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ゴルフは「歩きゴルフ」が正式なのだ、は正しいのか?

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第59回

2023/03/08 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフ場,乗用カート

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

写真提供/篠原嗣典

プロは歩きオンリーだから歩きゴルフだけが正式なのだ、というのは正しいのか?

「ゴルフは正式には歩いてプレーするもので、乗用カートでのゴルフは正式には認められない、というのは本当ですか?」
この質問をされると、最近は回答するのに少し時間がかかったりします。

実はひと昔前までは、ゴルフ規則にも正規のラウンドは歩いてプレーする、という条文があったのです。乗用カートでプレーするのが当たり前になっているゴルフコースでも、クラブ選手権などの公式競技で、乗用カートに乗って良いのはキャディーのみで、プレーヤーは歩いてラウンドする決まりになっている所があります。しかしそれは、昔の慣習が残っているのです。

プロのトーナメントやアマチュアのトップレベルの競技では、現在でも歩いてプレーする規則が適用されています。

21世紀になったばかりの頃、ケイシー・マーチンという先天的に足に障がいを持っているプロゴルファーがプロゴルフ協会と米ツアーを相手に、カートの使用を認めて欲しいと、数年にわたって裁判で争ったことがあります。マーチンが勝訴しましたが、結局その権利を振りかざして、ツアーに参戦することはありませんでした。

現在、トーナメントの予選などではケースバイケースでカートに乗ることが認められていて、、乗用カートに乗ってプレーをするプレーヤーもいます。

障がいのある人を差別するのではなく、乗用カートなどで補助されることで有利不利が生まれて、競技としての本質を揺るがしてしまう可能性があるため、規則で制限をする必要があるということなのです。

現在のゴルフ規則

  • 正規のラウンドは歩きという条文はなく、主催者が目的や状況に応じて決定することができる。

長くなりましたが、2023年の時点では歩きのラウンドも乗用カートのラウンドも、ゴルフであるというのが質問の正解ということになります。

余談ですが、僕は膝の加齢性骨異常などで長時間歩くことができません。一昨年、乗用カートがない歩きのみのゴルフコースでハーフプレーしたところでギブアップして以降、迷惑をかけるので歩きのゴルフは遠慮することにしました。

だから、わかることがあります。歩きのゴルフは王道のゴルフで、その位置付けは基本の基本です。歩いてゴルフをすることは、ゴルファーの誇りです。威張るようなことでも、他者へ強制することでもなく、自分だけで秘かに胸を張る誇りなのです。

とはいえ、現在のゴルフシーンでは、乗用カートを使ってゴルフをすることが普通であり、歩きのゴルフをしないままゴルフ人生を終えるゴルファーのほうが圧倒的多数になっていく流れは、誰も変えることができないのも事実です。

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ゴルフ場,手引きカート

僕は28歳から約10年間、高校ゴルフ部のコーチをしていました。合宿になるとバッグを担いで、部員たちと一緒にラウンドをしていました。顧問やお手伝いできていた教師たちも興味を持って、担いでゴルフに挑戦することがありましたがハーフで懲りて、その後は乗用カートでプレーしていました。

ジュニアゴルファーだった頃から、担ぎでプレーすることに慣れているから可能だったのだと思いますが、体力的な意味では究極のゴルフです。ハーフを歩くのがやっとになってしまった今、あの頃が懐かしくて、どうにかして戻れないのか、と虚しく思うことがあります。

担ぎに向いている軽いバッグを使って、最小限の荷物で、更に使わないクラブを外し本数を減らして、負担を減らす工夫が担ぎのゴルフを快適にするコツです。目標を線で結ぶように最短距離を進んでいくので、意外に歩く距離は短くなります。

実は、多くのコースが担ぎでのプレーを原則禁止しています。熟練のプレーヤーがいないと危険なことがあることや、乗用カートの使用を前提にコースのルーティングがされているので、時間がかかりすぎてしまうケースがあるからです。

似たようなプレースタイルに、手引きカートでのプレーがあります。減ってきていますが、河川敷のコースなどで、現在でも経験することができます。自分のバッグ1本を乗せる二輪車や三輪車の手引きカートは、引いたり押したりして使うのですが、迂回路があったりして慣れないとかなり疲れます。

日本の場合、歩きのゴルフを奨励されたり、強制されるコースは多く見積もっても数パーセントしか残っていませんが、そのほとんどはキャディー付きのゴルフになります。

1ラウンドで7キロから10キロほど歩くことになります。健康のためには歩くゴルフが最適だということで、医師に勧められたというゴルファーも多いです。しかし大概は、逆にそれ以外のストレスがかかってしまうことも多く、結局続かなかったというオチがついた話はゴロゴロ転がっています。

