山下美夢有の「ピンに絡むアイアン」と「パットの決め打ち」がスゴイ!
人気コーチ、大西翔太は見た!この女子プロのココがスゴイ!|VOL.1
プロコーチであり帯同キャディとしても青木瀬令奈をサポートする大西翔太コーチ。その大西コーチが22年のシーズンを通して鮮明に記憶に残ったシーンを紹介するシリーズ。間近に見てきたライバルたちのスイングやプレーぶりを、連続写真を使ってわかりやすく解説。第1回は山下美夢有の名シーン。
取材・文/三代 崇 写真/相田克己、山之内博章、渡辺義孝
取材トーナメント/2022TOTOジャパンクラシック、樋口久子 三菱電機レディス、伊藤園レディス、JLPGA選手権リコーカップ
22年、大きく飛躍した山下美夢有のアイアンショットとパッティングに注目
22年のシーズンのベストプレーヤーといえば山下美夢有選手に尽きると思います。カラダが小さいからドライバーは飛ぶ方ではないのですが、セカンドショットの正確性がすごく高い。特にアイアンショットの精度は抜群です。パーオン率1位の成績も当然でしょう。コレはスゴイ! と驚嘆させられたのはワールドレディスサロンパスカップです。その試合を振り返ってみると……。
初日に64の好スコアでロケットスタートした山下選手を青木瀬令奈選手が追う展開となりました。3日目と最終日に山下選手と同じ組でプレーしていて、とにかくほとんどのショットでグリーンに乗るんです。しかもピンにどんどん絡んでくる。開催コースの茨城ゴルフクラブはグリーンのコンパクションが硬くてボールが止まりにくい上に、グリーンを外してしまうとアプローチが難しい。女子ツアー屈指の難コースで知られるのに、涼しい顔でプレーしているという感じでした。
最終日に青木選手が68のスコアで追い上げましたが届かず、通算9アンダーでフィニッシュ。山下選手は通算12アンダーで初のメジャー制覇、しかも完全優勝でした。この1勝が22年の大飛躍につながったのでしょう。最終戦のJLPGA選手権リコーカップの最終日は青木選手が先にホールアウトした後に山下選手のプレーを観ましたが、勝みなみ選手とのプレーオフのセカンドショットも見事でした。何しろ勝負に賭ける執念というか、勝負強さは光っていました。
山下美夢有の精度の高いアイアンはテークバックの形に秘訣がある
さて山下選手のスイングですが、連続写真で見てもわかるようにとにかく軸ブレがないんです。上体をラクにさせて下半身をどっしりさせたアドレス。そして腕をまったくネジらないテークバック。両手が右腰の高さに上がったハーフウェイバックの写真を見てください。
アドレスの前傾軸に対してカラダをレベルに回転し、左肩がアゴの下にスムーズに入っていきます。フェースの向きは斜め下を指していますが、実はこれがスクエアです。腕を右側にネジってフェースを開いたり、クラブをアウトサイド上げすぎたりするとフェースの向きがスクエアに保てなくなり、トップのポジションが安定しない、ダウンスイングの軌道がブレる、などの悪循環を引き起こしやすくなります。
女子プロのスイングはあまり参考にならないと思われがちですが、そんなことはありません。カラダの柔軟性はマネできなくてもアドレスのバランス感覚やテークバックの形はよいヒントになるはずです。ゴルフスイングはインパクトやフィニッシュも重要ですが、スイングのスタートのテークバックを間違えないことが肝心。
うまく当たらない、方向が安定しないという人は一度テークバックをチェックしてみてください。ただしテークバックの形を手で作らないこと。アドレスの姿勢からお腹を右に回すイメージでテークバックしましょう。山下選手のように大きな筋肉でクラブを始動させるのがコツです。
カップに必ず届かせるタッチで「決め打ち」するのが山下のパット
もう一つ、山下選手のスゴさをまざまざと見せつけられたのはミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンの初日です。青木選手と菅沼菜々選手と同じ組でのプレーでしたが、この日の山下選手は60というツアー新記録達成。12バーディ、ノーボギーでパット数は何と22パット。パーオンホールの平均パット数が4位ですからパットが巧いのは当然とはいえ、長いパットも短いパットも全部入ってしまうのは驚愕のひと言。1ラウンドあたりの平均パット数で2シーズン連続1位の青木選手もお株を奪われてしまった感がありました。
山下選手のパットの長所は構えたときの両肩、両腕の五角形と手首の角度がストローク中もまったく変わらないこと。そしてパターヘッドを低くい長く出していくフォロースルー。パットはラインをイメージしてしっかり打つことが大事で、山下選手はその点でもラインに対する集中力とか、アドレスを丁寧に作るなどライン乗せるための準備がスゴイ! と思いましたね。
そして自分の決めたところに打ち出していく「決め打ち」もほぼパーフェクト。ロングパットもショートパットもカップに必ず届かせるタッチで打っているところや、ボールがカップインするまでカップから目線を絶対に切らない「スナイパー目線」をアマチュアの皆さんもぜひ参考にして頂ければと思います。
山下美夢有
やました・みゆう(加賀電子)2001年8月2日生まれ、大阪府出身。150㎝。22年シーズンはワールドレディス、JLPGA選手権リコーカップのメジャーを含む5勝を上げて初の賞金女王。メルセデスランキングも1位となり、名実ともにトッププレーヤーの仲間入りを果たした。
大西翔太
おおにし・しょうた/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアゴルファーの育成に尽力する一方、青木瀬令奈のコーチもつとめる。メンタルやフィジカルの知識も豊富でメディアでも幅広く活躍中。
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