20歳の山下美夢有が持つ強さの裏にあるもの
ワールドレディスサロンパスカップで初日から首位を守る完全優勝を達成!
写真は2022年ダイキンオーキッドレディス時のもの(写真/相田克己)
圧巻の強さだった。シーズン最初の公式戦、ワールドレディスサロンパスカップは、初日に8アンダー64で単独首位に立った山下美夢有が、そのまま突っ走って2位に3打差をつける完全優勝。ツアー2勝目とは思えない堂々のプレーぶりだった。
「まずは1勝。そこから複数回優勝ができたらいいなと思います」。2シーズン目となる2022年を、山下はそんな気持ちで臨んでいた。
KTT杯バンテリンレディスで初優勝したのは、異例のロングシーズンとなった2021年。体力不足かスイングが悪くなり、後半失速したのが一番の反省点だった。シーズン通して戦える体力をつけること、ショットの精度、飛距離アップ、パッティング…。課題満載のオフシーズンだったが、山下はしっかりと地に足をつけて取り組んだ。
ショートゲームについては、ツアー48勝のレジェンド、中嶋常幸の指導も仰いだ。前年に続き、中嶋の合宿に参加。「遊び感覚で練習する方法を教えてもらいました」と、アプローチのバリエーションを増やし、これを磨いた。
決して気負うことなく、淡々とした態度は、大会コースレコードを出した今大会の初日の言葉にも表れている。「何かを変えたわけではない。集中することは当然。強いてあげればスイングのリズムに細心の注意を払った。練習場と同じリズムでスイングする。コックで間を置いたらショットの精度が上がった」。笑顔を交えながら、興奮するでもなく、あくまでも自然体。20歳とは思えない落ち着きを最後まで貫いた。
優勝は経験しているとはいえ、逆に重圧のかかる6打差で迎えた最終日。好調とはいえ、これほどまでに堂々とプレーできた裏には何があるのか。
20歳の抱負を尋ねた時のことを思い出す。人間的な成長を考えるようになったと話していたのだ。子供の頃からゴルフ一色の選手が多いツアーでは、どうしても交友関係に偏りが出る。そんな中で「ゴルフだけじゃなく、礼儀とか考え方もレベルアップして大人になっていかないといけないと思います」。優勝争いのような緊張する場面になればなるほど、厳しい自分との戦いが必要なのがゴルフというスポーツだ。人間的に成長しようという気持ちを持った山下の強さが、今回の勝利につながったのではないだろうか。
長いシーズンを戦っていれば、ゴルフそのものだけでなく、肉体的にも精神的にも、調子の波がある。長いゴルフ人生を考えればなおさらだ。山下は、弱冠20歳でごく自然に物事を長い目で見ることができているのかもしれない。