電動カート

4バッグを乗せて運べるカートが、電動カートです。
色々な種類があって、一部には立ち乗りで一人乗りのカートもあります。

乗用カート

これもたくさんの種類があります。まず、エンジンで動くカートと、モータで動くカートに分かれます。

● 電磁誘導式乗用カート
初めてコースに行ったときに、乗用カートが無人で走っていて衝撃を受けた、という笑い話で出てくるのは、電磁誘導式乗用カート。地面に埋め込まれた導線の上を走る仕組みになっていて、ほとんどがリモコンで動くようになっている。

速度は設定できるが、比較的ゆっくりめ。遊園地のアトラクションのように、運転免許なしで扱える気軽さがある。

しかしメンテナンスにお金がかかるのと、雷などで導線が切れたとき、人が運転するモードに切り替えて運用するのが一筋縄ではいかない、という面もあるそうだ。

● 自分で運転するタイプの乗用カート
自動車の免許がないと運転できなかったり、飲酒運転は当然ダメだが、自由度が高いのでコース内に乗り入れ可能というサービスをしているコースもある。

● 二人乗りのカート
最近は減ったが、ひと昔前までは二人乗りのカートもたくさんあった。

● 一人乗りのカート
電動の車椅子を改造したような一人乗りのカートもあまり多くはないが、存在する。

個人的には、この一人乗りの乗用カートの進化が、今後の日本のゴルフがどうなっていくかという鍵を握っていると考えています。

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ゴルフ場,乗用カート

乗用カートの運転には、他者への心配りや観察力がダダ漏れします。
「彼はゴルフもだけど、運転のセンスもないね」
本人を前にして言いづらいことですが、ゴルフは残酷にもそういう部分を率先して丸裸に剥き出すのです。心配りや観察力は、一言でいえばセンスです。

カートの動きは、センスがモロに見える部分です。遠くからでも前後の組からも、その動きがよく見えます。例えば、気を遣っているつもりでカートを前にどんどん進める人がいます。迅速なプレーをするためのハウツーとして、推奨するメディアもいます。

後ろの組はカートが遙か前に行けば、もう打っても大丈夫だと判断してボールを打ちます。見え辛いところに人が残っていると、簡単に打ち込み事故が起きてしまうのです。

センスあるゴルファーは、カートを動かして後ろが打ってきて危ないと判断したら、カートを前に進めません。打球事故は起きません。その後のプレーが迅速なら、スロープレーにもなりません。センスは心配りと観察力なのです。

乗用カートが一気に普及してからの話

約20年ぐらい前に、日本では乗用カートが一気に普及しました。それまで歩きのゴルフが当たり前だったので、多くのゴルファーは戸惑いました。僕もその一人でした。

歩きでリズムを作ったり、集中する方法を身につけていたのです。カートに乗らないでプレーする、というハウツーが流行しました。

また、新しい文化が急激に広まるときには、真剣であるほど滑稽なエピソードが生まれるものです。

上手い人はカートに乗らないのでたくさん打つ、余裕がない人がカートを運用します。カートを忘れて全員が前に行き、慌ててカートまで戻って、結局カートを待つ時間が増えてスロープレーになったとか、振り返ると頭の悪いことをたくさんしました。

余裕がある上手い人が、原則としてカートを担当するのが速くプレーできて快適なのだとわかってからは、カートのゴルフでもリズムを作れるし、集中力も維持できるようになりました。

色々なスタイルのゴルフがありますが、それぞれに長所と短所があり、相性もあると思います。しかし、現実的には、自らが選択できることはほとんどありません。受け入れて、その中で最善を尽くすのがゴルフなのです。

カートを上手に使っているゴルファーは、才能を発揮しているのではなく、試行錯誤の末にベターを集めたという努力の成果です。諦めずに、より良い状態を作り出そうとする心持ちは、ゴルフのスコアにも反映されます。

その一方で使い方が下手なゴルファーは、反省せずに進化しないから下手なのです。つまり、カートを扱うセンスやハウツーのレベルが高いゴルファーは、スコアも良いゴルファーというわけです。

卵が先か、鶏が先か。乗用カートを上手に利用してスコアもアップできる相乗効果は、確実にあると僕は考えています。乗用カートでゴルフをするのが当たり前になったことが、令和のゴルフブームの一因になったことも事実です。

歩きのゴルフよりも、乗用カートのゴルフのほうが、同伴者と一緒にいる時間も長くなり、より親密になるからです。そして、乗用カートは僕を含むオールドゴルファーのゴルファー寿命を延ばしてくれました。約20年前までは、歩けなくなったらゴルフは引退というのが常識だったのです。

ゴルフ用具というのは使い熟して、初めて自分のものになります。乗用カートも広い意味では、ゴルフ用具です。

スマートに乗りこなして、颯爽とゴルフをするのが、ゴルフを自分のものにする第一歩だと考えることができる時代に生きていることに感謝しながら、ゴルフを楽しむのが正解なのです。




篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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