ダスティンVで気になる、世界ランキング1位がメジャーに勝つ確率。
「いまどきツアーをデータ斬り!」国内外のゴルフツアーをあらゆるデータで一刀両断 Vol.54
今年のマスターズを制したのは世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンだった。では、世界ランキング1位の選手がメジャーに勝つ確率はどれくらいか。調べると、苦闘の歴史が明らかになった。
ダスティンVで気になる、世界ランキング1位がメジャーに勝つ確率。
世界ランキングが始まったのは1986年のことである。以降、今回のマスターズまでメジャーは139回開催されている。うち、世界ランキング1位の選手が優勝したのはダスティン・ジョンソンで15回目。順位別では最も多く、勝率は10.8%だから悪くない。十分に「世界ナンバーワン」の責任を果たしているのではないだろうか。
ただし、ある条件で分けると状況が一変する。タイガー・ウッズか、ウッズ以外かという条件だ。
ウッズが世界ランキング1位でメジャーに臨んだのは55回ある。うち、優勝したのは11回。勝率はちょうど20%となる。かなり高い数字だ。
一方、ウッズ以外の選手では84回でわずかに4勝。勝率は4.8%にまで急降下する。つまり、世界ランキング1位の勝率10.8%はウッズ1人で押し上げているようなものなのだ。
世界ランキング1位の選手が初めてメジャーを制したのは1991年マスターズのイアン・ウーズナムだった。翌年のマスターズを制したのも1位のフレッド・カプルスである。
1990年代終盤から10年以上、世界ランキング1位はほぼウッズが占める形となり、次にウッズ以外の世界ランキング1位が勝つのは2014年全米プロのロリー・マキロイと、かなりの時間を要した。その間、ウッズ以外の世界ランキング1位は実に「35連敗」を喫していたのだ。そしてマキロイの次が今回のジョンソン。1位選手の連敗を「22」で止めた。
ジョンソンは今回が1位として11回目(うち1回は欠場)のメジャーだった。過去、2位と3位が1回ずつあったものの、予選落ちが2回あり、決して満足いく成績ではなかったはずだ。
世界ランキング1位でメジャーに勝てなかったといえばグレッグ・ノーマンの名が浮かぶ。実に24回も「世界ナンバーワン」で挑みながら2位が最高。メジャー2勝はともに1位ではなかった時である。
世界ランキングができてからメジャーに6勝しているニック・ファルドも1位としては5戦未勝利。あれほどメジャーに強かった印象があるファルドも、「世界ナンバーワン」としては勝てなかったのだ。最近の選手でメジャーに強いといえばブルックス・ケプカだが、彼も4勝すべてが1位ではない時。1位としては2戦して未勝利である。
ウッズでさえ1位として初めて勝ったのは9回目の挑戦だった。世界ランキング1位という看板はメジャーでは重圧になってしまうのだろうか。
ちなみに、順位別で1位の次に多いのが3位で10勝、3番目が4位の7勝である。2位は6勝で、8位や9位と同じ数だった。
世界ランキング1位のメジャー優勝
選手 | メジャー大会 |
---|---|
イアン・ウーズナム | 1991年マスターズ |
フレッド・カプルス | 1992年マスターズ |
タイガー・ウッズ | 2000年全米オープンなど11勝 |
ロリー・マキロイ | 2014年全米プロ |
ダスティン・ジョンソン | 2020年マスターズ |
文・宮井善一
1965年生まれ。和歌山県出身。スポーツニッポン新聞社でゴルフ記者を8年間務め、2004年にフリーのゴルフライターとして独立。ゴルフ誌などに執筆のほか日本プロゴルフ殿堂オフィシャルライターとして活動している。元世界ゴルフ殿堂選考委員。
撮影/マスターズ・オフィシャルサイト
撮影トーナメント/2019マスターズ
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