ゴルフは「歩きゴルフ」が正式なのだ、は正しいのか?
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第59回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
写真提供/篠原嗣典
「ゴルフは正式には歩いてプレーするもので、乗用カートでのゴルフは正式には認められない、というのは本当ですか?」
この質問をされると、最近は回答するのに少し時間がかかったりします。
実はひと昔前までは、ゴルフ規則にも正規のラウンドは歩いてプレーする、という条文があったのです。乗用カートでプレーするのが当たり前になっているゴルフコースでも、クラブ選手権などの公式競技で、乗用カートに乗って良いのはキャディーのみで、プレーヤーは歩いてラウンドする決まりになっている所があります。しかしそれは、昔の慣習が残っているのです。
プロのトーナメントやアマチュアのトップレベルの競技では、現在でも歩いてプレーする規則が適用されています。
21世紀になったばかりの頃、ケイシー・マーチンという先天的に足に障がいを持っているプロゴルファーがプロゴルフ協会と米ツアーを相手に、カートの使用を認めて欲しいと、数年にわたって裁判で争ったことがあります。マーチンが勝訴しましたが、結局その権利を振りかざして、ツアーに参戦することはありませんでした。
現在、トーナメントの予選などではケースバイケースでカートに乗ることが認められていて、、乗用カートに乗ってプレーをするプレーヤーもいます。
障がいのある人を差別するのではなく、乗用カートなどで補助されることで有利不利が生まれて、競技としての本質を揺るがしてしまう可能性があるため、規則で制限をする必要があるということなのです。