第3章 ゴルフスイングと、クラブの役割

第3章 ゴルフスイングと、クラブの役割

クラブは仕事をするべきなのか。それとも、仕事をさせないべきなのか?

その問いに向き合い始めていた頃、私のゴルフ人生において、決定的な出会いがありました。スクエア理論の後藤修さんとの出会いです。

もともと私は、学生時代から後藤さんの存在を知っていました。雑誌に掲載されていた技術論は、他とは明らかに異なっていたからです。感覚論に寄らず、それでいて単なる理屈でもない。読むほどに、「何か本質的なことが書かれている」と感じていました。

ただ、文章だけではどうしても理解しきれない。

いつか直接話を聞いてみたい――。そう思い続けていました。そんな中、一般アマチュア向けのレッスン会を開催していると知り、迷うことなく参加しました。

実際にお話を聞いてみると、決して平易な内容ではありませんでした。

むしろ、理想は高く、自分に実現できるのかと戸惑うほどでした。しかし、何度もお話を聞くうちに、それは「難しい理論」ではなく、自分が向き合うべき本質を示されているのだと感じるようになりました。そして、「クラブ論」もきちんと体系立ててお話され、私の聞きたいお話がたくさん出てきました。

特に印象に残っているのは、次の言葉です。

「ゴルフスイングは、ヘッドをぶつけるのではなく、シャフトを振る」

この言葉を聞いたとき、私はすぐには理解できませんでした。しかし、何度もお話を伺い、自分なりに考え続ける中で、一つの解釈にたどり着きます。それは――

クラブ全体としての振りやすさ、扱いやすさがなければならないということ。

そしてその中心にあるのが、シャフトなのではないか。そう考えるようになりました。

そこから、クラブに対する見方が少しずつ変わり始めます。ちょうどその頃、第2章で感じた違和感の正体も、輪郭を持ち始めていました。

あのホールのミスショット。

あれは、自分の技術だけの問題ではなかった。むしろ――クラブが“仕事をしすぎた”結果だったのではないか。

そう考えたとき、すべてがつながりました。シャフトがしなりすぎることで、タイミングがズレる。ヘッドが走りすぎることで、動きが不安定になる。つまり、クラブが動くことで、人間の動きが乱されていたのです。

それまで私は、「クラブに仕事をしてもらうこと」が正しいと信じていました。しかし、その前提そのものが違っていたのではないか?そう思うようになりました。

では、本当にやさしいクラブとは何か。

それは、

「仕事をしてくれるクラブ」ではなく、

「余計な仕事をしないクラブ」

なのではないか。

クラブが過剰に反応しない。

クラブが人間の動きを邪魔しない。人間もまた、クラブに振り回されない。その関係が生まれたとき、プレーヤーは余計なことを考えずにスイングできる。それこそが再現性であり、安定性であり、本当の意味での「やさしさ」なのではないか。この考えにたどり着いたとき、

私の中でクラブ設計の前提は完全に変わりました。

データだけでは見えなかったもの。スペックだけでは語れなかったもの。それは――

人間とクラブの関係性そのものだったのです。

では、その関係性を前提にしたとき、クラブはどのようにあるべきなのか。シャフトはどうあるべきか。ヘッドはどうあるべきか。セッティングとは何を意味するのか。

私はその答えを求めて、クラブという道具を、もう一度ゼロから見直すことにしました。それは、常識をなぞる作業ではなく、常識そのものを疑う作業でした。そしてまず、私はひとつの結論にたどり着きます。

――すべては、シャフトから始めるべきではないか。

重さや硬さの考え方は今のままでよいのだろうか?そう考え、シャフトの実験を繰り返す日々が始まりました。

(第4章へ続く)

ダグ・三瓶(だぐ・みかめ) ブリヂストンスポーツ、アクシネット ジャパン インクと日米2つの大手メーカーに所属。その中でクラブ開発、ツアー担当、マーケティング、フィッティングなどを担当。ツアーレップ時代にはあのボブ・ボーケイ氏に日本で唯一の弟子と認められていた。現在、フリーとなり迷い多きアマチュアゴルファーにアドバイスを送ってくれることとなった。