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流行のパターに手を出す際に忘れてはいけないこと 50年前のモデルでもパットの善しあしは変わらない!?

重箱の隅、つつかせていただきます|第37回

2023/09/11 ゴルフサプリ編集部

グリーン,ボール

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.615/106ページより

人気パターの登場に”王道”はあるのか?

重箱の隅、イラスト

全米オープンで優勝争いを演じたウィンダム・クラークとリキー・ファウラーが使用していたパターが、ツアープロの間で注目を集めている。

モデルは9年前に発売された、オデッセイの「バーサジェイルバード」を中尺仕様にしたプロトタイプ。元々、ファウラーがキャディから借りたものを気に入り、アレンジしたものだという。

出身大学の縁で親交があり、一緒にプレーする機会があったクラークが、ファウラーのパットの好調ぶりにあやかろうと、まったく同スペックをメーカーに発注。手にした今シーズン、ツアー初優勝から一気にメジャー勝者へと駆け上がった。

ファウラー自身も全米オープン惜敗も、その翌々週に4年振りの優勝を果たし完全復活。その立役者と思えるパターが脚光を浴びるのは、当然だろう。元の「ジェイルバード」が中古クラブ市場で高値がついたり、オデッセイから限定復刻版が発売されたりと、何やら活気づいている。

このような人気パターの登場には、一定の傾向があると思う。

(1)まず、名手がそのパターで実績を作ること
(2)特別な打ち方を押し付けないこと
(3)なんとなく理論っぽいメリット感があること

この3点は外せないと感じている。

パターはクラブの中でも、最もハイテクの恩恵を感じないものだろう。打ち方さえ正しければ、50年前のモデルでもパットの善しあしは変わらないはずだ。

メーカーの立場からすると、反論は結構あるだろう。慣性モーメントや重心設計でミスヒットに強くした、パーツの重量バランスで振りやすさや安定感を増した、フェースをミーリングで平滑性を高めた、インサートで打感もコロがりもがりも向上…。

「でも、入らない」というのがユーザーの本音ではないだろうか。だから、名手の”サクセスストーリー”が必要になる。

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重箱の隅、イラスト

タイガー・ウッズのような名手がずっと使い続けている、というよりも、今回のファウラーのように不調から脱出できたモデル、というのが、パットが苦手でパターを買い替えたいアマ、いやプロにもすごく魅力的に映るはず。

近年の「トラスパター」人気も、女子プロのパット改善ストーリーがベースとなっている。

ただ、そんなサクセスストーリーがあっても、長尺パターやアームロック型は不人気のまま。打ち方が大きく変わるものは、なかなか受け入れられない。せいぜいクロスハンドを試すくらいが、一般アマの許容範囲だと思う。

面白いのは、入り口では当てにしないメーカーの機能的メリットも、サクセスストーリーの”裏付け”としては受け入れたがる人が多いこと。「トラスパター」なら、あの三角ネックの”おかげ”でパットが良くなった、と信じ込みたい。自分もその”おかげ”にあやかって、入るようになる……という”夢”を見られるわけだ。

その意味で、既存のモデルにはない特徴が明確なパターほど”現状打破できるかも”という希望とともに、人気に火がつきやすいとも言えるだろう。

仕事柄、長年に渡ってティーチングプロたちにパター選びのポイントを尋ねてきたが、最も多かった回答は「距離感が合うもの」だった。真っすぐ打てる要素は打ち方がメインで、大抵の人は比較的簡単にマスターできるという。

問題は、ラインに乗せること。ラインは曲がり具合も含め、打球速度で決まる。距離感がつかめなければ、ラインも決められず、入るはずもない、というわけだ。

流行の人気パターに手を出すとしても、距離感をつかめるかどうかが大切。試打、鉛チューンなどは視野に入れておく必要がある。

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戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。


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