コロナ禍の新しいゴルフの楽しみを知っていますか?

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第4回

2022/02/05 ゴルフサプリ編集部



ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

2020年春。日本でも新型コロナウイルスが広まって、緊急事態宣言が発令されました。
未知の感染症の恐怖で、とにかく自粛するのだという雰囲気が広がり、不要不急の外出はダメ、ということになりました。日本だけではなく、世界中がパンディミックで大混乱しました。

ゴルフコースはいわゆる名門と呼ばれるコースが率先して自主クローズし、トーナメントも延期と中止が相次ぎました。

流行語になった『エビデンス』は、新型コロナウイルスの感染対策の科学的なデータや根拠という意味で使われました。

欧米のほぼ全てのゴルフ団体は、次々に「ゴルフは感染対策をすれば安全に楽しめるので、どんどんプレーしましょう!」という啓蒙をスタートしました。安全に楽しめるというエビデンスが明確になったからです。

行政がロックダウンを発令したエリア以外では、積極的にゴルフをするべき、と、彼らが言い出したのは、日本では桜が咲く頃でした。

残念ながら、日本のゴルフ団体は、エビデンスよりも世の中に漂う雰囲気を優先したのか、男は黙ってサッポロビールみたいなことが権威だと勘違いしているか、欧米のゴルフ団体とは真逆に、沈黙を貫きました。

僕は、安全にゴルフをしよう! と呼びかけるゴルフエッセイを連発して、実際に毎週コースに行きました。
ゴルフメディアも自粛で、新製品のインプレの連載も休止になったので、仕事ではなく、完全なプライベートでのラウンドを意地で続けました。

安全に楽しめることを自らが証明しようという意図もありましたが、自粛警察と呼ばれた人たちから執拗な抗議を受けたり、権威ある先輩からもスタンドプレーはゴルフのイメージを悪くする悪行だと叱られたり、大変な経験をしました。

ゴルファーがまばらなゴルフコースは、異様でした。
でも、僕には確信があったのです。
『この瞬間が、これからのこの国のゴルフの決定的な分かれ道になる!』

潤沢な資金がある名門コースは長期間のクローズに耐えられますが、日銭で辛うじて経営している都会から遠方にある弱小なコースは、あっという間に廃業に追い込まれてしまう、という危機感がありました。

2010年代以降、過去に何度もプレーしたことがあるコースが、廃業して、太陽光発電施設になってしまう悲劇を目の当たりにして来ました。
新型コロナウイルスは、そういうたくさんのゴルフコースのトドメの一撃になる可能性があったのです。

僕一人が立ち向かっても、焼け石に水、だということはわかっていましたが、ゴルフに行かずにはいられませんでした。

状況が変わり出したのは、ゴールデンウィークを過ぎる頃でした。僕と同世代の昭和のオールドゴルファーが、誘い合わせて、ゴルフコンペを開催しているシーンが目立って増えてきたのです。
そして、あまり見慣れない若いゴルファーが、少しずつという感じで増えていったのです。

誰も想像できなかった新しいゴルフの時代の幕開けの瞬間でした。