第4章 シャフトの研究

すべては、シャフトから始めるべきではないか。そう考えたとき、私はまず、クラブに「仕事をさせる」という概念そのものを疑うことにしました。

一般的に言われる「クラブの仕事」とは、シャフトのしなり戻りを活かすことです。つまり、しならせて、戻して、飛ばす。

しかしそれは同時に、タイミングに依存するということでもあります。

では逆に「クラブに仕事をさせない」とは何か。それは、シャフトが過剰にしならない状態をつくることではないか。そう考え、私は一つの仮説を立てました。

「シャフトは、どこまで硬くできるのか。」

まずは、手に入る中で最も硬いシャフトを試すことにしました。いわゆるTXフレックスのシャフトを使い、ドライバーをやや短めに組み上げる。完成したクラブは、振動数でいうと325cpm。一般的には想像もつかないほどかなりハードな部類に入ります。

恐る恐る打ってみると、結果は、想像以上に良好でした。むしろ、振りやすい。しかし、それは「想定内の良さ」でもありました。問題はその先です。

どこまで硬くしたとき、人は違いを感じなくなるのか。その疑問が、次の実験へとつながっていきます。

シャフトメーカーの協力を得て、さらに極端な試作を行うことになりました。意されたのは、振動数500cpmという、通常では考えられないほど硬いシャフトです。初めて手にしたときの印象は、当然ながら――硬い。

しかし、実際に振ってみると、その印象はすぐに変わりました。

振りやすい。打ちやすい。

そして、打ち続けるうちに、ある奇妙な感覚に気づきます。

「硬いはずなのに、しなりを感じる」

ここで、ひとつの確信に変わりました。

シャフトは、どれだけ硬くしても、しなっている。そして、“硬すぎる”という状態は存在しないのではないか。

同時に、私はアイアンにも目を向けていました。一般的なアイアンは、番手ごとにシャフトの硬さが変わります。長い番手ほど柔らかく、短い番手ほど硬くなる設計です。

一見すると合理的です。長いクラブは球を上げやすくするために、シャフトが仕事をする。

しかしここに、ひとつの違和感がありました。本当にそれで、すべての番手が同じように振れるのか?

その疑問を確かめるため、極端な実験を行うことにしました。PW用のシャフトを、5番アイアンに装着する。振動数は約400cpm。通常では考えられない硬さの5番アイアンです。

結果は――明らかに打ちやすい。それならば、と そのシャフトをすべての番手に入れてみました。すると、クラブ全体の振動数が揃ったのです。

このとき、もうひとつの狙いがありました。一般的には、ヘッドスピードに応じてシャフトの硬さを選ぶとされています。速い人には硬く、遅い人には柔らかく。

しかし、ここでもひとつの矛盾に気づきます。

クラブセットの中では、その原則が成立していないのです。最もヘッドスピードが速いドライバーには、最も柔らかいシャフトが入っている。一方で、最もスピードが遅くなるウェッジには、最も硬いシャフトが入っている。

つまり――

クラブセットそのものが、矛盾した構造になっている。この矛盾を解消するために、私はシャフトの硬さを“揃える”という方向に進みました。実際にラウンドしてみると、長い番手の安定感は明らかに向上しました。しかし同時に、別の問題も現れます。

ショートアイアンの違和感です。

悪くはないが、しっくりこない。やや薄い当たりが増える。ここから見えてきたのは、単純に「すべて同じ」にすればいいわけではない、という事実でした。さらに試行錯誤を重ね、最終的に一つのバランスにたどり着きます。

それが、8番アイアン基準のシャフト構成です。この方法では、ロングアイアンはやや硬く感じられ、ショートアイアンはやや柔らかく感じられる。

全体として、流れが生まれるのです。しかし、ここでも問題は残りました。

番手ずらしによって、シャフト本来の性能ではない違和感が出てしまうという点です。同じシャフトを入れても、シャフトの手元のカット量の違いによってフィーリングが変わる。

結果として、意図とは逆の挙動が生まれてしまうこともある。ここで私は、もう一度立ち止まりました。そして、ひとつの結論に至ります。シャフトは、ただ硬くすればいいわけではない。ただ硬さを揃えればいいわけでもない。

必要なのは――

クラブ全体として“流れ”を持たせること。クラブは一本で完結するものではなく、特にアイアンはセットとして機能する道具です。だからこそ、番手ごとに役割は違っても、プレーヤーの動きは変わってはいけない。

同じように振れ、同じように扱えること。そのための設計こそが、必要だったのです。

私はこの結論をもとに、クラブセットの構造そのものを見直すことにしました。それは、単なるフィッティングではなく、設計思想の再構築でした。

そしてこの考えが、やがて「UPPAR」の設計思想へとつながっていきます。

(第5章へ続く)

ダグ・三瓶(だぐ・みかめ) ブリヂストンスポーツ、アクシネット ジャパン インクと日米2つの大手メーカーに所属。その中でクラブ開発、ツアー担当、マーケティング、フィッティングなどを担当。ツアーレップ時代にはあのボブ・ボーケイ氏に日本で唯一の弟子と認められていた。現在、フリーとなり迷い多きアマチュアゴルファーにアドバイスを送ってくれることとなった。