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日本の聖地100選|鹿児島県いぶすきゴルフクラブ開聞コース|井上誠一の傑作

2018/10/15 ゴルフトゥデイ 編集部

名匠・井上誠一が、当初は設計を断り続けたという名コースが、九州の最南端にある。それが鹿児島県にあるいぶすきゴルフクラブ開聞コースだ。一見してその土地に魅せられ、知見を尽くした結果、世界的な18ホールが誕生した。

名称・井上誠一の傑作、鹿児島県いぶすきゴルフクラブ

18番パー5のグリーン左前面をガードするアリソン・バンカー。打ち上げの難ホールでツーオンを狙うプレーヤーには難物のハザード、これにどう対処するか。

「いぶすきゴルフクラブ 開聞コース」は、九州の南端にある薩摩半島の、その最南端に位置する。そこに聳える標高924mの開聞岳(“薩摩富士”と呼ばれる)の二合目、約50万坪の敷地に雄大に横たわる18ホールのチャンピオンシップ・コースで、東に大隅半島と鹿児島湾、南と南西方向に東シナ海を望む絶景は息を呑む。

コースは日本第一の設計家、井上誠一の傑作。コース建設は、戦前の大正期から昭和期にかけて鉄道敷設に不可欠の枕木の供給で財をなし、戦後は、この地域の交通事業で地位を固めた岩崎與八郎によって企画された。トーナメント用コースを頭に描き、何度も井上に接したが、場所が東京から遠いという理由で、断られ続けた。しかし、“一度、現地を見てもらいたい”の懇願が功を奏した。現地を見て素材の良さに魅せられた井上の態度は一変、設計を引き受けることとなり、この名コースの誕生となった。

この話はヒュー・アリソンの「廣野ゴルフ倶楽部」設計を思い起こす。アリソンは「東京ゴルフ倶楽部」の招聘で訪日したが、これを知った関西のグループが、彼に新コース設計を依頼。当初は気が進まなかったが、地形の良さに旺盛な設計意欲が沸き、世界的な名コースが生まれた。

井上はコースで最も重要な要素である“ハザード”に、バンカー、窪地、マウンドに加え、立体感を持った樹木、原地形の形状、クリーク、池といったウォーター・ハザード、さらにラフ、フェアウェイの起伏まで、巧妙に活用する。ここでは山からの強風“開聞降ろし”と海からの“海風”が加わって、一段と難しさを増し、本場リンクスの雰囲気を醸し出す。

同じシーサイドでも、井上の名作「大洗ゴルフ倶楽部」とは感じが違う。大洗GCが松林に囲まれた平坦な林間コースなのに対し、ここ“開聞コース”は結構な起伏の立体感があり、丘陵コースの趣を持つ。加えて、周りの景観が美しい。

スタートの1番パー4は打ち下ろしでストレート、気分良い出だし。最初のパー3は4番で現れる。左奥に深く捻じれたグリーンで、前後、左右4つのバンカーがガードする。続く5番はバック・ティから638ヤードと長く、これにフェアウェイの起伏が加わり、アプローチはやや登り。コースの開場が1968(昭和43)年、これを考えると、特別に長いホールとして設計されている。

また、設計段階からトーナメントを意識しただけに、最終4ホールが素晴らしい。15番パー4は、ティ・ショットの落下地点を、右に大木、左にバンカーと異質のハザードで固め、グリーンは受けているが傾斜が厳しく、下りのパットは問題。16番パー4は打ち下ろしの右ドッグレッグ、曲がり際の外側(左)に2つのバンカー、ティ・ショットの方角が問われる。17番パー3は池越え、その池がグリーンの左前半に絡む。最終18番は距離のないパー5、2オンを誘うが、グリーン手前の深いバンカーが罠となる。

もう一つの特徴はグリーンにある。ベントのワン・グリーンで、18ホールの平均面積が800㎡(約240坪)と大きく、ホール毎に違った起伏が折り込まれ、どれも一筋縄ではいかない。なお、コースは長年、プロゴルフ・トーナメント、“カシオワールドオープン”の会場となったことから知名度は全国的に高い。

文/大塚和徳

●いぶすきゴルフクラブ
・コース所在地:鹿児島県指宿市開聞川尻6660
・URL:https://www.iwasakihotels.com/

GOLF TODAY本誌 No.549 129ページより