感情的なハットンは実は冷静! 全米オープン級に難しかったベイヒルを制した逆境の一打
一流キャディから人気レポーターへ! 世界の杉ちゃんが診る今月の一打
プロキャディー・ゴルフ解説者の“世界の杉ちゃん”こと、杉澤伸章氏が「アーノルドパーマー招待」最終日最終組のティレル・ハットンのレポートをお送りします。
杉澤伸章(すぎさわ・のぶあき)
1975年7月5日生まれ。02年から丸山茂樹の専属キャディとして米国ツアーを転戦。13年には宮里優作のキャディを務め、「日本シリーズ」での初優勝にも貢献。現在はゴルフ中継番組のレポーターとしても活躍。
感情的なハットンは実は冷静! 全米オープン級に難しかったベイヒルを制した逆境の一打
今、PGAツアーは中止状態になっています。そういう意味では、中止直前に開催された「アーノルドパーマー招待」で、最終日最終組のティレル・ハットンのレポートをできたのは幸運でした。
今年はいつものベイヒルではありませんでした。難易度が極端に高くて、グリーンも硬くて速い。まるで全米オープンのようなコースセッティングでした。優勝したティレル・ハットンも最終日は2オーバーと苦しい戦いになりました。元々、ハットンは怒りっぽい性格で、試合中でも感情を爆発させることが多い選手。でも最終日のショットマネジメントに関してはすごく冷静でした。
欧州ツアーで4勝!リンクスの名手!
リンクスの名手でセントアンドリュースで開催された「アルフレッドダンヒルリンクス選手権」を16年と17年で連覇。18年も2位という相性の良さを見せている。
イライラしてもセルフコントロール!
優勝インタビューでは「イライラする場面もあったが、セルフコントロールが上手くいった」と語っていて、メンタル面を勝因に挙げていた。
アンダーパーはわずか4人!
優勝スコアが4アンダーで、4日間を終えてアンダーパーだった選手は4人だけ。強風が吹いた3日目は歴代3位のハイスコアを記録した。
英国出身でリバプールのファン!
イングランド出身のハットンは、同国のサッカーチームであるリバプールの大ファン。試合中の熱いファイトスタイルが共通点!?
前半9ホールを終えた時点ではハットンは2位に4打差をつける圧勝ムード。しかし11番でダブルボギーを叩くと、1打差になって13番を迎えます。その13番でもティショットをミスして、2打目はトラブルショットに近い右のラフ。グリーンを狙うライン上を木の枝が邪魔している厳しい状況でした。しかしハットンは、この2打目で落ち着いて木の上を狙ってパーオンに成功し、パーセーブしました。もう1つのピンチは2打差で迎えた16番パー5です。ここで1打目を右のバンカーに入れると、2打目のレイアップもミスをしてラフに。さらに3打目ではグリーンオーバーして、ピン奥のバンカーにつかまってしまいます。しかし、トラブル続きの中でバンカーショットは堅実に寄せて、粘りのパーセーブ。なんとか1打差で逃げ切り優勝を達成しました。
18ホールを帯同して感じたのは、短気でキレやすいと言われるハットンですが、ルーティンはすごく静かで動きが少ない。ミスの直後にはイライラしても、あのルーティンで冷静さを取り戻しているように見えました。
写真/Getty Images
GOLF TODAY本誌 No.575 119ページより