原英莉花、西郷真央らを輩出「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」を紐解く
【新連載】ジャンボに聞け! ジュニアゴルファーの育て方 VOL.1
「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーセレクション supportedby ISPS HANDA」でジュニアたちのスイングを熱心にみる尾崎将司
通算113勝のレジェンド・ジャンボ尾崎が指導者として注目を集めている。原英莉花、笹生優花、西郷真央と次々にスター選手が生まれているからだ。その秘密を「誰も書けなかったジャンボ尾崎」の著者で、ジャンボとともにマスターズ出場を果たしている愛弟子・金子柱憲が明かす。ゴルフ界を常に牽引する尾崎将司の見つめる未来とは。
GOLF TODAY本誌 No.601/102〜103ページより
「愛情」と「厳しさ」が同居するジャンボの指導
「良い球が打てるのが良いスイングだ」
マスターズが終わった。意外と知られていないが、ジャンボ軍団からは7人もの選手が、この「春の祭典」と呼ばれる舞台を踏んでいる。ジャンボを筆頭に尾崎直道、飯合肇、羽川豊、金子柱憲と東聡、伊澤利光。輝かしい実績の裏に、ジャンボ軍団の持つ競争原理があることも見逃せない。
1989年から1999年まで、男子ツアーの賞金王はジャンボ軍団の「一気通貫」。まさに黄金時代で、軍団内には「戦う集団」と呼ぶにふさわしい厳しさも同居していた。そうした日々の中で磨かれた競争心が、金子をマスターズに導いていく。
✔️金子の証言
春の合同トレーニング中も皆、競争心にあふれていました。そのため言い争いも良くありました。精神的にも結構ぎりぎりの所だったからでしょう。正直つらいと思ったことも良くありましたが、それ以上の充実感があったのも事実です。
私がジャンボ軍団に入って間もない24、5歳の頃、ジャンボの前で「マスターズ出場」を宣言したことがありました。この時ジャンボは「マスターズか、遠いなあ。でも夢というのはあきらめずに追い続けていると、その思いが宇宙の果てに行って跳ね返って戻ってくるんだ。間に合えばかなうかもしれないぞ」と真顔で返してくれました。
それから10年後、1996年に3勝を挙げることが出来て賞金ランキング2位。翌1997年のマスターズに招待され、賞金王になったジャンボとともに出場できることになったのです。大会直前に首を痛めてしまい、初日は帝王ニクラスとのラウンドになりましたが77。2日目も同スコアで予選落ちでした。落ち込む私に、ジャンボは「そんなに簡単に、うまくいくものではない。俺だって10何回来ても、まだうまく行かないんだ。今回は米ツアーに来て、他の試合でも優勝争いが出来たのだから、いいじゃないか」と声をかけてくれました。これもジャンボの、貴重な教えの一つです。
ジャンボ尾崎のジュニア育成
では、ここのところ伸びてきているジャンボ尾崎ゴルフアカデミーの選手たちは今、どのような教えを受けているのだろうか。同アカデミーは1万坪の土地に完備された絶好の練習環境を有効に使えないか、という声を受け、ジュニア育成を目的として5年前に設立された。
ここから原英莉花、笹生優花、西郷真央が出てくる。彼女たちはいかにして成長してきたのか。入門当初からその経緯を知る金子の証言。
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今シーズン開幕戦から10戦5勝と大ブレークした西郷真央はジャンボジュニアの1期生。
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✔️金子の証言
このような環境で練習できる場所は、日本で初めてではないでしょうか。ドライビングレンジは奥行280ヤードあり、グリーン2面とバンカーもあり、あらゆるショットを練習することが出来て、同時にゴルフスイングに必要とされるトレーニング器具や練習クラブもあるわけです。それもジャンボの長年の経験から生み出されたものばかり。
原選手がジャンボ邸に来たのは確か高校2年の頃。
背が高く、手足が長く、すこし華奢な印象でしたが、スイングを目の当たりにしてその躍動感と気持ちいい振り抜きに何とも言えない可能性を感じました。ジャンボから原選手への指導方法も非常にシンプルです。スイングよりも球筋を意識させる練習が多く「良い球を打てるのが良いスイング」というジャンボの原点がここにあります。
ジャンボ尾崎から女子プロが続々と生まれている
全米女子オープンという世界最高峰の舞台で畑岡奈沙をプレーオフの末下し、優勝を飾った笹生はどうか。
ジャンボとの縁はフジサンケイレディスで練習ラウンドを原と一緒にしたことがキッカケ。この時智春氏の目に留まり、ジャンボのもとを訪れている。スイングを一目見たジャンボは「うちの原より飛ぶな。どんな練習をしてきたんだ?」と興味津々でたずねたという。
そして西郷。昨シーズン、あと1歩の所で優勝を逃してきた「最強のシルバーコレクター」は、開幕戦を制すと破竹の進撃を開始。序盤出場10戦で5勝という、春の嵐を巻き起こした。
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✔️金子の証言
笹生選手は、確か一昨年、智春君がジャンボ邸に連れてきたと記憶しています。私もその1、2年前に動画で彼女のスイングを見て、驚きました。
まるでローリー・マキロイを彷彿とさせたからです。ジャンボ邸に来てからもパワフルなスイングの中に体幹の強さを感じます。
西郷選手は、ジャンボアカデミーの一期生。あまり目立つタイプではありませんでしたが、黙々と練習をするタイプ。彼女のスイングは非常に安定感があり、再現性の高さを感じます。
今後もジャンボ尾崎ジュニアたちに注目
ジャンボの下では、ジュニアたちがこの3人に続くべく、日々トレーニングに汗を流している。
このアカデミーから何人のメジャーチャンピオンが生まれていくのか。期待は膨らむばかりだ。次回からは、ジャンボがほどこしているジュニア指導の根幹部分を、金子が紐解いて行く。
金子柱憲がジャンボの真意を語る
金子柱憲(かねこ・よしのり)
1961年3月4日生まれ。東京都出身。日大卒。
14歳でゴルフを始め、アマチュア時代は日本オープンベストアマ、関東学生優勝。1982年の韓国オープンではプロを抑えて優勝。1983年プロ入り後、ジャンボ軍団入り。91年に関東オープンで初優勝。ツアー通算6勝。
1997年に師匠のジャンボ尾崎とともにマスターズに
出場した金子柱憲。練習ラウンドでの一コマ。
取材・構成=日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗 撮影・相田克己
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