第7章 UPPARブランドの立ち上げ
UPPARというブランドを立ち上げるにあたり、最初から決めていたことがありました。
それは――
「日本人のためのクラブをつくる」ということです。
これまでの開発やフィッティングを通じて、私は何度も同じ光景を見てきました。スペック上は正しいはずのクラブなのに、なぜか扱いにくい。軽くして振れるはずなのに、振り切れない。
その多くは、日本人の体格やスイング特性に対して、クラブが最適化されていないことに原因がありました。
だからこそUPPARは、特定の一部のゴルファーではなく、“一般的な日本人アマチュア”を中心に設計するという思想からスタートしています。
そして、Made in Japanへのこだわりです。その思想を実現するためには、設計だけでは不十分でした。ここもまた、同じくらい重要です。そこで、日本人のためのクラブは、日本人が理解し、日本人が作るべきだと考えました。
だからこそ、UPPARはMade in Japanにこだわります。
ブランド誕生のきっかけ
そうした構想「日本人のための日本人の作るMade in Japan」を掲げていた中で、ひとつの出会いがありました。
テレビ東京のゴルフ専門事業、アトミックゴルフ様からのお声がけです。
この出会いによって、構想は現実へと動き出しました。
UPPARという名前に込めた意味
UPPARという名前は、単なる響きで決めたものではありません。このブランドの思想そのものを、言葉にしたものです。信頼しているデザイナー氏に、これまでの背景とコンセプトをすべて伝え、導き出された名前です。
そこには、二つの意味が込められています。
- UPPER(上級志向)
- UP PAR(パー以上を目指す)
性能を追求するだけでなく、ゴルファー自身が一段上へ進むためのクラブ。それが、UPPARです。
最大の課題――「作れる場所」
最大の課題――「作れる場所」
ブランドは立ち上がった。しかし、ここで現実的な問題に直面します。
この設計を実現できる工場をみつけなければなりませんでした。
UPPARが目指したのは、従来のスイングウエイト管理ではなく、ヘッド重量による振り感設計です。これは従来の製造思想とはまったく異なります。一般的には、多少の重量公差は許容し、組み立て時に調整します。
しかしUPPARでは、それが通用しません。
ヘッド単体で、精密に重量管理されていなければならない。そこでたどり着いたのが、ササキ社でした。ササキ社は、国内最高レベルの高精度加工を得意とするメーカーです。
その技術によって、従来の半分以下の重量公差という精度を実現できる。これによって初めて、「振り感のズレが起きないクラブ」が可能になりました。
シャフトとグリップも妥協しない
シャフトとグリップも妥協しない
シャフトは、重要な要素です。当方の目指す振り感を目指し、徹底したテストの結果、採用したのは島田シャフトのK’sシャフトでした。
さらにグリップ。
ここでも既製品では答えが出ませんでした。握りの違和感は、そのままスイングに影響します。そこで芹沢ゴム工業様に依頼し、UPPAR専用の右手を少し太くしたサイズで製作していただきました。
そして“形の実現”へ
すべての準備が整い、いよいよ設計へと進みます。最初に最も重要になるのが、フェース形状でした。UPPARが目指したのは、日本人が自然に構えられる形です。
私はこれを、「和顔」と呼んでいます。
日本人は、フェース面を基準に構えます。一方で欧米では、輪郭全体で構える傾向が強い。つまり、
- 日本 → フェース重視(和顔)
- 欧米 → 輪郭重視(洋顔)
UPPARは、明確に前者を選びました。フェース面がくっきり見えるように、トップラインの角度、オフセット、ふところの形状。すべてをミリ単位で調整し、「まっすぐに構え易い」「違和感が出ない形」を追い求めました。この感覚的な領域を、正確に形にできたこと。それが、このプロジェクト成功の大きな要因です。
設計に携わっていただいた、ササキ社には感謝しかありません。
最後の難関――ヘッド重量
最後の難関――ヘッド重量
そして、最も困難だったのが、ヘッド重量でした。
軽くしたい。しかし小さくはしたくない。
この矛盾を解決するために採用したのが、キャビティバック構造です。
本来は慣性モーメントを高めるための構造設計ですが、UPPARでは重量を落とすための構造として活用しました。もちろん、ヘッドが軽くなって慣性モーメントが不利になるので、その効果を少しでも、という狙いも含まれています。
こうして完成したUPPARは、飛ばしに特化したクラブではありません。お助けクラブでもありません。邪魔をしないクラブです。
人の動きを乱さず、クラブを思い通りにコントロールしやすい状態を作る。その結果として、打ちたい距離や球筋、方向も整っていく。
それが、UPPARの設計思想です。
〈次章へ〉
“地面との関係”もアイアン・ウェッジには最重要。
ソールが機能しなければ意味がない。そう考えていました。
次章では、ソール形状設計についてお話しします。
それは、UPPARの「やさしさ」の一翼を担う重要な要素です!
(第8章へ続く)

ダグ・三瓶(だぐ・みかめ) ブリヂストンスポーツ、アクシネット ジャパン インクと日米2つの大手メーカーに所属。その中でクラブ開発、ツアー担当、マーケティング、フィッティングなどを担当。ツアーレップ時代にはあのボブ・ボーケイ氏に日本で唯一の弟子と認められていた。現在、フリーとなり迷い多きアマチュアゴルファーにアドバイスを送ってくれることとなった。







