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タイガー・ウッズの大学時代の強敵で“復活請負人”として注目のティム・クラークって知ってる?

佐渡充高のプレミアム・ファイル

2024/02/17 ゴルフサプリ編集部

ゴルフワールド誌

ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。

GOLF TODAY本誌 No.620/99ページより

アンカリング禁止で断たれた選手生命

ティム・クラークは栄光と苦悩を糧にチャンピオンから復活請負人へ

ティム・クラーク
06年フロリダ州ジャクソンビル空港にて。朗らかで楽しい愛されキャラのクラーク。

ラッセル・ヘンリー(34歳)はデビュー戦で初優勝を飾り5年間で3勝も、その後は逆転負けループに陥りトラウマになっていた。

22年1月ソニーオープンでは5打差を松山英樹に、21年全米オープンも最終日首位発進から76と崩れ13位タイ。悪夢で眠れぬ夜が続き、すがる思いでコーチを依頼したのは南ア出身ティム・クラーク(48歳)。PGAツアー2勝の実績のみならず、努力と工夫で苦難を乗り越えPGAツアーを生き抜いた大先輩だ。

悩める後輩を救おうと早速、熱血セッション開始。ヘンリーは10カ月後におとずれた最終日首位の好機を堂々と逃げ切り5年ぶり通算4勝目!復活優勝に導いたクラークも復活!と2人は脚光を浴びた。ヘンリーの躍進は続き23年はマスターズ自己ベスト4位、年間ランク14位、デビュー11年目で最高のシーズンとしクラークは復活請負人と言われはじめた。

クラークの初優勝は2010年準メジャーのザ・プレーヤーズ選手権、2勝目が14年カナディアンオープン。メジャーではマスターズ2位、全米オープン3位と活躍し現在もツアーの出場権を持つ。しかし、2016年1月の試合を最後に離脱、その主因は負傷だった。

01年ルーキー年はわずか3試合後に右手首負傷で手術。14年2勝後は左ヒジ痛で2度目の長期休養。次第に選手育成やコーチングへとシフトしていった。

追い打ちをかける衝撃の出来事

スプリット・クロウ・グリップ

工夫に工夫を重ね完成したスプリット・クロウ・グリップ手のヒラを上に向けにくいため左手の甲が外を向くようにグリップ上部を握り、右手はペンを握るように親指と人差し指で挟み、ペンシルグリップとも呼ばれる。

彼がツアー復帰に消極的な理由は他にもある。幼少期から前腕が外側にほとんど回らず手のヒラを上に向けることが難しい。皿を手に乗せる動作も不自由でバイキングスタイルの食事が苦手だった。

ゴルフでもパターをレッスン書のように握ることができず学生時代から長尺パターを使用し左手のヒラを身体側、右手のヒラを下に向けるグリップでプレー。手首やヒジの負傷は腕や手の可動域の影響もあった。

復帰を目指し治療していた彼に追い打ちをかける衝撃の出来事が。それは「2016年アンカリング禁止」という規則改正。

打開策を求め、ありとあらゆる方法を試したが腕の状態が変わらない限り道はなく、ツアーでのプレーは事実上不可能になった。

クラークからの助言

ゴルフワールド誌

97年ゴルフワールド誌7月全米パブリンクス選手権決勝で今田竜二との外国人対決の詳細記事。当時21歳クラークがジョージア大学進学前20歳の今田竜二を下し、マスターズの出場権を獲得。

師弟関係前のクラークとヘンリーで思い出すのは13年ソニーオープンの優勝をめぐる激闘。

ヘンリーは最終5ホール連続バーディでツアーのデビュー戦で劇的初優勝。クラークはヘンリーのスーパープレーに呆れ笑っていた。

これを契機に親しくなりヘンリーは何かと相談する間柄に。ヘンリーは会見の度にクラークからの助言「1打1打にベストを尽くす」と自身に言い聞かせるように語る。

その言葉に込められたクラークの思いを受けとめ、より強い選手へと成長している。

ティム・クラーク/プロゴルファー

ティム・クラーク

1975年12月17日南アフリカ共和国サウスコーストの美しい街ウムコマース生まれ。3歳でゴルフに出会い、ノースカロライナ州立大学留学で初渡米。初年に全米学生の新人王に。同歳、同月生れ(1975年12月)のスタンフォード大学タイガー・ウッズの強敵だった。PGAツアーでは09年世界選手権マッチプレー2回戦でクラークがウッズを3&2で撃破。08年全豪オープン優勝。欧州ツアー3勝、カナダ2勝、南ア2勝など世界各地でトロフィーを掲げた。

佐渡充高

●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。2022年まで32年間NHKゴルフ解説者。2023年からBS放送局『BSJapanext』にて「大正製薬 Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」の解説者に。※2024年からは「フォーラムエイト Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」。


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