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なぜテークバックでインサイドに引いてしまうのか?

ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】vol.13

2021/03/30 ゴルフサプリ編集部

国内外で収集したゴルフスイングに関する最先端情報を「Jacobs3D」アンバサダー、ゴルフリサーチャー「タスク」が独自の視点と考察を交えてお届けします!

GOLF TODAY本誌 No.586/124〜125ページより

テークバックでクラブをインに引いてしまいがちな理由

ゴルフクラブを扱うにあたって、重心の管理が重要であるということをこれまで再三強調させていただいてきました。

一方で、アマチュアプレーヤーのテークバックのエラーの代表格に『ヘッドが低くインに引かれていってしまう』現象がありますが、これがまさに重心管理の難しさを物語っています。ここで復習になりますが、ゴルフクラブの重心の位置は、ゴルフクラブを横にしてシャフト上の一点で支えるように指の上に置いた際、バランスがとれるポイントから少しだけズレた空中にあります。重心が管理されたテークバックのプロセスは、シャフト上の重心を感じながら“グリップの中からこぼれないように”切り返しまで運ぶという感覚に近いものとなります。

そして、それを最も効率的かつ完璧に成し遂げている選手の一人が、タイガーウッズでしょう。重心は切り返しまで見事にほぼ直線的に移動します。シンプルで簡単に見えますが、アマチュアプレーヤーがこのようにテークバックをするのは非常に難しいと言えるでしょう。

先端に重いヘッドのあるクラブをグリップにエネルギーを与えて切り返しの高い位置まで上げていくのは、ヘッド側にかかる重力や、プレーヤーが能動的に与えていく直線運動によって発生するローテーションの影響で実に難しい作業となります。アマチュアプレーヤーが往々にしてテークバックを低くインに引いてしまうのは、αフォースというシャフトを若干自分側にリフトさせようするエネルギーを脳がグリップに与えるにもかかわらず、それとともに発生してしまうβローテーションとクラブにかかる重力で、脳が指令を出しているほどヘッドが高く上がらないということが発生するからです。

これを回避するにはβトルクという縦コックの動きを積極的に入れねばなリませんが、実際にはなかなか入れられません。結果、インに低く引かれたテークバックでは、必ずシャフトをある時点からひょいと持ち上げてヘッドを直線的にトップに向かわせることになります。

シャフトを持ち上げてしまうと物理的にはヘッドに回転運動を与えることができず、このようなアマチュアプレーヤーのテークバックのヘッドの軌跡はインに低く引かれた後に急上昇していきます。ゴルフクラブがこうして扱われてしまうと、ヘッドに回転運動を与えることができないどころか、多くの複雑なローテーションを抱えたまま切り返しに向かうため、理想的な右回りのルーピングを開始できません。

支点となる手首が自由ならヘッドは右回りに動いてくれる

PGAプロでもこのようにテークバックをインに低く引いていくプレーヤーがいます。代表的なのはジム・フューリックでしょう。一見すると変則的で振り遅れているようなスイングですが、私が全英オープンで目の前で観たそのスイングは、むしろ全選手の中でも際立って美しかったのです。エネルギーが淀みなくクラブに流れ、その結果ヘッドによりボールが完全に圧縮されて飛び出て行っていました。

なぜ、彼のスイングがそのように観えるのかを考えると、同じようなヘッド軌道でテークバックするアマチュアプレーヤーとの決定的な違いがあることに気がつきます。それは、非常に柔らかいリストを自由に使い、テークバック初期からグリップエンドを引くγ(ガンマ)フォースを主体にエネルギーをクラブに与え、ヘッドを右回りに大きく円運動させているのだと結論づけられます。まさにスイング中のすべての部分でクラブをムチのように使っているということです。

二重振り子であるスイングの第1の振り子の支点(手首)を自由にし続けることの意義が、この美しいスイングから見てとれます。また、ジム・フューリックの特徴的な身体側のスイングフォルムは視覚的には単に付け足しにしか過ぎないことを悟るのです。

ツアー屈指のショット精度を誇るジム・フューリックの「8の字ループ」。変則スイングと言われるが実に美しい。アマチュアにも多い、インサイドへ低くヘッドが引かれるテークバックが特徴だが、その動力はアマチュアのそれとは異なる。

ゴルフリサーチャー・タスク
国際金融マンからゴルフリサーチャーに転身。米国のゴルフサイエンス団体Jacobs 3D GOLFのアドバイザリーメンバーであり、日本のアンバサダー。USGTF Teaching Professional、TPI Certified資格を所持。


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