レッスンは理想と現実のギャップを埋める作業。速く振れなきゃ飛びませんよ!
石井良介のゴルフ・すべらない話:第17回
石井良介の一面を一人語りという形でお届けする連載企画「石井良介のゴルフ・すべらない話」。第17回は、上達に役立つ面白い話です。
写真/ゴルフサプリ編集部
「真っすぐ立つ→前傾する→手をダランと垂らす」でグリップと手の位置が決まる
僕を訪ねてくださるアマチュアの方といろいろ話をしていくと「自分を安定させたい」と望んでいる人が多い。ショットにしてもスコアにしても、とにかく安定させたい。で「どうやったら安定するの?」という話になるわけですが、僕は極力自分の体を生かし、誰もが持ち合わせている安定感をベースにするのがいいと考えています。特にゴルフは日常生活ではとらない姿勢で動く、いわば不自然な動きのスポーツですから、ちょっとでも安定して再現しやすいところを利用すべきです。
当然、動いている時より止まっている時の方が安定していますから、僕が教えるのはクラブの持ち方と構え方から。特に構えには重きを置きます。例えば、両腕を垂らして真っすぐに立った時の手の位置は決まっていて、やたら前に出たり後方に引いたり、上に上がったりはせず同じところにあります。真っすぐ立つだけで自分の体が自然と形作られるわけです。
これを構えにあてはめて「真っすぐ立つ→前傾する→手をダランと垂らす」という手順でやると、手はいつも同じところにきますから、その位置でクラブを持てば構えが毎度大きく変わることはありません。また、手の角度も自然ですからクラブの持ち方も決まります。左手の甲が前向き加減であればフックグリップ、左を向けばスクエアグリップ。もちろん人によってまちまちです。さらに、そこでグリップして構えれば、途中で何かをやらかしたり何かが起きない限り、そこが手が戻ってきやすい位置だからちゃんとボールに当たります。
ゴルフが上手くなる条件の一つに、地面の同じ場所を叩けることがあります。ボールに対して構えているのに、その前後左右を打ってしまったらダメ。構えたところを叩けるようになりたいわけですが、それには体の軸とか、重心などを考えながら構えないと叩く位置が簡単に変わってしまいます。とはいえ、意識してやるには限界があります。練習時間が限られているアマチュアの方ならなおさらですから、なるべく備わっている能力を使いたい。事実、前述したように構えるとダフりやトップは激減します。
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アマチュアの方はそれぞれスイングに関する悩みをお持ちかと思いますが、そうなる理由が構え方にある人がすごく多くて、しかも本人は自覚していません。無意識にそうなっているので、写真や動画を撮りながらご本人に気づいてもらってそうならないようにする。前述したように症状によって直すコツはお伝えしますが、いずれにしてもすごく地味な作業。ポイントとしては、自分が立っている時に重心がどこにあるのかを意識して、いつもそこに重心を感じられるように立つことです。
クラブを持たずにスイングの動きをするのもいいでしょう。クラブがあると重さに引っ張られて動けてしまえる部分がありますが、クラブがないと動かしづらい部分がわかります。そこで、なぜそこが窮屈になるのかを考えるわけです。運動神経という言葉で片付けていいのかわかりませんが、人間には空間の中で「自分の体の部位がここにある」と正しく認識する能力があります。そして人によってその能力には差があります。能力が高ければ自分がイメージしている動きと実際の動きが似通っていて、低ければ乖離している。お手本通りに動いた場合にカッコよく見えるのが前者で不器用に見えるのが後者とも言えるでしょう。
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もちろんこの差はスイングにも如実に出ます。やりたいスイングになるということは、すべからく自分の体内感覚と実際に行われていることの間にあるギャップを埋めること。自分のスイング動画を見てビックリする人が多いのはギャップが大きいからで、アマチュアの方の多くは、構えの段階から大きなギャップがあるのです。前述のようにクラブなしで動いたときに窮屈になるところは、理想と乖離した部分なので、窮屈にならないようにする、人によっては窮屈さに慣れなければいけないかもしれません。
もっと飛ばしたい人、リズムよく振りたいという方も多いですが、今の自分の“間”やタイミングでは飛ばないので、速くしなければなりませんが、大体のアマチュアゴルファーは「こんなに速く振れない」と言います。でも、居心地のいいスイングでは今まで通りの結果にしかなりません。そうなるとギャップとか違いを楽しめる人が強い。ダメなことを理解して変えていく勇気がある人は上手くなれます。
意外と思うかもしれませんがアプローチは特にそう。アプローチが苦手な方はみんな遅い。例えば、練習でいつもと同じ「1、2」のリズムで打っていたとしたら、それを早くしてみてください。そのあとで普通に戻すとチャックリがなくなります。ウエッジは結構重いので、ゆっくり動かすほど落ちるんです。早いリズムで打った動画を撮って見てもらうと普通のリズムにしか見えません。これも体内の時間と外から見ている時間とでギャップがあるということです。大きく振ってインパクトを緩める人のアプローチを見ているとすごい技だなと思います。それで独自の進化を遂げている人もいるので否定はしませんが、効率を考えるともっといい方法があるわけで、僕は常々それをコーディネイトしたいと考えています。
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スイングは仕組み。ロジックが分かれば少ない練習量でも何とかなる
ただ、本当にスコアアップしたいなら、ここまで書いたことは枝葉末節と考えていただいた方がいいかもしれません。アマチュアの方とラウンドすると、みんなスイングばかり気にしています。前回もお話ししたように、スイングは必ずしもスコアには直結しません。スキーのジャンプ競技で飛型点が満点でも飛距離が出なければ勝てないのと一緒。妙な言い方になりますが、ラウンドではスイングは気にしなくていいから、どうやって打つか=狙ったところにボールを運ぶかを考えるべきなんです。
例えば、みんな距離ピッタリの番手でプロみたいにグリーンをダイレクトに狙いますがそれは無理。ボールにどうやって力を伝えて目的地に運ぶかがテーマであり結論で、方法論は二に次でいいのです。僕が使用クラブに制限をかけたラウンドレッスンをやるのもそのため。人は制約がかかった方がクリエイティブになる。アカデミー賞をとった『ゴジラ-1.0』みたいに予算が潤沢でない方が磨かれていくんです。
僕はレッスンでトラックマンを使いますが、クラブパスの1度とかはどうでもいい。買った当初は数字ありきに陥りかけましたが、そうじゃないってことを最近は強く思い始めていて、局面によってはデータを無視することもあります。でも、無視できるようになったのもトラックマンがあったから。逆説的な話ですが、最先端を知れば知るほど、昔のプロの言葉や、少ないストロークで上がるために技を磨いてきた人たちの凄さを改めて知る面もあります。何でもかんでも最新がいいわけじゃないんですよね。
生徒さんには「練習してきてください」と言わないようにしています。ティーチングプロとしては言わなきゃいけないんですが「練習している時間なんかねーよ」と言われるのがオチ(笑)。みなさんお仕事の余暇でやっているから当然です。でも、スイングは”仕組み”なので「こうなるからこうなる」というロジックが分かれば少ない練習量でも何とかなります。練習しなきゃできない、というのは教える側の怠慢かなと思う部分もある。ですから僕はもっと広くゴルフのやり方を伝えていきたいと思っています。
石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。
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