直前テストで決まった54度ウェッジのシャフト変更

練習日のレンジで、佐久間は54度のウェッジを渡されて試打を行っていた。一球放つとすぐに「これだね」「きたね」という声が上がる。どうやらシャフト調整がうまくいったようだった。

どんな調整がなされたのか? 日本シャフトのツアー担当に聞くと、今回のシャフト変更はショートゲームの精度向上を目的としたものだったという。

「これまではアイアンと同じプロトタイプのシャフトを3本のウェッジにも入れていたんです。ただショートゲームで距離のバラつきが出ることがあって、薄く当たることや手で打ってしまう動きが見られました。そこで、もう少しウェッジに重量を持たせた方が20ヤード前後の距離感が安定するのではないかと考えたんです」(日本シャフト)

そこで、オフシーズンには58度のウェッジでテストを実施。その時に投入されたのが「N.S.PRO MODUS³ WEDGE 105」(以下モーダスウェッジ105)だった。

「このシャフトがかなりハマったんです。ただアイアンのシャフトより約10g重くなるので、最初は58度にだけ入れて開幕を迎える予定でした」(日本シャフト)

ところが大会初日を目前に控え、もう一つの課題が浮かび上がった。

「54度、だいたい90ヤードの距離ですね。そこで打点のバラつきが出ていたんです。今週は強風もあって下ブレもありましたが、54度にもモーダスウェッジ105を入れてみたら、それがビタッとハマりました」(日本シャフト)

オフには「1ヤード刻みでコントロールショットを打てるように」と、練習を重ねてきたという佐久間。精度の高いショットのために、技術だけでなくクラブの調整にも余念がない。

また、見事に開幕Vを飾った後に本人の口から判明したことだが、コースレコード62というスコアを出した大会2日目終了後、佐久間は狙った距離よりもショートしたということに納得がいかず、50度は約5g重いプロトタイプのシャフトを挿したものに替えて3日目以降を戦った。

女子ツアーではアイアンシャフトは“少し軽め”が多い

日本シャフトのツアー担当によれば、ウェッジだけシャフト重量を変えるセッティングは女子ツアーではむしろよく見られる調整だという。

「モーダスウェッジ105は女子ツアーで他にも使っている選手がいます。男子ツアーの場合はアイアンもウェッジも”MAX重い”シャフトを使うケースが多くて、例えばモーダス125をそのままウエッジまで流すような感じですね」

一方、女子ツアーでは事情が少し違う。

「女子は試合数が多いので体力的なことを考えてアイアンを少し軽めにする選手が多いんです。本当はN.S.PRO 950GH neoが振れる選手でも、N.S.PRO 850GH neoくらいに重量を抑えるケースがあります。だからアイアンは軽め、ウェッジは少し重めというセッティングになる傾向があります」

ショートゲームの精度を高めるための工夫が、こうしたセッティングにも表れている。

リカバリー率1位(約88%)を支えた58度のEソール

さて、今大会を終えての部門別ランキングを見ると、佐久間はリカバリー率を1位(約88%)としている。58度に加えて54度と50度のシャフトの重量調整が功を奏したと言えるわけだが、その使用ウェッジにも注目してみよう。

佐久間が使用するウェッジはピンのニューモデル「s259」ウェッジだ。ロフトは50度、54度、58度。ソールグラインドは50度と54度がスタンダードなSソール、58度のみEソールを使用している。ちなみに、50度と54度はロフトを2度、58度は1度立てて使っている。

大会終了後、佐久間はこのウェッジについて以下のようにコメントしている。

「オフシーズンに100ヤード以内を強化してきたということもあり、すごく練習の成果も出て良かったですし、Eグラインドにしたことによって、沖縄特有のボールが芝の上に浮くような状況でも抜け感がとても良かったです。バンカーショットもバウンスを使えている”とても良い音”で打てていたので良かったです」(佐久間)

左から50度、54度、58度。50度と54度はSソール、右端の58度はEソール。佐久間はEソールについて「フェースへのボールの乗り感とソールの抜け感が特徴」と話している。

ドライバーは3年目の信頼シャフト「レジオフォーミュラMB+」

一方、ドライバーのシャフトには長く信頼を寄せているモデルを使用している。

日本シャフトの「N.S.PRO レジオフォーミュラMB+」(55S)だ。

「佐久間選手はMB+を使って3年目になります。フェードやドローを打ち分ける中で一番コントロールしやすかったのと、ヘッドとの相性が良かったことが理由です」(日本シャフト)

一時期はスピン量を抑えるために別のシャフトを試したこともあったが、最終的にはこのモデルに戻ってきた。

「MB+は手元調子ですが極端な挙動ではなく、シンプルな性格のシャフトです。比較的人を選ばず、振りやすいのが特徴です。外径が少し細いので空気抵抗も少なくスピードを出しやすいですし、かといって頼りないわけではありません。安定感もありつつ、しなやかに振れるシャフトです」

慣性モーメントの大きいドライバーヘッドでもブレずにインパクトを迎えられることもあり、佐久間が使用する「G430 MAX 10K」(9度)にマッチしているという。

オフの取り組みをギアでも昇華!開幕Vは必然だった

オフシーズン、佐久間はコントロールショットの精度向上に重点を置いてトレーニングを行ってきたという。試合前の会見では、「例えば30、50ヤードなどだけでなく、より細かく72ヤードを3本のウェッジで同じように打てるように練習するなどして、距離感、コントロールショットを磨きました」と話していた。

その成果は技術だけでなく、ギアのセッティングにも表れている。ウェッジのシャフト調整はまさにその象徴だ。距離感の安定を求めて導き出した「モーダスウェッジ105」の投入。そして長く信頼する「レジオフォーミュラMB+」によるドライバーショット。

こうした準備の積み重ねが、2026年シーズン開幕戦での勝利につながった。

もしかすると開幕戦Vを決めた瞬間に沸き起こった歓声は、佐久間が“女王連覇”へ向けて走り出す号砲になるのかもしれない。