タイトリストVG3ボール打ってみた! タイトリスト初のマットカラーもラインナップ
飛びとソフトな打感が魅力? 飛ぶと噂のニューボールの実力はいかに

タイトリストからニューボールが発売された。例年より早くプロV1の新作か? と思われたが、その正体はプレミアムディスタンスボール「タイトリスト VG3」だった。ちょっと肩透かしをくらった感はあるものの「今度のVG3は飛ぶ!」という噂が聞こえて来た。
それならば、ということで「ニューVG3ボール」をタドちゃんこと田所嵩瑛(たどころ・たかあき)プロに試打してもらった。
ドライバーの飛距離は+10ヤード! 曲がりは半分以下!?
ディスタンス系にしては軟らかい! というのが第一印象

ドライバーからパターまですべてのクラブで試そうと言うことで、実際に「VG3ボール」でラウンドした。スタートホールのティショットを打つ前にティーイングエリアで、ドライバーのフェースに“コンコン”とボールを当てた時の第一印象は「思いのほか軟らかそう」というものだった。
ドライバーでの第一打はストレートボールでフェアウェイセンターへ! その後の3ホールもドライバーでティショットを打ち、このタイミングでドライバーでの使用感を聞いた。
「スタートホールでティショットを打つ前にコンコンやった時から“やわらかそう”と思っていましたが、インパクトでボールがつぶれるので、やわらかく感じます。2ホール目、3ホール目は少しフェード気味に打ちましたが、いつも使っているスピンタイプボールに比べて球の曲がり幅が半分かそれ以下でしたね」と打感と曲がりの少なさを評価。
ドライバーショットでは曲がる気配なし

肝心の飛距離はどうだったのか? 「3ホールとも少し軽めに振っていましたが、普段より10ヤードくらいは飛んでいました。飛びはもちろんですが、アマチュアゴルファーにとっては特に“曲がり”が減ることのメリットも見逃せないと思います」とタドちゃんは言う。さらに、インパクトでボールがつぶれるので、球の打ち出し方向をコントロールしやすく、球のつかまりやすさも良くなるとも話してくれた。
ディスタンスタイプボールの売り文句は大体「飛んで曲がらない」というものだから、ドライバーでのVG3の評価は当たり前の結果ではあるのだが、売り文句に偽りなしということだ。では、ドライバー以外ではどうだったのか?
UTとアイアンでの感想だが「UTでは球の打ち出しが高かったのが印象的です。曲がりが少ないのはドライバーと同様ですが、特にアマチュアゴルファーはFWやUTで球が上がり切らない人が多いので、このボールを使えばFWやUTがやさしく感じるはずです」と、飛距離ではなくショットがやさしく感じるという意外なメリットを教えてくれた。
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弾道の高さでUTは“やさしさ”が得られ、アイアンは“止まり”が得られる。
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FWやUTアイアンでは、球の高さがメリットになる
アイアンではどうだったのか? 飛距離は出てもスピンが減って止まらないのではないかと言う問いに対して「アイアンでのキャリーは1/2番手くらい伸びる感じです。たしかにスピンも少し少なくなる感触なのですが、球の高さが高くなるから、高さでちゃんと止まってくれます」という。キャリーで飛ばしやすくなる分、池越えや谷越えのショットで威力を発揮しそうだ。
飛んで曲がらず、打感も軟らかいのはプレミアムディスタンスボールだから
ウェッジとパターの試打評価の前に「プレミアムディスタンスボール」と普通のディスタンスボールとはどこが違うのか? を確認しておきましょう。
ディスタンスボールは名前の通り“飛距離性能”を重視したボールということだが、これにどんな“プレミアム”がついているのか? を理解するために一般的なボールの特性を知る必要があります。

ボールの硬さを示す指標のひとつに「コンプレッション」があります。ボールに一定の加重を加えた時にどれくらい変形するかを示す数値ですが、コンプレッションの数値が大きいほど“硬く”小さいほど“軟らかい”と言えます。また、インパクトでのボールのつぶれが大きいほど“低スピン”になり“飛ぶ”弾道が得やすいものの、ボール初速は低くなります。

通常はボール初速とスピン量はトレードオフの関係にあると言えます。さらに、この関係に打感も加わります。遠くまで飛ばすためには、高初速・低スピンが有利なので、このトレードオフの関係を何とかして崩そうというのが“プレミアム”ディスタンスボールなのです。

プレミアムディスタンスボールである「VG3」は3ピース構造でこれを達成しています。コアを2層構造にして外側のコアより内側のコアを軟らかくすることで、ボール反発性能は落とさずに、ボールの変形量が大きいドライバーショットでは低スピン・高初速とソフトな打感が得られ、ボールの変形量が小さくなるショートアイアンやウェッジではスピンがかかる構造です。
2ピースボールは初速とスピンと打感の中から二つを犠牲にして、どれか一つの性能を優先しなければならないのに対して、3ピース以上の構造なら、すべての性能を都合よく備えることが出来るわけです。これが“プレミアム”というわけです。当然2ピースに比べれば価格は高くなりますが、飛ばす為にドライバーを買い替える、スピンの為にウェッジを買い替える出費より遥かに低い投資額で済むと言えます。

打感はしっかりだけど硬くは感じない、スピンも十分
試打評価の最後はウェッジとパター。パターの評価を先に紹介すると「スピンタイプボールより打感は“しっかり”したものになりますが“硬い”という感触ではありません。また、昔のツーピースボールは弾きが強くて“コロがり”過ぎることがありましたが、それもなく、タッチも合わせやすく感じました」ひとことで言えば、パターでは違和感ゼロ!
ウェッジの打感とスピンは「スピンタイプボールよりスピンは少なくなりますが、ピッチエンドランで打つ限り、全く問題ありません。打感はパターでの評価と同様です」というから、もともと“スピンを掛けて止める”打ち方をしていないアマチュアゴルファーにとっては全く問題ないと言えるだろう。
VG3ボール試打評価まとめ
・ドライバーは+10ヤード、アイアンは
1/2番手くらい飛ぶ
・すべてのクラブで硬さは感じず
ドライバーやFW、UTでは軟らかい
・ドライバーショットの曲がりが減る
・アイアンショットは高さで止まる
・FW、UTは高打ち出しでやさしく感じる
・ウェッジやパターで違和感なし
総合的に見て、アマチュアゴルファーにとってデメリットは見当たらない。唯一2ピースボールと比較して価格が高くなるという面はあるが、得られるメリットから考えれば決して高くはないだろう。

SPEC
●構造/3ピース
●カバー/高弾性フレキシマーハイスピードカバー
●ディンプル数/312個
●カラー/レインボーパール、イエローパール、マットグリーン
●価格(1ダース)/オープン(編集部調べ実勢価格:5000円+税)

試打テスター
田所嵩瑛(たどころ・たかあき)
1998年生まれ、茨城県出身、サザンヤードCC所属。小学6年でゴルフを始め、2016年研修生に。2019年プロテストに一発合格を果たした、気鋭の新人プロ。
協力/サザンヤードカントリークラブ
撮影/相田克巳
取材・文/大塚賢二