深いフェアウェイウッドやユーティリティは、ソールを滑らすイメージで打つと言われますが、グースネックはその延長上にあります。逆にストレートネックはダウンブローが向くわけです。
入射角が変わればインパクト時のロフトも変わります。緩やかな入射角にマッチするグースネックはインパクトロフトが大きくなりやすく、ダウンブローがマッチするストレートネックは小さくなる傾向があります。ロフトは芯が深いほど寝やすく、浅いほど立ちやすいというわけで、グースネックはボールが上がりやすく、ストレートネックは上がりづらい。ストレートネックでボールが上がりすぎる人は、かなり高い確率ですくい打ちになっていると思います。
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右に飛びがちな人はグースネックで楽をしよう
各々の適正についてですが、グースネックは初心者~中級者、ストレートネックは上級者に向きます。初中級者は球がつかまらず右に飛ぶ人が多いのでグースネックのオートマ感が助けになります。一方、上級者にはスライスやフックなどボールを打ち分けたい人もいます。そんな要求に応えてくれるのは操作性の高いストレートネックということで、マーケットもそのような傾向になっています。ポケットキャビティや大型ヘッドのモデルにはグースネックが多く、マッスルバックやハーフキャビティにはストレートネックが多いということですね。
グースネックでは球がつかまりすぎ、ストレートネックだとつかまらない両者の中間的な傾向の人には、冒頭でちょっと紹介したセミグースがおすすめです。実は現在のマーケットで最も多く出回っているのがこのタイプです。また、違うネックタイプのアイアンを組み合わせてセットアップする手もあります。ボールがつかまりづらいロングアイアンはつかまって飛ばせるグースネック、ヒッカケたくないショートアイアンはストレートネック、両者の中間に位置するミドルアイアンはセミグースネックにすれば弱点をカバーするセットアップになります。はじめからそのように組み合わせてあるセット売りもあるので、それぞれの番手を試打するのもいいでしょう。
吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・中央区日本橋浜町の「吉本巧ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。
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