コロナ感染も乗り越え復活! ハリス・イングリッシュを支える懲役13年キャディ“E”
佐渡充高のテレビでは語れなかったPGAツアー
ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.581/123ページより
●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。NHKゴルフ解説者。
逮捕されても、カルカベキアが信じて支えたキャディ、エリック・ラーソンとは
ツアー2勝のハリス・イングリッシュ(31歳)は今季V字復活。昨季はツアー8年目で初めて149位とシード枠を外れたが、今季はトップ5に4回の大活躍。6月にPGAツアー5人目のコロナ陽性者となりトーナメント離脱を余儀なくされたが、それでもトップ30の最終戦に進出し自己最高位のシーズンにした。
イングリッシュに情熱と自信を与えてきたのは、懲役13年を経験したキャディのエリック・ラーソン(59歳)。エリックの頭文字から通称“E”と呼ばれている。
“E”はジュニアで活躍し79年18歳の時に実力を試そうとフロリダ州へ転居。同州ベアレイクスCCでプレーした際にスター選手ケン・グリーンとマーク・カルカベキア(89年全英オープン勝者)とプレーする機会に恵まれた。彼らのプレーに衝撃を受け選手ではなくキャディになろうと目標を変えた。最初はグリーンに起用され、その後、カルカベキアのキャディに。95年ベルサウス・クラシックで優勝を経験し“E”の生活はノリノリに。
その頃、友人の依頼でコカイン密売人と接触し入手。「少し小遣いが欲しかった。自分で使用したことはなく生活も良くならなかった」。密売組織の人物が捜査当局に“E”の名を漏らし逮捕。懲役13年、罰金2万5千ドル(約265万円)の刑が確定した。
カルカベキアはまさかの事態に驚いたが“E”を信じ支え続けた。度々面会に行き「出所したらまた頼む」、それほど“E”の人柄と実力を恋しがった。
“E”はカルカベキアの思いに応えようと服役中に大学の通信教育で経営学の学位を取得。スポーツにも取り組み、姿もスリムに。2005年12月20日、3年も早く刑期を終え社会復帰を果たした。
カルカベキアは早速06年3月ホンダ・クラシックから起用し名コンビの復帰戦と話題に。41位に終わったが“E”は「夢のよう」と語った。1年後の07年3月ポッズ選手権で優勝を飾ったが、カルカベキアは50歳目前でコンビ解消。すると若手選手から“E”へ次々にオファーが舞い込み、翌08年アンソニー・キムと2勝、ライダー杯でも貢献をした。
2010年にはジェフ・オーバートンともライダー杯出場。ヘンリック・ノーランダーとのコンビを経て、17年5月からイングリッシュのキャディに就き、現在3勝目に挑戦中。来季はイングリッシュの“E”とダブル“E”コンビの勇姿が見られるかもしれない。
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