1. TOP メニュー
  2. ゴルフ知恵袋
  3. ゴルフスイングに美しいフィニッシュは必要なのか?

ゴルフスイングに美しいフィニッシュは必要なのか?

ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】最終回

2021/04/29 ゴルフサプリ編集部

国内外で収集したゴルフスイングに関する最先端情報を「Jacobs3D」アンバサダー、ゴルフリサーチャー「タスク」が独自の視点と考察を交えてお届けします!

GOLF TODAY本誌 No.587/126〜127ページより

身体の動かし方は千差万別フィニッシュも然り?

PGAツアーの一流現役選手のスイングのフィニッシュは美しい。ほとんどのプレーヤーが力みの感じられない安定したフォルムでフィニッシュをとります。よって、我々が美しいフィニッシュを目指してスイングをつくりあげることは大きなテーマだと感じます。ただ一方で、ゴルフスイングの目的はボールに正しいエネルギーを与えることに過ぎないとすれば、インパクトまでが肝心で、それ以降フィニッシュまでは本質的に重要ではないとも考えられます。

Jacobs3Dはグリップを通じてゴルフクラブに与える3次元キネティクスエネルギーを解析し、物理系であるゴルフクラブをどう正しく扱うかを研究しています。そこにはゴルフクラブの正しい動かし方があり、スイングはあくまでもそれを所与として構成されなければいけないという厳粛な事実が存在します。よって、ゴルフスイングにおいてはあくまでもゴルフクラブが「主」であり、個体差がある身体側の動きは「従」、身体の動かし方は千差万別、プレーヤーにより自由度があって然るべきと考えます。

フィニッシュはつくるものではなくつくられるもの

効率的なスイングとは、一義的にはゴルフクラブの重心を管理してインパクトまで正しく腕を振ることであり、身体のポジショニングそのものではありません。スイングは二重振り子であることから、首の頸椎あたりの支点管理をしなくてはいけない。その上で遠心力を最大にかけてヘッドの描く円弧の曲率を最小にし長い安定したインパクドゾーンを得ます。丹田のあたりにあると言われる身体の重心はそのプロセスで移動し続けます。

地面にあるボールに対して下へエネルギーを出力するが、ターゲットは横方向にある複雑な関係性の中で、最も大切なインパクトではクラブの進行ベクトルと身体の方向ベクトルは合致する。その際に骨盤は内旋し、左軸を確保しながら身体重心は若干右に残り右足で地面を押せる状況になるはずで、その後フォローにかけては左に移動していく。Jacob3Dの身体重心の位置データはそのプロセスを明示しています。

重心とは一言で言うと物理系のバランスポイントです。よって、プレーヤーは1秒で終了するスイングで複雑なアクションをこなしていますが、実態的には「身体のバランスをとっている」に過ぎないのです。インパクトは切り返し以降グリップに与えたエネルギーを最大にボールに伝達させることを目的にするので、インパクト以降のフォローからフィニッシュはゴルフクラブに残された残余エネルギーの解放プロセスということになります。その際、プレーヤーは自分の身体の重心と、身体外にあるクラブの重心の位置関係のバランスをとりながら、インパクト後は単にクラブの重心が動く方向へ身体は自然と回されていきます。

最も重要な「クラブを振る」ことの結果がフィニッシュであり、それはつくられるものであってつくるものではない。美しく見えるフィニッシュは、スイング中にクラブの運動量と身体の運動量が拮抗し、身体がバランスを確保して動かされた結果の姿。一方で、アマチュアに多い「担ぎ上げるような」フィニッシュは身体の運動量がクラブのそれを大きく上回りバランスを崩した状況と言えます。

フィジカルの良いアスリートプレーヤーが正しいエネルギーをクラブに与えた結果が美しいフィニッシュの外観となると考えるのが合理的です。一方で、身体側に制限のあるシニアプレーヤーなどはダウンスイングからインパクトへ身体バランスを確保しつつ正しくクラブを振ることが優先、インパクト以降は多少バランスを崩しながらも残余エネルギーを安全に解放することがテーマとなり、必ずしも美しいフィニッシュの外観になるとは限らない。

つまり、「フィニッシュは目指すものではない」と理解すべきなのです。

ゴルフリサーチャー・タスク
国際金融マンからゴルフリサーチャーに転身。米国のゴルフサイエンス団体Jacobs 3D GOLFのアドバイザリーメンバーであり、日本のアンバサダー。USGTF Teaching Professional、TPI Certified資格を所持。

身体も物理系としてロボット工学的に考察することが可能となります。Jacobs3Dでは、身体を関節を介して繋がる17の骨のパーツに分解し、それぞれの重心とそこにかかる3次元エネルギーを解析する「Alpha Man」というプロジェクトが現在進行中です。そこでは各パーツの重心を合計した身体全体の重心が導き出されその動きについて研究されています。


ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】
←なぜテークバックでインサイドに引いてしまうのか?

Vol.13(前回)へ

シリーズ一覧へ